第12話:初めての依頼と、足元の相棒?
宿を出て数分。俺とベルは、
活気あふれる冒険者ギルドの前に立っていた。
「……よし、着いた。
ベル、悪いけど中には入れないから、
ここで待っててくれるかな?」
ハヤトが肩を叩くと、ベルは身軽に地面へ飛び降りた。
今はただの黒猫に化けているが、
その金色の瞳には知性が宿っている。
「了解かな。ボクは目立たないように、
その辺の樽の上で昼寝でもしてるよ。
……ハヤト、変な奴に絡まれないようにね」
「……善処するよ」
ベルに見送られ、俺は一人で、
荒くれ者たちがひしめくギルドの扉を開けた。
「……おい、見ろよ。
あの新入りのガキ、今日は一人か。
いい服着せてもらっても、中身はただの坊やだな」
「昨日はレオンの旦那の腰巾着だったが、
今日は迷子のお使いか? ギャハハ!」
酒場を兼ねたホールから、
下品な笑い声が飛んでくる。
俺は心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、
壁一面に貼られた『依頼板』へと向かった。
「えーと……初心者は、緑色の紙だっけ。
……あった。『魔力草の採取』」
【依頼内容:魔力草の採取】
【報酬:株ごとに銅貨五枚】
【場所:街の西門からすぐの草原】
これなら僕でもできそうだ。
俺は迷わずその紙を引き剥がし、
受付カウンターへと持っていった。
「……これ、お願いします」
「あら、ハヤトさん。
一人での初仕事ですね?
ちょっと待ってください、図鑑を持ってきます」
受付嬢さんがカウンターの下から、
分厚い革綴じの本を取り出し、ページをめくった。
「これが『魔力草』です。
葉が三股に分かれていて、
太陽の光を当てると根元が青く光ります。
いいですか? 採取する時は、
根を傷つけないように周囲の土ごと掘るんです。
根が切れると魔力が抜けて、
ただの雑草になって報酬が入りませんからね」
「……ね、根っこを土ごと……。
結構、繊細な作業なんですね」
「ええ。慣れないうちは、
十株掘って、まともなのは三株、
なんてこともザラですよ。頑張ってくださいね」
無事に手続きを終えて外に出ると、
ベルが約束通り樽の上で丸まっていた。
「お帰りかな。
……で、結局『草むしり』に決めたんだね?」
「草むしりって言うなよ。
失敗するとタダ働きになるシビアな仕事なんだぞ。
……よし、西門の草原へ行こう。ベル、案内頼むよ!」
「やれやれ。……ついてくるかな、ハヤト」
俺は小さな黒猫の後に続いて、
初めて「仕事」のために街の門をくぐった。




