第一話 始まりの時
カチ、カチ、カチ。
秒針が時を刻む音が静かに鳴り響く。
ここは、町の小さな時計屋。そこには小さいながらも腕時計から振り子時計まで様々な時計が売られていた。
「いらっしゃいませー!」
静かだった空間に時計屋とは思えない大きな声が響いた。
「おはようトキヤくん、朝からお父さんの手伝いなんてえらいねぇ」
この少年の名は、久世時也、年齢は先日15歳になった。
「おはようございます、ちえおばさん。今日は朝早くどうされました?」
「お父さんにこの時計を直してもらいたくってね。」
といって見せられた時計は、高級そうな掛け時計だった。その時計が指す時間は今の時間と5時間もずれていて常に元気よく回っているはずの秒針はぴたりと動かず静かになっていた。
「お父さんはどこにいるんだい?姿が見えないけれど。」
「父さんは工房で昨日いらしたお客さんの時計を直しているところです。」
「そうかい、忙しい時にきてしまったみたいだねぇ。また今度お願いするとしよかね。」
といい、時計を鞄にしまおうとした。
「僕が治しましょうか?」
「できるのかい?」
「任せてください、時計の修理は小さい頃から父さんにたたきこまれていますので。」
「頼もしいわねぇ。じゃ、お願いしようかしら。」
と時計を受け取った。
俺は時計を机の上に置き、裏蓋を静かに開いた。
小さな歯車が幾重にも重なり、その奥で秒針を動かす機構が止まっている。
「なるほど……ここか」
細い工具を手に取り、ずれていた歯車を慎重に調整する。続いて内部の機構を確かめ、固まっていた部品を整えた。
最後にゼンマイを巻き直し、裏蓋を閉じる。
カチ、カチ、カチ。
止まっていた秒針が、再び時を刻み始めた。
「これで大丈夫でしょう。時間の遅れも元に戻して起きました。もしまた不具合が起きるようでしたらまた持ってきてください。」
「ありがとうねぇ。じゃあはいお代ね。」
するとちえおばはんは財布から2枚のお札を出した。
二万円だ。
「ちえおばさん、こんなに受け取れないよ。」
「いいのよ、受け取ってちょうだい。あの小さかったトキヤくんがこんなに頼もしくなって感動しちゃったの。あとこの間誕生日だったでしょう、誕生日プレゼントだと思って、ね?」
「ちえおばさんがそういうなら、うん、受け取るよ。ありがとうございます。」
そういうと「それでいいのよ」といい出口の方へ向かった。
「ありがと、また来るわ。お父さんにもよろしく言っておいてちょうだい。」
「はい、ありがとうございました。」
そういい店を後にした。ちえおばさんはこのお店の近くに住んでいて昔からよく通っていた。今ではもう祖母のような人だ。
それから商品の時計を見て不具合がないから確かめ時計や棚にのった埃を払ったりなど手伝いをしていた。
「さてと」
そうこうしているうちに昼の12時になった。昼食をとったあと、日課である時計の修理の勉強をすることにした。俺は将来この店を継ぎたいと考えている。小さい頃からこの店の手伝いをしながらみる。父さんが時計を修理している姿がかっこよく、俺も父さんのようになりたいと思っているからだ。
俺はまだ自分の工房をもたしてもらえていない。なので5年前から物置部屋を自分の工房として使ってきた。もちろん工房ではないので、ぐちゃぐちゃして工具も充実はしていない。今日もここで修理の勉強をしよう。
そう思いいつもの椅子に座り内部の機構が丸出しでボロボロの時計を机に置き修理に入ろうとした。
ーーカチ。
「‥‥ん?。」
気のせいか?
ーカチーカチ。
いや確かに聞こえるこの部屋の中だ。
おかしい、この部屋には動いてる時計はないはず。使える時計があるのか?
音のする方へ向かう。
カチ、カチ、カチ、カチ。
「これか」
どうやらこの古い小さめの木箱から鳴っている。小さかったからか見つけられなかったのか。見たことのない木箱だ。
とりあえず開けてみる。
「なんだこの古臭い時計。」
そこに入っていたのは錆びついた懐中時計であった。デザインはどこにでもあるようなシンプルな感じだ。でもさっきの高級の掛け時計を見たからかとても安物にみえた。
「なんで今になって動き出したんだ?。」
前からこの箱があったかは定かではないが、親はここに入らないのであった可能性は高い。
そして持ってよく見ようと触れた瞬間。時計から強い光が放たれた。
「うわっ!」
と目を閉じた。失明するほどの光だったのではないというほどに目に激痛がはしった。目を開けると視界がおかしかった。いやおかしいなんてもんじゃない。世界が反転して見えたのだ。すると意識が時計にまるで吸引機で吸われたのではないかというほどの勢いで飲み込まれた。
‥‥‥
「ーーーーんっ、あ?ここは?」
気づくと物置部屋ではなく、謎の空間にいた。まるで陸の見えない海面にいるような広く果てしない空間にいた。地面は一面真っ白のくせに空は綺麗な夜空が広がっている。なんなんだここ。
あーわかったきっと夢だ、さっきの光を食い意識が飛んだのだろう。‥‥‥そしたらなんで時計は光ったんだ?
一瞬理解できたと思ったがまた闇へと沈んだ。
すると、
「我が名は、エオン」
「汝に、我が権能を授けん」
「は?」
「我が名は、エオン」
「汝に、我が権能を授けん」
誰が何を言っているんだ?
「あのー、あなたはなんですか?」
・・・・・
「我が名は、エオーー」
また始まった。いい加減にして欲しいものだ、知らない人からよくわからない力を授けると言われても迷惑なだけだよ。
「すみませんが私に必要なないものなので他を当たってもらえるとありがたいんですが。」
・・・・・・・・
「我が名」
「ありがたく頂戴いたします。」
「汝、万象の時脈が胎動せし原初の理へと至れ。」
「え???」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
気づくと物置部屋にいた。やはり夢か、奇妙な体験をしたものだまったく。
手に持っている懐中時計を見る、すると見た目が変化していた。錆びついていた安っぽい時計はどこへいったのだろうか、今持っているのはちえおばさんの時計と遜色ないほどにまでになっていた。
表面には精巧な彫刻が施され、中央には太陽を思わせる紋章が刻まれている。細く優雅な金色の針が時を刻む。
まるで古代の王族が所有していたかのような、気品と威厳を感じさせる時計だ。時間はずれているので、あとで直すとしよう。
もう何を考えても理解ができないので、とりあえず父さんにこの時計はなんなのか聞きに行こう。そうして店を通り父さんの工房へ向かおうしたらお店にちえおばさんがいた。時計の修理ちゃんとできてなかったのだろうか。そしたら申し訳ない。
「おはようトキヤくん、こんな朝からお父さんのお手伝いかい?」
「いえ、今は少し勉強をしていまして。それよりちえおばさん今はもうお昼ではないですか?」
「何を言っているの?今は朝の7時よ?お店の時計全部7時をさしているでしょう?」
「えっ、、、。」
いや、そんなはずはない俺は毎日昼から勉強を始める。時計を見て12時を過ぎたら手伝いをやめ昼食を取る。たしかに俺の記憶では12時を時計が指していたのだが‥。
「今日は、お父さんに時計を直してもらおうと思ってきたのよ」
「えっ?」
そういいちえばあさんが出した時計は朝俺が治したはずの高級の掛け時計であった。




