第16話:傲慢の代償?
王宮謁見の間。
そこには、数日前まで漂っていた
厳かな空気など微塵も残っていなかった。
「報告します! 北方の第一防衛線、突破されました!
魔物の群れが……かつてない規模の軍勢が、
国境の村々を飲み込みながら南下中です!」
「馬鹿な……。数百年、あそこは安泰だったのだぞ!
宮廷魔導師たちは何をしている!
障壁を、障壁を最大出力で維持せんか!」
玉座に座る国王が、
震える拳で手すりを叩き、怒号を上げた。
「……それで、原因は分かったのか!?
なぜ突如として魔物がこれほど活性化したのだ!」
問われた魔導師長は、
絶望に染まった顔で首を振る。
「……。
障壁の魔力供給は正常ですが、
魔物たちが、それを全く恐れていないのです。
まるで、ここを通るなと命じていた『王』が、
もうこの国にはいないと、悟ったかのように……」
魔導師長の言葉に、国王の顔が怒りで赤黒く染まる。
「……陛下。もしや、あやつを……
レオン・アルヴィスを追放したのが原因では……」
一人の大臣がおずおずと口にした瞬間、
王は叫びながら立ち上がった。
「黙れッ! あのような平民一人に、
国を左右するような力があるはずがなかろう!
……。
分かったぞ。これこそが奴の仕業だ!」
王はひきつった笑みを浮かべ、
周囲を見渡して断言した。
「追い出された腹いせに、
あの不気味な獣どもを使って、
障壁に細工をしていったに違いない!
卑劣な呪い師め、我が国を混乱に陥れる気か!」
「そ、左様でございます!
奴が黒幕に相違ありません!
放置すれば、いずれ王都までもが……!」
側近たちも、自分の責任逃れのために、
一斉に王の言葉に同調し始めた。
「直ちに追っ手を放て!
レオン・アルヴィスの居所を調べ上げ、
この呪いを解く方法を吐かせるのだ!
大人しく従わねば、国家叛逆罪として処刑せよ!」
王はまだ、認めようとしなかった。
自分たちが平和のすべてを支えていた『唯一の柱』を、
自らへし折って捨てたという事実を。
この傲慢な決断が、
残された無辜の民たちを、
さらなる絶望へと追い込んでいくことなど、
今の彼らには、どうでもよいことだった。




