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◆第一話◆「始まり」

ある日の午後…俺は朝から本を読んでいた。本の題名は「不思議の国のアリス」。


不思議の国に迷い込んだアリスの物語である。


この物語で一番魅力的なのは、この世界の住人達一人一人が個性豊かな所である。




まずは、事の発端の兎。

チェシャ猫。


煙に巻くイモムシに、イカれた帽子屋。三月兎、眠りネズミ等々…



それらのキャラは、話が他の人に作り直される度にキャラが増えたり減ったりした。


皆が知っている中には、双子が分かりやすい例だ。


原作では、双子など出てこない。これは他の人がこの作品をリメイクした際に新しく追加されたキャラである。


このキャラ達は実に魅力的だ。…何度この世界に憧れたものだろう。


俺の夢の中で、子供の頃から変わらない夢はこれだけだった。


現実の世界はややこしく、ドロドロしている。不思議の国の世界ならどんなに楽しい事だろう。


男の俺なら、“アリス”なんて呼ばれる事もなく、不思議の国を堪能出来るに違いない。


そう思うと毎日が楽しくなるのである。



俺はいつも家で本を読んで生活している。本業は学生であるが余りに簡単な授業の為、ついついサボりがち。



たまに学校へ行くと、男は俺を馬鹿にし、女はうようよ寄ってきた。最近の女は、多少悪の方が好みらしい。だが俺は女に興味が無い。



他の男は俺を羨み、嫉妬した。そのせいか、俺には友達が居ない。あるのは本だけだ。



俺がアリスにハマり始めたのは、小さい頃…寝る前に童話を読んでもらっていたのがきっかけである。


母がアリスを読んでくれたその日から、俺は不思議の国の虜になってしまったのだ。


あまりにその世界が気に入り、誕生日の日には物語に沿った庭を作ってもらった程だ。


もしかしたら、不思議の国の入り口も…ある訳無いか。


そんな事を考えていたら、あの庭に行きたくなってきたな…よし、庭に行くとするか。


庭には既に兄がいて、本を読んでいた。


…丁度良い、性別は違うが物語通りだ。


どうやら兄は本を読んでいるらしい。だが兄が読んでいるのは、俺がいつも読んでいるような本とは違う。


…たまには兄の読んでいる本も読んでみるとするか。


兄が持って来ている本に手を伸ばす。


パラパラと見た所で、挿し絵もキャラ同士の会話も無いと知った俺は、読む気を無くしてしまった。


…兄さんはいつもこんな難しそうな本を読んでいるのか…。




それにしても暑い…それもその筈。今日は7月10日…夏に近づいているせいか、気温が高くなっているのだ。


汗が頬を流れていく。


俺は木陰に涼しさを求めて移動した。丁度兄も休憩をしに家に戻ったらしい。


…木陰を見つけ、腰を下ろす。しかし、木の下もやはり暑い。

その暑さのせいなのか、退屈のせいなのか、俺は意識が朦朧とし始めた。


その内俺は眠ってしまったらしい。


それからどれ程眠ったのだろう。周りはまだ明るい。それほど眠らなかったという事だろうか?


「大変だ、やばいぞ。遅刻する…!」


どこかで聞いたことのあるセリフが聞こえる。

だが思い出せない…


目の前を何かが走っていった。

何だろう?

大人にしては小さすぎるし、

子供にしては、声が低い。


よくよく走っているのを見ていると、どうやら兎のようだ。


しかし、四足歩行では無く二足歩行だ。


俺は目を擦った。


…ありえない。


目を擦った後、再度目を開く。そこには、少し先に進んだ兎が見えた。


…夢じゃない…!?


兎は懐中時計を出し時間を確認している。服や眼鏡までつけていた。


これもどこかで…。


俺は無意識に兎を追いかけた。

かつて物語の中でアリスが兎を追いかけたように。


そして物語の続きのように、暗い穴の中に落ちていったのである。



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