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イチゴのショートラブ

作者: 夏空

配信のノリでかいた

イチゴのショートラブ


忘年会当日。

 集合時間まで、まだ少し余裕があった。


「後輩くーん!こっちこっち!」


 駅前の小さなケーキ屋の前で、先輩が手を振っている。

 赤いマフラーに白いコート。クリスマスの街並みに溶け込みすぎて、目が痛くなる。


「……どうしたんですか?」


「せっかくクリスマスじゃん。飲み会前だけど、ケーキ食べたくて」


 そう言って、先輩はショーケースを指差した。

 そこには、王道のイチゴのショートケーキがずらりと並んでいる。白い皿の上で、イチゴのショートケーキが行儀よく揺れている。

 先輩は自分のフォークでイチゴを刺すと、何のためらいもなく俺の方へ差し出してきた。


「はい、後輩くん。あーん」


「……普通に食べますから」


「いいじゃん。減るもんじゃないし」


 結局、断りきれずに口を開ける。

 甘酸っぱい果汁が広がるのと同時に、視線が近くて落ち着かない。


「……先輩、こういうの慣れてますよね」


「なにそれ?」


「その……バイト先で、よく言われてるじゃないですか。

 男たらし、って」


 一瞬だけ、先輩は目を丸くした。

 それから、ふふん、と小さく鼻を鳴らす。


「なにそれ、後輩くんまで言う?」


そう言いながら、今度は俺のフォークを奪って、クリームたっぷりのスポンジをすくう。


「でもまあ……」


 口元に手を当てて、わざとらしくため息。


「アタシ、罪な女だからさ?」


「……自分で言います?」


「言う言う。だって否定できないし?」


 冗談めかして笑う先輩は、そのまま俺のフォークを使ってケーキを口に運ぶ。


「ん、おいし」


 その仕草ひとつで、胸がざわつく。


「……そういうとこですよ」


「えー?」


 首をかしげて、無自覚そうに笑う。


「後輩くんもさ、

 こうやって一緒にケーキ食べてる時点で、共犯だからね?」


そう言ってウインクする先輩を見て、

 俺は視線を逸らすしかなかった。


 ――ほらやっぱり。

 この人は、誰にでもこうなんだ。


忘年会は、案の定にぎやかだった。

 先輩はいつも通り、誰とでも楽しそうに話し、笑い、場の中心にいる。


「先輩、飲みすぎですよ」


「大丈夫大丈夫!後輩くんがいるし」


「それ、信用されてるって意味ですか」


「もちろん!」


 悪びれない笑顔。

その裏にある本音を、俺はいつも測れない。


 解散間際、意を決して声をかけた。


「……このあと、もしよかったら……二人で、もう一軒……」


「え?」


 一瞬驚いた顔。

 でもすぐに、頬を少し赤らめて微笑んだ。


「いいよ。後輩くんから誘われるの、なんか嬉しいし」


 二人きりで入った店でも、結局は世間話ばかり。


「来年も忙しくなりそうですね」


「ねー。後輩くん、ちゃんとシフト入ってよ?」


「先輩が無茶しなければ」


「ひどい!」


 笑って、笑って、

 結局、大事なことは言えないまま、店を出た。


「じゃあ……また連絡します」


「うん。気をつけてね」


 背を向けた瞬間、深く息を吐いた。


 ――やっぱり、無理だ。


 そのとき。


 コートの裾が、きゅっと弱く引かれた。


「……後輩くん」


 振り向くと、先輩が俯いて立っていた。


 街灯の下、

 冷たい夜気にさらされたその顔は、

 雪に触れた花弁みたいに、頬から耳まで淡く、そして確かに赤い。


 吐く白い息が、胸の鼓動に合わせて揺れる。


「ねぇ……?

 後輩くんは何か……アタシに言いたいこと……あるんじゃ……ないの?」


 心臓が跳ねる。


「……あります」


 声が、震えた。


それでも勇気をだして

酒の勢いでもなんでもいい!


「俺、先輩が好きです。

 自信もないし、どうせ本命じゃないって思ってたけど……それでも、ずっと」


 言い終わる前に、衝撃が来た。

 先輩が俺の胸に飛び込んできたのだ。


「ちょ……!」


 顔が見えなくなるくらい、ぎゅっと抱きつかれる。

 心臓の音が、重なってうるさい。


 やがて先輩は、涙を滲ませた瞳で、真っ赤な顔のまま見上げてきた。


「アタシも……アタシも!!

 …………ずっと好きだよ……」


 思考が追いつく前に、先輩はつま先立ちになり、そっと唇を重ねた。


 冬の夜より冷たい空気の中で、

 そのキスだけが、やけに温かかった。


 ――本命じゃないなんて、最初から思い違いだったらしい。


 そう気づいたときには、もう遅いくらい、幸せが胸いっぱいに溢れていた。



挿絵(By みてみん)

なんかこういう恋いいよね

メリークリスマスo(^-^o)(o^-^)o

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― 新着の感想 ―
イチゴのショートケーキみたいに、短いのにちゃんと三層で甘かったです……! ケーキ屋前の「あーん」から始まって、「共犯だからね?」のセリフで一気に距離を詰めておいて、忘年会後の「コートの裾をきゅっと掴む…
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