第6話:魔法の板と、映し出された神獣?
バルガスと別れ、
俺たちは紹介された宿『銀の蹄亭』に入った。
ギルド長直々の紹介だけあって、
部屋は清潔で、ふかふかのベッドが二つ。
ハヤトは身軽な体(と言ってもスマホと小銭入れだけだ)を、
真っ先にベッドへ投げ出した。
「……はぁ。やっと、一息つける……。
レオンさん、今日は本当にお疲れ様」
「ああ。……ハヤト、例の板を出してみろ」
「スマホ? いいけど、もうすぐ電池切れるよ。
……あ、そうだ。
昨日のドラゴンの戦い、動画撮ったんだ」
「ドウガ……?」
ハヤトが枕元でスマホを操作する。
すると、その小さな板の表面に、
鮮やかな『景色』が浮かび上がった。
「……なっ!?
おい、その板の中に誰か閉じ込めたのか!?」
俺は思わず腰のナイフに手をかけた。
板の中には、昨夜の荒野の景色と、
驚愕に顔を歪めるハヤト自身が映っていた。
「落ち着いて! これは『録画』。
過去の光景をそのまま保存してるだけだよ」
板の中では、俺が影から、
フェンリルを呼び出した瞬間が再生されていた。
銀の毛並みが月光に翻り、
地竜を一撃で切り裂く。
音まで鮮明に、あの咆哮が響く。
「……馬鹿な。
視覚も、聴覚も、完全に再現している。
高位の『幻術』ですらここまではできんぞ」
「ええっ、そんなにすごいの、これ?
僕の世界じゃ、子供でも持ってるよ」
俺は冷や汗が流れるのを感じた。
この『スマホ』という魔道具。
情報を完璧に記録し、いつでも再生できる。
もし軍学者がこれを見れば、
喉から手が出るほど欲しがるだろう。
敵の陣形も、魔法の構成も、
すべて『持ち帰る』ことが可能になるのだから。
「……ハヤト。
お前、絶対にその板を人に見せるな。
さっきの透明な袋とは比較にならんほど、
とんでもない代物だぞ、これは」
「えー、便利なんだけどな。
……あ、電池切れた。
せっかくメロンパンの写真、
待ち受けにしてたのにな……」
プツン、と画面が暗くなる。
ハヤトは残念そうにスマホを枕元に置いた。
「……ああ、メロンパン食べたいなぁ。
あのサクサクのクッキー生地と、
中のふわふわ。この世界にもないかなぁ……」
「……メロン、パン。
お前、そんなにあの塊に、
思い入れがあったのか」
「当たり前だよ! あれが僕のエネルギー源なんだ。
……おやすみなさい、レオンさん」
「……ああ、おやすみ」
静かな寝息が聞こえ始める。
俺は暗くなったスマホを見つめ、
改めてこの「ハズレ勇者」の異常さを噛み締めた。
常識の外側からやってきた、この少年。
……明日からは、こいつの『エネルギー源』とやらを、
探してやるのも悪くないかもしれんな。




