第9話:静かな休息と、揺らぐ王都?
ガレリアの街に、穏やかな午後の陽光が降り注ぐ。
俺とハヤトは、
市場の露店を冷やかしながら、ぶらぶらと歩いていた。
「……はぁ。この街、活気があっていいね。
追い出された時はどうなるかと思ったけど、
案外、快適な夏休みになりそうかも」
ハヤトが新調したブーツの感触を、
確かめるように軽快にステップを踏む。
「金は唸るほどあるからな。
お前も、しばらくは異世界の空気に、
慣れることだけを考えておけ」
俺たちは広場の噴水近くで、
果実水を買い、平和な時間を満喫していた。
◇
一方、その頃。
王宮では、
「平和」とは程遠い光景が広がっていた。
「……陛下! 申し上げます!
北の国境を守る第一障壁に、
かつてない規模の魔物が殺到しております!」
王宮の謁見の間。
報告に来た騎士団長が、
血相を変えて床に膝をつく。
「……なんだと!?
あそこは長年、小規模な魔物の群れすら、
近寄らぬ安全な地だったはずだぞ!
貴様ら、警備をサボっていたのではないか!?」
「滅相もございません!
ですが、なぜか……。
まるで今までそこを避けていた魔物たちが、
一斉に『解禁』を悟ったかのような勢いなのです!」
国王は、ガタガタと震えながら玉座を叩いた。
「ええい、無能共め!
早く精鋭部隊を派遣しろ!
我が国の誇る騎士団がいれば、
あんな魔物など、一蹴できなくてどうする!」
王は、まだ気づいていない。
その場所が安全だったのは、障壁の力ではなく、
レオンが影に伏せていた「捕食者」の気配が、
周囲数キロの魔物を震え上がらせていたからだ。
守り手を自ら追い出した王宮は、
原因不明の猛攻に、
ただただ狼狽えるばかりだった。
◇
「……レオンさん?
急に黙り込んで、どうしたの?」
ハヤトの声に、俺は意識を戻した。
「……いや。
少しだけ、西の空気が騒がしくなった気がしてな。
……気のせいだ。さて、次はあっちの店を見るか」
俺はハヤトの頭を軽く叩き、
賑やかな通りへと再び歩き出した。
この平穏が、王国の無能な決断によって、
少しずつ蝕まれ始めていることに、
まだ誰も気づいていなかった。




