第21話:鉄壁のパンと、覚醒の予兆?
俺たちはさらに森の深部へと足を踏み入れ、
一頭の牙狼と対峙していた。
「……ハヤト、やってみろ。
レベル十で増えた『セット品』……
そいつでどうやって戦うつもりだ」
俺の問いに、ハヤトはゴクリと喉を鳴らし、
震える手で『メロンパン』を生成した。
「――食らえッ!!」
全力の投擲。だが、焼きたてのパンは柔らかく、
狼の鼻先に当たった瞬間に「ふかふか」と弾け、
辺りに甘い香りを振りまくだけに終わった。
「ギャウッ!?」
狼は一瞬困惑したが、すぐに牙を剥いて飛びかかる。
「……ダメだ。やっぱり柔らかすぎて、
ただの嫌がらせにしかならない……!」
ハヤトは必死に逃げ回りながら、
昨日から感じていた『渇望』を右手に込めた。
「(……もっと、もっと硬くなれ!
焼きたてのふかふかもいいけど、今はダメだ!
……石みたいに、鉄みたいに、カチカチに……!)」
その瞬間、右手のひらの奥で、
何かがパキンと弾けるような感覚があった。
ピコン!
【条件達成:執着による性質変化】
【スキルレベルアップ:物質生成Lv1→Lv2】
【追加機能:硬度の自由調整(メロンパン限定)】
「……えっ。……あ、きた!!」
ハヤトの右手に、再び黄金色の塊が産まれる。
だが今度は、表面のクッキー生地が、
まるで研磨された宝石のように鋭く輝いていた。
「――今度は痛いぞ! くらえッ!!」
放たれたメロンパンは、風を切る音を立て、
狼の眉間へと吸い込まれた。
――ゴンッ!!!
「ギャンッ!?」
鈍い衝撃音と共に、狼がくの字に吹き飛ぶ。
ただのパンなら潰れて終わりだが、
『石』より硬くなったそれは、魔物の頭蓋を粉砕した。
「……倒した。……えっ、パンで、倒せちゃった?」
俺は地面に転がり、
地面を陥没させている「無傷のメロンパン」を拾い上げた。
……。重みも質感も、もはや大理石の彫刻だ。
「……。
ハヤト。お前、そのスキルを『物質生成』と言ったな。
……。
それはもう、生成ではなく……『パンの形をした凶器の鋳造』だ」
俺は深く、深いため息をつき、
「これなら武器になる!」と目を輝かせる少年を連れ、
さらなるレベリングのために森の奥へと進んだ。




