出会い
小説家になろう、という名のサイトへ登録してから、初投稿。思ったよりスラスラと文章が書けてしまった。頭の中に情景が浮かぶからか。現実世界で体験したことがあるからか。連載小説なので、最後に大オチが用意してある。勿論、大オチの内容は言わないが。イニシエーションラブのように、最後の何行かで大どんでん返しになるとまではいかないものの、何ページかで大どんでん返しになることは、ここで明らかにしておこう。性格がひねくれている筆者は、大オチを用意しているとうそぶいているだけかもしれない。自分の中で絶えず自問自答を繰り返しながら、じっくり読み進めて貰いたい。
教室は騒然としていた。高校二年の春、クラス替えが終わり、荷物を持った生徒がごった返していた。
「おい、風太。何、ぼーっとしてんだ。」
「おっ、驚いた。同じクラスか。」
宮本大輔。同じサッカー部の不動の10番。所謂、エースだ。小学校からサッカーをしており、ボール捌きで右に出る者はいない。
「席、隣だな。よろしくな。」
真っ白の歯を見せながら、笑顔で言ってくる。
「だな。楽しくなりそうだぜ。」
と表面的には言いながらも、
「面倒くさくなりそうだ。去年はクラスに騒がしい奴がいなかったから、自由気ままに過ごせたのに。」
と、聞こえない声を心の中で呟く。と同時に、生来の自分の腹黒さに自己嫌悪もする。勿論、表には決して出さないが。
「さーてと、女を探すか。僕のかわい子ちゃんはどこにいるかなー。」
大輔は女好きだ。サッカー部の中では、練習後、女に関する話題でいつも盛り上がっている。女と言っても、クラスの女だけではない。友達と一緒になって、オススメのAV女優、テレビタレントを厚顔無恥で口にし合っている。自他共に認める、性獣だ。芸能人で言うなら、矢口真里に並ぶくらい。とか言うと、矢口真里に呪われそうなので訂正しとくか。
「僕のかわい子ちゃんってなんだよ。女はお前の私有物じゃないだろっ。」
「あはは。風太のツッコミは今日もキレッキレだなぁ。」
「ボキャブラリーが違うからね。まさに、ボキャブラリーの宝庫。南キャンの山ちゃんに喧嘩を売ってこようかな。」
「あはははは。」
趣味は読書。1日中家で本を読むことも多々ある。一生、本を読み続けて臨終を迎えても大満足だ。ブックオフと市営図書館は僕の庭みたいなものだ。だからなのか、語彙力には自信がある。
「おっ。」
突然、大輔が呟いた。
「見ーつけた。教室の隅に座ってる、黒髪ロングの子、見えるか?」
「見える見える。正面から見てみたいなぁ。」
「だなだな。」
これが恋の始まりになるとは、誰も予想できなかっただろう。僕の脳を支配する女性像が、この時誕生した。
「おい、風太。メアド貰いに行こうぜメアド。」
大輔が僕の肩を叩きながら言ってくる。
「僕はいいよ。」
「いいってどっち。貰うの。貰わないの。」
ここで彼女のメールアドレスを貰う事ができれば、この先、学園生活で、青春を謳歌できるかもしれない。しかし、アドレスを断られたら精神的ショックで夜も眠れなくなりそうだ。ダメだダメだ。殻を破れ自分。当たって砕けろだ。
「貰うよ。一緒に行こうぜ。」
大輔の表情がパッと明るくなった。
「よしっ、今がチャンスだ。ビジネスチャンス。」
「ビジネスでは無いけどね。」
「出た、風太ツッコミ。あはは。今日もキレてるな。」
二人で黒髪ロングの女の子の席へ行った。その時、初めて彼女を正面から見た。魅力的な顔立ち。ワックスで整髪したサラサラの黒髪。おデコを少々露出し、目元は涙袋が大きくてぱっちり。ハーフの如く鼻筋が綺麗で、口元は少々、口角が上がり、微笑んでいる。モナリザのように。
「携帯持ってる?」
大輔がいつもの調子で言う。
「いや、携帯持って無い子なんて今時いないだろ。」
僕はパブロフの犬のように、条件反射的にツッコム。
「おい、失礼だろ。」
「えへへへ。」
天使が微笑んだ。可愛い。思いっきり抱きしめたいくらいだ。
「LINE教えて。」
大輔がすかさずぶっこむ。
「いいよ。」
大輔が彼女からスマホを受け取った。僕と大輔はバーコードリーダーで読み取り、LINEのIDを交換した。
彼女のLINEの個人プロフィールから、西崎麗華という名前だということが判明した。麗華という名前に引っ張られたのか、アイコンの写真は美しいダリアであった。
部活が終わり、家に帰り、LINEでメッセージを西崎麗華に送ろうとするが、慣れないからか、メッセージの内容が確定できない。どうしようか、いや、どうしようもない。あれこれ考えた果てに、「風早風太です。よろしくお願いします。」という、童貞感丸出しの文章しか送れなかった。女慣れしていないことが見え見えである。女はモテる男を好きになる、という自然の摂理に反している。僕の青春は、まだまだ近くに迫って来ないのか。
今後の展開に期待。まだ物語は始まったばかり。