第5話:最強の召喚士と、王宮の異変?
バルガスに連れられてやってきたのは、
『金獅子の鬣亭』。
この街で一番と言われる高級酒場だった。
テーブルに並べられたのは、
香草で蒸し上げた地鳥の丸焼きと、
濃厚なチーズが溶けた温野菜のスープ。
「……っ!? うまっ!!
なにこれ、昨日の肉も凄かったけど、
プロの料理は次元が違うよ……!」
ハヤトが夢中でフォークを動かす。
その様子を眺めながら、バルガスが、
エールを一気に飲み干して笑った。
「ガッハッハ! 存分に食えハヤト!
……しかしレオン。
てめえ、王宮を追い出されたってのは、
マジなんだな?」
「ああ。……バルガス、
ここだけの話にしておけよ」
俺は声を潜め、真剣な目でバルガスを見た。
「実は……こいつ、ハヤトは、
例の儀式で呼び出された『異界人』だ。
……まあ、勇者としてな」
「……は?」
バルガスが飲んでいたエールを吹き出しそうになる。
「勇者、だと!?
冗談だろ、そんなヒョロいガキが……」
「王宮の連中もそう思って、
ハズレを引いたと俺に押し付けたんだ。
だが、正体が知れると何かと厄介だ。
……いいな、絶対に他言無用だぞ」
バルガスは暫くハヤトを凝視していたが、
やがて深く溜息をつき、頷いた。
「……分かった、口は割らねえよ。
『勇者』なんて肩書きが広まりゃ、
宗教連中やら野心家やらが、
ハエみたいに寄ってきやがるからな」
バルガスはハヤトの肩をガシガシと叩いた。
「まあ、てめえが何者だろうと関係ねえ。
レオンの連れなら、俺も歓迎するぜ。
頑張ってこの世界で生きていけよ、小僧!」
「……あ、ありがとうございます。
あの、レオンさん。
僕、やっぱり召喚士になるんですか?」
「さあな。お前の適性はまだ不明だ。
幸い金もできた。まずはこの世界に慣れるまで、
ゆっくり休むといい」
俺は焼き立てのパンをハヤトの皿に置いた。
「気が向いたら、ギルドの簡単な仕事でも、
散歩がてらに試してみればいいさ」
「……。
レオン、てめえがそんな風に、
他人を構うなんて珍しいじゃねえか」
バルガスが意外そうな顔をして俺を見る。
「いいかハヤト。
この世界で『召喚士』ってのは、
本来はただの数合わせでしかねえ。
魔力を絞り出して格下の魔物を呼び、
使い潰すだけの嫌われ仕事だ。
だが、レオンだけはなぜか異常なんだよ。
数年前、この街がスタンピードで、
壊滅しそうになった時……。
こいつが現れて、たった一頭の召喚獣で、
地平線を埋めた魔物を全部片付けちまった」
バルガスは声を潜め、不敵に笑った。
「仕組みは知らねえが、こいつだけは、
格上のバケモノを自在に従えやがる。
王宮の連中は、こいつの凄さを、
ただの『便利な魔法』だと思ってたらしい。
だがなレオン。
てめえを追い出したあの国は、
近いうちに頭を抱えることになるぜ。
国を守る『最大の手札』を失ったんだからな」
「……。
自業自得だ。
あいつらは、俺が影に伏せていた、
魔物への抑止力にすら気づいていない」
「全くだ。
せいぜい、国を支える結界が、
いつまで保つか見物だな」
ハヤトは、俺の横顔を、
改めて驚いたような顔で見ていた。
「……レオンさん。
あんた、想像以上にヤバい人だったんだね」
「だからヤバいと言うな」
こうして、俺たちの新しい拠点は、
ガレリアの街に決まった。
王宮が自分たちの過ちに気づくのは、
まだ少し先の出来事である。




