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前日譚 Case.1 水筒

こちらは前日譚の追加となります。

前日譚は先輩彼女(サヤカ)後輩彼氏(ユウ)の二人劇で、本編開始前の時間軸になっております。

「水筒ってあるじゃないですか」


「あるね。最近みんなマイボトル持ってるらしいね」


 中でもよく売れてるのがマグボトルらしく、今や園児から社会人まで幅広く売れてるらしい。


「俺も毎日使ってるんですけど、やっぱ便利ですね」


「でも飲み終わった後にぽいって捨てられないじゃん。邪魔じゃない?」


 ペットボトルなら飲み終わったならゴミはゴミ箱へだ。後腐れもない。


「まぁその辺はどこかで飲料買って入れてやればいいんじゃないですかね」


「それに炭酸とかジュースとかは入れられないよね。炭酸は間違いなく気が抜けるし、ジュースはべたつきそう」


 密閉性が必要な物は苦手だろうし、糖分の多いものは洗浄を良くしないと細菌が繁殖しそうだ。


「まぁ入れるならお茶か水になりますか。甘い紅茶系も避けたほうがいいのかな」


「わたしお茶以外は飲まないから別にいいんだけどさ。それこそたまに飲むぐらいのはペットボトルで飲めばいいし」


 そのたまに飲むのは新製品。目に止まった物を試しに一回飲んで見る程度だ。


「ですかね。でも先輩、さっき持ち運びのことで邪魔って言ってましたけど、別に家の中で使ったっていいわけですよ」


「ほう。家の中で水筒。お風呂で水着並みにその発想はなかった」


「結構便利ですよ。冬は熱いお茶を熱いまま維持できますし。夏は氷入れてキンキンなのを維持できます。あとお風呂は裸で入るものですよ」


 そこは先入観だろう。お風呂テーマパークなどでは水着で混浴もしていると聞く。


「いいねそれ。それならありだよ。家の中なら別に邪魔にもならないし」


 熱いものならチンし直せばだいたいのものは暖かくなるが、冷たいものはそうもいかない。


 この話の真価は冷たいものを飲むときにこそ発揮されるのではないだろうか。


「あとね、ドライブの時とかもいいですよ。車移動でドリンクホルダーに放置できる場合」


「ああ、邪魔にならなきゃ水筒は行楽の基本装備だよね。行楽の水筒って言ったら1.5Lの大型な奴しか思い浮かばなかったけど、別に個人で携行したっていいわけだ」


 まぁ問題点といえばわたしも彼も運転免許を持っていないということだけど。


「そゆことです。好きなの入れられますしね。暑い時でも意外と冷たいのより熱いお茶の方がいいって人も多いんですよね」


「あれでしょ、熱いお茶を飲んで体温が上がった後、元の体温に下がることで涼を感じるっていう」


「熱いお茶飲んでマックスで暑い時って相当汗だらだらになるでしょうから、さぞや効果的なんでしょうね」


 汗でベタベタになるのは嫌だなぁ……女の子的に考えて。


 ましてや好きな人の前で汗だくになりたい女の子などまず居ないだろう。


 それが特殊な状況下でもない限り。特殊といったら特殊なので深く触れないで欲しい。マナーですよ。


「今ふと思ったけど、コーヒーってどうなの? 入れたら最後コーヒー専用ボトルになりそうだけども」


「コーヒーの香りというか臭いは強力ですからね。タンブラーにコーヒーってのは一般的ですけど、確かに水筒にコーヒーってどうなんでしょうね」


「なんかイメージないよね。あ、あれだよ。コーヒーの出前とか出張販売。あれなら水筒に入れて持ち運ぶよ」


「するとその水筒は当然コーヒー専用になりますね。まぁそもそもそのための備品だから、他の物入れるとかありえないですけど」


 オフィスかなんかで出張販売や出前があるらしいけど、我々学生にとってわかりやすいのは新幹線の車内販売だろう。


 コーヒーくださいって言うと魔法瓶から紙コップに注いでくれるぞ。


 それか高速道路のコンビニコーヒーでも、ポットに入ったコーヒーを注ぐだけってのを見たことがある。


「うーん。しかしそれにしても記憶にある限りだと、個人で水筒にコーヒー入れてきた人は見た覚えがないなぁ」


「ないですねー。皆だいたいお茶とか麦茶とかですね。洒落た人がたまに紅茶ぐらいで」


 完全ブラックで飲む人でもないとポーションは油だし、牛乳は腐りやすいしで水筒に向いてないんだろうな。


「ところで最近の水筒には直接口をつけるタイプと、昔ながらのコップ付きのやつがあるけど、キミはどっち派?」


「直飲みタイプを使ってますね。カップ型はどうにも一手間増えるのが面倒で」


「でも直飲みだとペットボトルと同じことになるよね。時間を置くと中で雑菌が繁殖」


 TVで特集を見た時はひいいいいとなった。あの細菌数は無理。何でも見える化すればいいと思ってるやつは一回反省した方がいい。


「ありますね。と言っても朝入れたお茶を夜帰ってきてまで飲むってことまずないですけど」


「そりゃあ帰ったら普通に急須で入れたお茶飲むよね」


 淹れたてを飲めるのに、飲まない理由もないだろう。古いのは流しにぽいぽいである。


「あ、でも、机にぽんと置いておいて、翌日ふと何の気なしに飲んでなんじゃこりゃ!?ってなったことはありますよ。味が変わってたんで吐き出しました」


「うへぇ。きたなーい。キミそれ減点対象だよ。ちゃんとしなさい」


 ……大丈夫なのかな。彼とキスする直前の話じゃないことを祈る。まぁ水筒使うのは自室って言ってたし大丈夫だろうけど。


「全くもってご指摘の通りで。それ以来は気をつけてますよ」


「その点わたしはそういうことはないからね。要はボトル内の液体に口をつけなきゃいいんだよ」


 一回口に触れた内容物を容器に戻すから菌が繁殖しやすくなるわけで。


 口に触れずに飲めれば最初は清潔なペットボトルなら、ほぼ細菌の話は無視して良い範囲になるだろう。


「先輩、ペットボトルの飲み物ちょっと口から離して飲むの得意ですよね。練習でもしてるんですか」


「一番最初は少しこぼしちゃったり濡れたりしたけど、慣れたらそんなに難しいことじゃないよ」


 濡れると言っても多少のことだし、びしょびしょになるほど濡れるわけでもない。要は慣れだ。


「どうも最初に出すぎてウッてなるか、飲み終わりにどばって出てきてウッてなるかなんですよね」


「それはまだまだ精進が足りない証拠だなぁ。励み給え」


「練習するほどの技能なのかなぁ。これ」


「飲みきれなかったペットボトルを冷蔵庫に入れておいても、後日変質を気にせずにまた飲めるよ?」


「それは安心材料ですね。一旦口つけたのだと冷蔵庫に飲み残し入れといても、三日目になったら捨てますもん」


「二日目は飲むんだ」


 私は口をつけてしまったらその日のうちに捨ててしまう。なんか、ね。


「そりゃあ。そこまで気にするなら最初から冷蔵庫に入れずに飲み残し全部捨ててますよ。冷蔵庫に入れる意味が無い」


「確かに。でも数日経って炭酸全部抜けたコーラとかびっくりするよね。これ同じ飲み物なのって」


「味全然違いますよね。成分は変わってないはずなのに、炭酸が無いだけであれ単なる砂糖水になりますからね」


 ちなみに有り体に言って不味い。流しに流してしまうのをためらわないレベル。


「まぁ炭酸があっても砂糖水ではあったけどね。それにしても炭酸の刺激があるとないとであそこまで味が変わるとは思ってなかった」


「あとは冷たいとなんか甘さを感じにくいから、清涼飲料水は砂糖多めに入ってるとかも聞きましたね」


「まさにコーラのことだよね。常に清涼飲料水飲んでる人とか大丈夫なのかってたまに心配になるよ」


「まぁ若いうちは大丈夫なんじゃないですか。いい年してコーラとかジュースがぶ飲みってのもそうは居ないでしょうし」


 若くてもいつ見てもコーラ飲んでる人とかやばそうだなぁ。


「糖尿怖い」


「日常生活に制限かかる機能障害全般怖いですよ」


「食事制限とか絶対やってられないよね」


「ご飯が一膳もまともに食べられないとか、生きる気力を保てるかちょっと自信ないです」


「キミはキミで白米好きすぎだからね? なんで鍋で二合炊くと全部食べきってるんだよ。それこそ糖尿なるよ」


 最初はまさか全部食べるとは思わなかった。


 毎回食べようとするとはもっと思わなかった。


「口さがない奴は白米を指して砂糖食ってるようなもんだとか言ってますけど、だからなんだって話ですよ。白米で体壊すならもうそれは日本人として仕方ない」


「白米食べ過ぎで白米食べられなくなるってそれこそ辛いと思うんだけど」


 猫好きの人の猫アレルギーみたいな。見てて可哀想になるよねあれ。


「じゃあ餃子食べる時に白米無くても平気なんですか。ハンバーグも唐揚げも焼き魚も白米無しで食べますか」


「無理」


 ご飯抜きおかずだけ弁当って多分罰ゲームとして成立するよね。


「でしょう。白米は日本人のソウルフードですからね。パンじゃ代わりにならんのです」


「いや白米に制限かかってる状況ならパンも制限かかってるからね?」


「白米もパンも食べるなってもうそれはあれですか。バッタかキリギリスにでもなれってことですか。野菜しか食うなと」


 それはわたしも嫌だなぁ。多分パスタも駄目なんでしょう?


「まぁハッキリ言っちゃえばそういうことなんじゃないの? タンパク質は必要だろうけど糖質は相当抑えられるよね」


「想像しただけで生きる気力が大分なくなってきました……」


 わかる。わかるよ。病院食とか物足りないもんね。


「だから普通に食べる分には問題ないってば。一度に二合食べきるとかやめようって話で」


「でも別に毎回二合食べてるわけじゃないですし」


「当たり前だよ!! 毎食二合も食べられてたまるか。一度エンゲル係数について考えてみなさい」


 彼が家でご飯をたべるようになってからお米の消費が半端ない。


 その代わりとしてお米を買う時は荷物持ちをしてもらっている。


 10キログラムは流石に手持ちでは帰れない。


「あ、炊飯器の中あんま残ってないですね。夕食分のご飯炊いておきますね」


「だから! 今の話聞いてたのキミは! 計量カップで二合量るのを今すぐやめなさい。一膳ずつなら炊飯器に残ってる分で足りるでしょ!」


 ほら! その計量カップをこっちによこしなさい! 抵抗は無駄だ!


「やだやだご飯一膳しか食べられないとかありえないですよ!! ご飯はおかわりしてこそでしょう!」


「どっから出てきたのそのセオリー。わたしそんなに食べられないよ」


 キミの無限の胃袋とは違うんです。一膳食べたら満腹だよ!


「わかりました。俺がその分食べます。先輩の出来無いことは俺がカバーします」


 この男はまたこんな時だけきりっとした顔をする。


「何ちょっとかっこいいこと言ったつもりになってるの。キミそれ単なる食いしん坊キャラだからね」


「俺は白米が食べられれば後は割とどうでもいいです」


「なんかもういっそ潔いよねキミ」


 わたしはもう、処置なしと匙を投げる。この場合は計量カップかな。


「よく言われます」


「褒めてないからね!!」

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