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隣の席の相島君  作者: 伊藤 唯羅
本編
4/28

引く気なんて無いでしょ

 勉強会はそれから何度か行われた。

 相島君は数学だけでなく英語も苦手らしく、同時進行で平日は放課後に図書室、休日は朝から夕方まで図書館にて桜が事細かく丁寧に教える事となった。

 先日の黒田家で放たれた「やる気出てきた」という彼の発言はどうやら本気らしく、休み時間にはマメに各教科担当の教師に質問したりしては驚かれている様だった。

 そうして日々を過ごして行く内に気付けば夏期休業――所謂夏休みが始まった。

 休みに入っても勉強会は続き、遂に模試の日となった。

 桜は特に大きなミスをすること無く、いつも通り――因みに彼女は全国統一模試上位者常連である――の結果を残した。

 勉強会は休み期間、毎日行われていたが、模試当日は予定していなかった為、二人が顔を合わせたのは翌日であった。


「自己採点、自己最高点だった!」


 満面の笑顔で駆け付けた彼に「良かったじゃない」と彼女は一言微笑んだ。

 その後直ぐに始まった勉強会の休憩中、彼はふと疑問を口にした。


「そういえば黒田って携帯とかスマホとか持ってねえの?」

「特には」

「不便じゃね?」

「ないわ。誰かと連絡を取る事も無いし、必要性を感じない」


 今時珍しいよな、と彼は言う。


「じゃあ家電教えてよ」

「何故」

「俺が連絡取りたいだけだけど」


 若干潤った瞳をパチパチと何度も瞬かせ、駄目? と首を傾げながら桜をじっと見つめる様はまるで犬の様。

――このあざとさは天然か、計算か。

 彼女はわざとらしく一つ息を吐いて、じとりと彼を睨んだ。

 そうして次に「引く気なんて無いでしょ」と悪態を付きながらもその表情は柔らかく、何処と無く喜色が混じっている様に見えた。


「ん」

「さんきゅ! これ俺の」

「どうも」


 彼の恐らく携帯番号が書かれたメモ用紙をファイルに入れた彼女は、正面から視線を感じて顔を上げた。


「何よ」

「いや、大事に仕舞ってくれるんだなー、と思って」


 慌てて目を逸らすも彼はへへっと笑った。

 それが堪らなく恥ずかしかった桜は知らない振りをして開いていた問題集に取り掛かるのだった。



「あっ、そうそう。夏休み中にどっか出掛けようぜ」

「……は?」

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