第18話:メロンパンが世界を揺らす?
「……。おい、バルガス。
あまりの馬鹿馬鹿しさに、耳を疑ったんだが。
……聞き間違いじゃないよな?」
俺はこめかみを押さえ、隣の巨漢に問いかけた。
バルガスもまた、
岩のような顔をこれ以上ないほど歪めている。
「ああ……。
この、水一滴通さねえ伝説級の『障壁膜』が、
……『メロンパンの袋』、だと……?」
バルガスが震える指で、
ハヤトが産み出したばかりのビニール袋をつまみ上げた。
ハヤトは椅子の上で小さくなり、
困惑したように俺たちを見返している。
「……え、ええ。そうなんですけど。
なんかそんなに大げさに驚かなくても……。
ただの、どこにでもある袋ですよ?」
「どこにでもあるだとぉ!? 寝ぼけたこと抜かすな!」
バルガスが机を叩いて立ち上がった。
「いいか小僧! これほど薄くて頑丈で、
中身を完全に密封できる保存材なんて、
この世界のどこを探したって一枚もねえんだよ!
軍糧の輸送、ポーションの長期保管……。
これを独占した国が、戦争の勝者になるんだぞ!」
「……。
……ええっ!? 戦争!?
いやいや、そんな……これ、ゴミ袋ですよ?
……あ、バルガスさん。これ食べて落ち着いて下さい」
ハヤトが宥めるように、
ひょい、と黄金色の塊を生成して差し出した。
焼きたての甘い香りが、一瞬で室内に広がる。
「……な、何だ。この芳醇な香りは」
「メロンパンです。はい、どうぞ」
バルガスは怪訝な顔でそれを受け取り、
豪快に口へと放り込んだ。
「…………ッ!? な、なんだこれはぁ!」
バルガスの巨体がビクリと震える。
……ああ。その驚き、よく分かるぞ。
「……う、うめえ。なんだこの食感は!
王宮の晩餐会でもこんな菓子は出ねえぞ……!」
「……。相変わらず、
説教する気が失せるほどに旨いな、これは」
俺はハヤトからもう一つ受け取り、
バルガスの隣で溜息をつきながら口にした。
「……ハヤト。いいか、二度と言わん。
その袋も、このパンも、二度と人前で出すな。
……特に袋は『兵站の王』を意味する。
レリウスに知られれば、軍隊が動くぞ」
「……。
……は、はい。そんなにヤバイなら、隠します……」
「……。
バルガス。今日の『魔力草』の件は、
俺の召喚獣が持っていた古代の遺物、
ということにさせておけ。……いいな?」
「……。ああ。……だがレオン。
この小僧、とんでもない爆弾を拾いやがったな」
バルガスはパンのクズを惜しそうに舐め、
ハヤトの出した袋を金庫へと放り込んだ。




