◆第三話◆「仲間」
気が付いた時には、何人かの人に囲まれていた。
やがて目が明るさに慣れ、しっかりと周りが見えるようになると、それは男子が一人と女子が一人という事が分かった。
?①「大丈夫か?」
?②「大丈夫ですか?」
ナギは俺の上に着地したらしく平気そうだ。まぁ、それはいいのだが、下敷きにされた俺は地面にキスするはめになった。
ティノ「痛てて…」
ナギ「ここは?」
?①「ワンダーランド。」
不思議の国…
ここも不思議の国なのか。
?①「もしかして、お前らもアリスか?」
?②「私達はアリスです。」
俺達の周りに居た人が話し掛けてきた。アリス…そういえば地球からきた奴は全員アリスって呼ばれるんだったな。
ティノ「俺達もアリスと呼ばれた。」
?①「やっぱな。」
?②「私達の他にも居ましたか…。」
?①「ところで、お前ら…本当の名前は?」
ナギ「私はナギ。」
ティノ「俺はティノだ。」
ヴォルス「俺はヴォルスだ。宜しくな。」
ナコナ「私はナコナです~。」
ん?ヴォルスは男だよな。
男のアリスは俺が初めてだった筈。
ティノ「ヴォルスさんは俺達より先にここへ?」
もし先に来ていたとしたら、ジャムとの会話が成り立たない。
ヴォルス「いんや、俺達はお前らより後に来たぜ。ただお前らよりも起きるのが早かった…それだけだ。」
ならジャムが言っていたのも真実か…、でも待てよ。あのドアには鍵が掛かっていた。
俺達はナギが鍵を持っていたから入れたが…
この二人は?
ティノ「君達はどうやってここに?」
ヴォルス「穴の先に開いたドアがあって、急に吸い込まれたんだよ。」
ナコナ「私もです~。」
あのドアが開きっぱなしだったということか。
俺は、その後も一つ一つ疑問を晴らしていった。
ヴォルス「ここの住人によると、ここは不思議の国の続き。扉を開いた時にしか入れないんだと。本来のアリスは、ここに来るまでに時間が掛かるんだと。」
確かにアリスは色々な住人に会ってからここに来る筈だが…
ティノ「それで?俺達は本来の手順と違う手順で来てる。なら話も違くなるし、世界も変わるって事だよな。なら…何が違うんだ?」
ヴォルス「それが…モンスターが居るんだと。」
ナコナ「私達もさっき遭遇しました~…倒れたままの貴方達が心配だったのもあって、逃げ帰って来たんです~。」
ティノ「それ以外には何も変わらないという事か?」
ヴォルス「いや、魔法や武器があるのも違う。だって物語に武器なんて出てこなかっただろ?魔法もな。…あったとしても、トランプ兵の槍くらいだったのによぉ…」
ナコナ「ここで会う人は、皆武器を持っていました~…ここはとても危険な世界なんだと思います~…。」
皆が一斉に黙り込んだ。
危険な世界に丸腰で放り込まれたのだから当たり前である。
頭の中に過る不安と絶望感…。
沈黙を最初に破ったのはナギだった。
ナギ「魔法…私は少し使えるみたいだけど、他には?」
ナコナ「私も使えました~…羽が生える魔法とか~…ただ、直ぐに羽消えちゃいましたけど…」
ティノ「ヴォルスは使えないのか?」
ヴォルス「あぁ。」
とりあえず、仲間は多い方が良いという事で意見が纏まり、俺達は行動を共にすることにした。




