第19話:光る板と、異界の景色?
ギルドでの騒乱を終え、俺たちは宿の自室に戻った。
ハヤトは椅子に座るなり、カバンの中から、
黒い小箱と繋がった『スマホ』を丁寧に取り出した。
「……。見てください、レオンさん。
……ついに、100%に戻りました」
ハヤトが画面に触れると、夕闇の迫る部屋の中で、
あの小さな板がパッと鮮やかな色彩を放った。
「……。
お前の世界の話も気になるが、まずはその力だ。
ハヤト、お前、魔力草採取で一体何をした。
……正確には、どんな能力を持っている」
俺は真剣な目で問い詰めた。
魔力もなく、魔法陣も介さず、
異世界の道具を産み落とす異能。
「えーと……『物質生成』っていうスキルでした。
でも、出せるのはメロンパンに関連するものだけで……。
レベルが上がったら、このバッテリーも出せたんです」
「……。
袋は分かるが、なぜその箱までパンに関連するんだ?」
俺が眉をひそめると、ハヤトは決まり悪そうに
自分のスマホを指差した。
「……。
僕、いつもスマホを見ながらメロンパン食べてたから。
……多分、僕の頭の中で『セット』になってるんです。
……パンと、袋と、スマホと、その電池が」
「……。
……。
あまりの馬鹿馬鹿しさに、言葉も出んぞ」
執着心がスキルの形を決めるとは聞いていたが、
まさか「食事の習慣」が、
これほど精巧な魔導具を産むとは。
「……。
主、ハヤトがさっきウサギをパンで汚した時、
レベルが三まで上がって、これが出たと言っていたかな」
影の中からベルの呆れた声が響く。
「……。レベル三でこれか。
……ハヤト。明日、俺が少し骨のある魔物を狩る。
お前も連れていくぞ。一気にレベルを上げ、
その『セット品』とやらで何が出るか、徹底的に暴く」
「……えっ、僕も戦うんですか!?」
「当たり前だ。これほどの異能、
中途半端なまま放っておけるか」
俺は光る板を眺めながら、
この少年の底知れない可能性に、
初めて明確な興味を抱いていた。
「……。さあ、ハヤト。
ついでに、その板の中の写真とやらも見せろ。
お前の世界の『日常』を、俺も見ておく必要がある」
二つの月が昇る異世界の夜。
俺たちはスマホの青白い光に照らされながら、
明日の狩りと、遠い異郷の景色について、
夜更けまで語り合っていた。




