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第ー話

 激しく連続して鳴る銃声と倒した机越しに背中に伝わる着弾の衝撃。


 それを感じながら、ツビカは手に持っている型落ち銃のマガジンを交換し、ボルトハンドルを引いて弾を装填した。


 銃器を持った二人組が戸を強行突破してから早5分。なんとかこの状況に持って行けた。一息つきたいところだが、この机を盾にし始めてから3分経つ。防弾とはいえその間、絶え間なく二人組の乱射を受け止め続けていると、机の耐久度が気になり始める。


 それに、机に当たらず、壁に着弾したところが削れ始めている。早く行動を起こしたほうが吉だろう。


 まさか、このような単純かつ穏便にすまない方法で来るとは思いもしなかった。今のご時世をご存知か聞きたい。これ以上、この屋敷が目立ってしまうと困るが…いえ、それが狙いだろう。少し練った策の方が、付き合っていて楽しいが。


 先ほど少し見えたあの顔、メイドたちが意外に抵抗してこなくて調子に乗っている顔だった。


 憎たらしい。とても不愉快だ、という感想が残る。


 これだけ撃ってる、そろそろ弾切れしてほしいが、まだ切れる気配はない。

 弾切れは無理。


 詰まらせる。否、口径が違う。先端部には入るかもしれないが、命中させるのが難しい。できなくはないが、今の興奮状態で正確に撃てる自信はない。


 ここにいる五人が机を押して完全に包囲する。

 否、床にはカーペットがある。押すのに力、何より時間がかかる。これ以上被害を出すとまずいだろう。


 机から腕だけ出して撃つ。これもない。目視してない分、命中率が下がる。当たらなかった弾がさらに被害を増やせば、本末転倒だ。


 ならば、残るは一つ。突っ込む、特攻。これが一番効率がいいだろう。

 近づけば今の身体、精神、環境の状態は全て関係がなくなる。しかし、近づくまでが問題だ。

 男たちは先ほどから絶え間なく発砲し続けている。ここで飛び出すと体のあらゆる箇所に穴が開くだろう。しかしそれはタイミングによってそれは回避できる。


 だが、ツビカが確実に殺せるのは一人だ。その後に銃弾を避けるという曲芸はツビカにはできない。飛び出したところで最悪死ぬ。よくても最低五発は当たる。


 当たりどころによってはこれから一切の戦闘が出来なくなる。


 ならば、ツビカと二人組との戦闘に途中から新たな戦力を追加すればいい。


 ツビカは、彼女の隣で同じように机を縦にしているメイド、レヴナの方を見て、机をコンコンと鳴らす。その音に気づいたのか、レヴナはこっちを見る。


 ツビカは一つのハンドサインを送った。一瞬、レヴナは目を見開いたが、すぐに元に戻り反対側にいるであろう、メリアとマリア、ルミに伝えに行った。


 それを見届けずに、ツビカは銃のグリップを握り、目を閉じ、深呼吸した。

 飛び出した後、狙いやすい方の男の頭を、一発で仕留める準備をする。


 ゆっくり息を吐き、引き金に指をかける。ツビカ除く四人の行動開始合図は、ツビカ自身の初撃発砲音。外せない。


 はぁ、時間だ。さっさと行動に移そう。タイミングを合わせなければ死ぬ。

 ツビカはそれを合わせるために、二人の注意を引くべく、机から腕を出して、二人を挟んで真反対の方に向かって発砲した。


 男の注意がそちらに向く。


 今だ。


 ツビカはハンドルを引きながら机の陰から飛び出て、全速力で二人に向かって走った。

 それに先に気づいた片方の男が振り返り、攻撃を試みる。しかしその顔は驚愕に満ちていた。

 しかし、この状況でその行動を試みた場合、照準を合わせてツビカに着弾するまでに銃弾は七発は当たらない。


 マシンガンの七発は非常に短い時間だが、十分な時間だ。


 一発二発とツビカの横を弾が流れていく。ツビカは男の頭に照準を合わせる。

 三発目、四発目と過ぎていく。

 五発目、相手の照準がツビカを通り過ぎ、これまでとは彼女の身体を挟んで反対側に抜けた。六発目、相手の照準がツビカに合ってきた。


 そして、七発目が頬を掠めた時、ツビカは、引き金を引いた。


 ツビカの放ったその弾は、狙いが外れること無く、その男の頭部を抜けた。

 男が倒れる最中、血が、花のように、まき散った。純白の床が、赤で染まっていく。


 もう一人の男は、硬直した。元から銃の扱い方、反動に対してのリアクション。それを見てつい最近までただの一般人だったのだろう。そういう条件下であれば、そうなるのも不自然ではない。今殺した方も同じならば、結構頑張った方だと、ツビカがその立場なら今際の際までそう思うだろう。


 一般人をこうするのだ。向こうの狙いは「戦力を削る」と言ったところだろう。それが目的ならば、この男にはこれから自分で結果を変えられるチャンスが一つある。

 今ツビカは撃ったばかりだ。ツビカが次弾を撃つには、ボルトハンドルを引き、薬莢を排出し、装填してからでしかできない。

 つまり、今の状況はこの男の状況認識能力、判断力によってツビカを殺れるということだ。


 さぁ、どう動く。


 しかし、それは無駄な心配だった。いや、ひやっとはした。最近まで民間人だったとは思えないほど、ある程度早くツビカの方に銃口を向けてきたからだ。ただ、やはりと言ったところだろうか。引き金を引くのに少しの躊躇いがあった。その感情には心底共感する。ツビカも最初はそうだったからだ。

 ただ、この状況に限ってはそれは起こしてはいけない衝動だ。


 作戦開始の合図は初撃発砲音。そして行動開始は二発目。もうこの場にいる全員が()()()()()()()()()()


 全員が物陰から身を出して銃を構えている。終わりだ。

 ツビカは出来る最大限の距離、後ろに下がった。


 準備ができたものから順々に引き金を引いていく。


 男の体が踊り、血を撒き散らす。また床を汚す。

 多分、叫ぼうとしたのだろう。その口は大きく開かれ、血の混ざった唾が散る。


 苦しそうな表情だ。かわいそうに。でもこれは終わらない。あなたが死ぬまで。


 体にはすでに欠損している部位もあり、腹には大穴が空いている。


 もういいだろう。ツビカは右手を挙げた。その瞬間、連続していた銃声は一気になくなった。その後に続いた静寂を壊したのは、もうすでにただの肉の端くれで繋がっているだけの何かが倒れる音だった。

今日からお願いします。

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