第15話:異常な納品物と、ギルドの騒乱?
「……はぁ、はぁ。着いた……」
俺は脇目も振らずにギルドへ駆け込み、
受付カウンターへと滑り込んだ。
外の樽の上では、ベルが「ボク、もう知らないかな」と、
呆れたように丸まっているはずだ。
「あら、ハヤトさん。お帰りなさい。
初めての採取ですから、もっと手こずるかと思っていました」
受付嬢のエマさんが、
感心したような、あるいは心配そうな微笑みを浮かべる。
「……は、はい。なんとか。
これ、納品、お願いします……」
俺は震える手で、
例の『ビニール袋』に包まれた薬草を、
カウンターの上に置いた。
「ええ、確認しますね。……って、えっ?」
エマさんの笑顔が、石像のように固まった。
「……何、ですか。これ。
中身が……透けて、丸見え……?」
「……えっ!? ちょっと待ってください。
これ、魔力計の数値が……最高値!?
摘み取ってから一分も経っていないような、
異常な鮮度を保っています!」
エマさんの悲鳴に近い声に、
仕事を終えて酒を飲み始めていた冒険者たちが、
一斉にこちらを向いた。
ざわざわと周囲が異様な空気に包まれる中、
奥の扉が勢いよく開き、
ギルド長のバルガスが威圧感を放ちながら現れた。
「……おい、何の騒ぎだ。表まで声が聞こえてるぞ」
バルガスはカウンターの上の『袋』を一瞥すると、
言葉を失って目を見開いた。
次の瞬間、彼はそれを大きな手でひったくる。
「おいバルガスの旦那! それを見せろよ!」
「うるせえ! これはギルドが一時預かる!」
野次馬を怒鳴りつけたバルガスは、
驚愕と困惑の入り混じった目で俺を凝視した。
「……おい、小僧。てめえ、これをどこで……。
――いや、ここではマズいな」
バルガスが俺の首根っこを掴もうとした、その時。
――ゴツッ!!!
「痛ああああいっ!?」
背後から飛んできた硬い拳が、
俺の脳天を正確に撃ち抜いた。
「……ッ。レ、レオンさん……」
振り返ると、そこには底冷えするような呆れ顔で、
深く溜息をつくレオンさんが立っていた。
「……(お前、たかが薬草採取で、
どこからそんな得体の知れない物を持ち出しやがった……)」
レオンさんの目は、
「少し目を離しただけでこれか」という、
隠しきれない困惑と呆れに満ちていた。
「……バルガス。こいつを奥へ運べ。
事情を吐かせる」
「……。ああ、そうさせてもらうぜ」
バルガスは袋を抱えたまま、
俺を小脇に抱え、レオンさんと共に
強引にギルド長室へと連行していった。




