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第1話:悲劇の英雄、王都でスローライフ

 神聖ディアーナ王国の王都アルカディアス。

 今日も今日とて、この白亜の巨都には、絵に描いたような爽やかな朝が訪れていた。石畳を濡らす朝露がきらめき、パン屋からは香ばしい匂いが漂い始める。そんな平和な街の一角、安アパートの二階で、一人の男がもぞもぞとベッドから這い出した。

 男の名はアレン。25才。

 艶のある金髪は寝癖で跳ね、眠たげな目はまだ世界の輪郭を捉えきれていない。半年ほど前までは王国が誇る七大将軍の一人としてその名を轟かせていたが、今や見る影もない。あるのはただの無職の男である。


「……腹、減ったな」


 誰に言うでもなく呟き、アレンはよろよろと着替えを済ませる。簡素なシャツに黒のパンツ。かつての軍服姿とは程遠い。


「さて、今日も一日、何もしないとするか」


 高尚な目標を掲げ、アレンはアパートの軋む階段を下りた。向かう先は決まっている。行きつけのカフェ「ロイヤル・フォール」だ。


 ガラガラとドアベルを鳴らして店に入ると、甘いコーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。

「いらっしゃいませ、アレン様!」

 栗色の髪をツインテールにした快活なメイドのエマがぱっと笑顔を咲かせる。彼女はアレンの熱狂的なファンの一人だ。

「よう、エマちゃん。今日も可愛いね」

 アレンはカウンター席に腰掛けながら、慣れた仕草で片目を瞑ってみせる。ウインク一つ。それだけで、エマは頬をぽっと染めて俯いてしまった。


「も、もう! からかわないでください! いつものモーニングでよろしいですか?」

「ああ、頼むよ。コーヒーはブラックで」


 すぐに、こんがりと焼かれたクロワッサンと、湯気の立つコーヒーが目の前に置かれた。サクッとした食感とバターの豊かな風味。苦味の効いたコーヒーが眠気を完全に吹き飛ばしてくれる。


 これだ!この平和な日常。戦場の硝煙や、書類の山、そして何より面倒な人間関係から解放された、至福のひととき。俺はこのために頑張った(?)のだ。


 ふと、カウンターの隅に置かれていた新聞が目に入った。「王都ちゃんねる」のその一面には、デカデカとこんな見出しが躍っている。


【速報! 田舎の村に勇者誕生! 伝説の聖剣、少年アレックス君を選ぶ!】


 写真には、泥のついた服を着たそばかすの少年が、きらびやかな剣を抱え、笑顔で写っている。

「へぇ、勇者ねぇ」

 アレンはクロワッサンを齧りながら、写真の剣を値踏みするように眺めた。白銀に輝く刀身、柄には巨大な宝石が埋め込まれている。いかにも「伝説」って感じのデザインだ。


「……高そうだな、あの剣。売っぱらえば一生遊んで暮らせるんじゃないか?」


 そんな不敬極まりない感想を抱いていると、隣の席に座っていた二人の冒険者が噂話に花を咲かせ始めた。


「先輩、聞きました!? ついに例の『勇者様』が誕生したらしいっすよ!」

「ああ、朗報だな。ここのところ、北の国境じゃ息が詰まるような膠着状態が続いていたからな。これで少しは、こっちに風が吹く」

「違いねえっす! 勇者様がいれば、魔王軍の連中が固めてる防衛線なんてイチコロですよ。……ああ、でも。もし、あの筆頭将軍閣下が生きていらしたら、先陣を切ってどれほど勇ましく戦われたか……」

「おい、バカ。声を落とせ」

「えっ……? あ、す、すみません、つい……」

「……いいか、あそこを見ろ。アレン様がいらっしゃる。閣下を誰よりも慕い、その死を誰よりも嘆いておられるあの方の前で、軽々しく閣下の名前を出すな。傷口に塩を塗るようなもんだぞ」

「……確かにそうっすね。あんなに悲しそうに虚空を見つめているアレン様、見てるこっちまで胸が締め付けられますもん……」


 二人がこちらを窺い、同情的な視線を送ってくる。

 そう、俺、アレンは、半年前に暗殺された筆頭将軍カーター・ブリッツの死を深く悲しみ、そのショックで剣が握れなくなった「悲劇の英雄」として、今や王都で知らぬ者はいない有名人なのだ。


 齢八十を超え、国の生き字引とまで呼ばれた老将、筆頭将軍カーター・ブリッツ。その実態は、ただの説教くさいカタブツだ。

 会うたびに「アレン君、将軍たるもの、まず朝は誰よりも早く起き、心身を鍛錬し……」「アレン君、遅刻が多いぞ。アリスター家たるもの、勤勉をモットーとし……」「アレン君、酒はいいが、女遊びはほどほどに……」

 うるせえ!と、ずっと思っていた。

 面倒な会議、終わらない書類仕事、減らない任務。もう全部嫌だ。将軍なんて辞めたい。でも、俺を将軍に引き上げたのは他ならぬあのカタブツだ。辞めさせてくれるわけがない。


****************


【半年前の忌々しい事件】

 だから、ある夜、執務室でまた小一時間ほど説教が始まったので、俺は懐から愛用のナイフを取り出し、テキトーに心臓のあたりをサクッとやった。


 もちろん、後処理は完璧だ。

 遺体のそばに、かつて倒した魔王軍第二司令官の紋章を転がす。

 そのまま窓から庭へ音もなく着地。外側からガラスの端に極小の亀裂を入れ、鍵をこじ開けたように細工し、大きく開いた窓から夜風を招き入れれば、「魔王軍の刺客による犯行」という舞台装置の完成だ。


 城内に戻り、何食わぬ顔で巡回中の新兵を捕まえる。いかにも騙しやすそうな顔だ。

「アレン様! お疲れ様です、まだ執務中でしたか?」

「ああ。だが、これから閣下に緊急の報告書を渡さねばならなくてな。貴様も来てくれ、その後の伝令を頼むかもしれん」

「はっ! 喜んで!」


 しばらく歩き、執務室の前で、俺はわざと足を止めた。

「……妙だな。風の音がする」

 不思議そうに新兵が扉を開ける。その瞬間、夜風に揺れるカーテンと、床に広がる赤黒い海が視界に飛び込んできた。


「な……っ!? か、閣下ァ!!」

 新兵の絶叫が廊下に響き渡る。

 俺は血相を変えて部屋へ飛び込み、遺体に駆け寄った。

「閣下ッ! おい、しっかりしろ! 衛生兵を呼べ! 早く!!」


 俺の怒鳴り声と新兵の悲鳴を聞きつけ、ドタドタと廊下の向こうから他の衛兵たちが集まってくる。

「何事だ!」「曲者か!?」

 狭い執務室の入り口に、数人の衛兵が殺到し、そして全員がその惨状に息を呑んだ。よし、観客は揃った。

「ア、アレン様……脈が……もう……」

 新兵が震える声で告げる。俺はガクリと膝をつき、茫然自失の体で床の一点を凝視した。

「嘘だろ……。そんな、馬鹿な……」

「アレン様! あれを……!」


 衛兵の一人が、遺体の横に落ちていた紋章を指差す。俺はそれを震える手で拾い上げ、集まった全員に聞こえるよう、憎しみを込めて絞り出した。


「……第二司令官の紋章!?魔王軍め、平和を望む閣下をこんな卑劣な手で……ッ!!」

 俺はわなわなと肩を震わせると、糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。

「嘘だと言ってください、閣下……ッ! 嫌だ、起きてくれ……!」

 俺は遺体にすがりつき、獣のような慟哭をあげる。

「あんまりだ……ッ! 私を、私を一人に置いていかないでくださいぃぃ!」


 駆けつけた衛兵たちは、涙を流しながら、敬愛する師を失い壊れてしまった若き英雄の姿を、ただ見守ることしかできなかった。


 極めつけは葬式でのパフォーマンス。我ながらアカデミー主演男優賞ものだったと自負している。棺桶を涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにし、しがみついて離れず、衛兵三人に引きはがされる姿は、多くの国民の涙を誘った。「悲劇の英雄」「忠義の将軍」と、新聞は俺を称賛の言葉で飾り立てた。


 そして仕上げに、「閣下を失った悲しみで、もう剣は握れません」と宣言し、あっさりと将軍職を辞任。


 こうして俺は、面倒な仕事とカタブツの説教から解放され、多額の退職金と国民の同情を手に、夢にまで見た王都でのスローライフを手に入れたのだ。

 ああ、素晴らしい。人生はかくも自由で、かくも楽しい。


****************


「アレン様……」

 心配そうにこちらを見るエマに、俺はすっと立ち上がり、悲しみの影を宿した(ように見える)笑みを浮かべる。

「ありがとう、エマちゃん。大丈夫だ。俺は、閣下の分まで、この平和な世界を……見守っていくよ」

「アレン様……!」

 キラキラと瞳を潤ませるエマ。うん、今日も演技は絶好調だ。


 カフェでの優雅な朝食を終えた俺は、次なる目的地、王城へと足を向けた。

 目的は一つ。資金調達である。

 退職金はまだ十分にあるが、金はいくらあっても困らない。特に、当てがあるなら尚更だ。


「元将軍、アレン・アリスター様がお見えです!」


 衛兵の尊大な声が響き、重厚な門が開かれる。顔パスとは便利なものだ。俺は慣れた足取りで城内を進み、王族のプライベートガーデンへと向かう。

 陽光が降り注ぐ庭園で、一人の女性が俺を待っていた。


 亜麻色の髪を緩やかに編み込み、澄んだ湖のような青い瞳を持つ絶世の美女。この国の第一王女、プリンセス・メアリーだ。

「アレン……! 来てくれたのね!」

 俺の姿を認めるや、メアリーはドレスの裾を翻して駆け寄ってきた。


「ごきげんよう、メアリー殿下。本日もお変わりなく、花も恥じらうご様子で」

「もう、アレンったら……。そんなに褒めても何も出ないわよ?」

 口ではそう言いつつも、彼女の頬は嬉しそうに上気している。

 俺は彼女の手を取り、その甲に軽く口づけをした。そして、ふっと表情に憂いを帯びさせる。必殺、「悲しみの英雄」モードだ。


「殿下……。こうして穏やかな日差しの中にいると、ふと、思い出してしまうのです。筆頭将軍閣下と共に、この国の平和を誓い合った日々を……」

 俺の言葉に、メアリーの青い瞳が心配そうに揺れる。よし、食いついた。

「アレン……。まだ、お辛いのね。あの方は素晴らしい人でしたわ」

「ええ……。将軍を辞し、市井で暮らすようになってからというもの、どうにも世事に疎くて。新しい生活にもなかなか慣れず……。恥ずかしながら、少しばかり……生活が、苦しいのです」


 眉を下げ、遠い目をする。これが俺の黄金パターン。この顔が、彼女にはたまらなく効くのだ。

 案の定、メアリーは「まあ、なんてこと!」と目を見開いた。

「言ってくれればよかったのに! あなたは国のために全てを捧げた英雄なのよ? 不自由な生活なんて、私、許さないわ!」


 彼女は慌てて腰のポーチから、ずしりと重そうな革袋を取り出した。チャリン、という硬貨とは違う、もっと上品な音がする。

「これ、持っていって。近々、新しいドレスを仕立てるつもりだったけれど、アレンの生活に比べたら些細なことよ。足りなくなったら、またいつでも言いに来てね?」

「……! 殿下、このようなものをいただくわけには!」

「いいの! 私がそうしたいのだから。ね?」

 有無を言わさぬ笑顔で、革袋を俺の手に押し付けるメアリー。中をこっそり確認すると、大粒の宝石がいくつか入っていた。これを換金すれば、今夜どころか一か月は豪遊できるだろう。


 チョロい! あまりにもチョロすぎるぞ、プリンセス!

 俺は内心でガッツポーズをしながらも、あくまで感極まった表情を崩さない。

「……ありがとうございます、殿下。このご恩は、生涯忘れません。このアレン、命に代えても、あなた様を……」

「いいのよ、アレン。私は、あなたが笑顔で暮らしてくれるだけで……」


 うっとりと俺を見つめるプリンセス。ああ、なんて純粋な瞳なんだ。そんな目で見つめられると、さすがの俺もほんの少しだけ罪悪感が……湧くわけないか。

 今夜はどのバーで、一番高いワインを抜いてやろうか。俺の頭の中は、すでに夜の計画でいっぱいだ。


****************


【人類と魔王軍とが睨み合う、極寒の北方最前線】

 

 つい先日まで、薄氷の上とはいえ確かに存在した「平和」は、もはや見る影もなかった。

 魔王軍第一陣営。その中央に構えられた巨大な天幕の中は、外の猛吹雪よりもなお冷たい、凍てつくような殺気に満ちていた。


 その発生源は、天幕の奥。戦術地図の前に座る一人の男。

 黒甲冑に身を包み、見る者を魅了する妖艶な美しさを湛えているものの、鮮烈な緑髪と口端から覗く尖った鋭利な歯が、彼が人ならざる者であることを雄弁に物語っていた。


 魔王軍第一司令官、クロロス・ヒートである。

 彼は人間界から届いた報告書を指で弾いた。紙片は瞬時に緑色の炎に包まれ、灰となって床に散る。


「……簒奪者にんげんどもめ。愚劣極まる」

 ギザギザの歯を剥き出しにして放たれた低い声。それだけで、跪いて控えていた手練れの部下たちが、恐怖に震え上がった。


「報告によれば、かつて戦場で散った第二司令官の無念を晴らすべく、我らが汚い闇討ちに手を染め、隠居間際の老いぼれ(筆頭将軍)を暗殺したことになっているそうだな……」


「は、はっ……! 民衆の間では『聖戦』を叫ぶ声が暴発寸前……勇者の誕生を祝う祝祭までもが始まっていると……。さらには、我らと対峙するこの北方最前線においても、王国軍は急速な軍備増強を行っており、開戦はもはや時間の問題かと……!」


「絵に描いたような三文芝居だ。陛下の怒りは、すでに頂点に達しておられる。それでもなお、あの方は王としての矜持を失われてはいない。冷静に各国へ親書を送り、自身の潔白と、敵将への弔意を通達されたのだ!」


 クロロス・ヒートの言葉には、主君である魔王への絶対的な敬意と、それを解せぬ人間への苛立ちが滲んでいた。


「我らが沈黙を守り、無益な争いを避けてきたこの『平和』な数年間を、奴らは自らの手でドブに捨てた」


 彼は天幕の外、凍てつく闇の向こうにある人間たちの王都を見据える。


「我らを盾に、誰かが自らの罪を隠蔽したか……あるいは、我らを愚弄するためにこの大掛かりな舞台装置を作り上げたか。いずれにせよ、崇高なる魔王陛下の御名に泥を塗った罪は重いぞ」


 クロロス・ヒートがゆっくりと玉座の前から立ち上がる。それだけの動作で、天幕内の空気が鉛のように重く張り詰めた。


 彼は鋭い視線で部下たちを見下ろし、厳かに告げる。


「心して聞け。魔王陛下より勅命が下った」


 ゴクリ、と誰かが息を飲む音が響く。


「王国へ密偵を放て。探るべきは『真犯人』だ。魔王陛下は、近く開催される『諸王会議』の席上で、を真実を暴き……王たちの前で、ご自身の潔白を証明されるおつもりだ」


 部下たちが、魔王の壮大な計画に感嘆の息を漏らす。クロロス・ヒートは凶悪な笑みを浮かべ、さらに続けた。


「我らの使命は、その舞台が整うまで、この北の地を守り抜くことにある。

 ……全軍、戦闘準備! 押し寄せる愚かな人間どもを、一人残らずこの極寒の地で駆逐してやれ!開戦の時は近いぞ!」


「「「御意!!!」」」


 部下たちの裂帛の気合が、天幕を激しく揺らした。


 クロロス・ヒートは天幕の入り口から見える、遥か南の空――人間たちの王都がある方角を睨みつけ、低く吐き捨てた。


「お前らの国が如何に血に塗られた存在か……このクロロス・ヒートが、その身を以て教えてやる」 


****************


【すっかり日も暮れた王都】


 ガス灯がおぼろげな光で石畳を照らす中、アレンはご機嫌な足取りで裏路地へと入っていく。目指すは、大人の隠れ家といった「BAR キングダム・ルイン」だ。


 重厚な木の扉を開けると、カラン、と心地よいベルの音が鳴る。

「いらっしゃいませ、アレン様」

 白髪をオールバックにした、いぶし銀のマスターが静かに一礼した。

「よう、マスター。いつもの席、空いてるか?」

「ええ、もちろん。あなた様のために」


 アレンは磨き上げられたカウンターの一番奥の席に座る。プリンセスからせしめた宝石の一つを換金した金貨が、ポケットの中で心地よい重さを主張していた。


「今日は、何かいい酒は入っているか?」

「ふふ、お目が高い。ちょうど今朝、エルフの森から希少なワインが届きましてね。『満月の盗人』と呼ばれる満月の夜にしか収穫できないブドウを使った、まさに幻の逸品です」

「お主も悪よのう。じゃ、それ。ボトルで」

「……かしこまりました。今宵は、何か良いことでも?」

「ああ、ちょっとな」


 アレンはニヤリと笑う。まさか国の王女様を誑かして巻き上げた金だとは、口が裂けても言えない。

 やがて、埃をかぶったボトルと、繊細なグラスが目の前に置かれた。マスターが恭しくコルクを抜き、琥珀色の液体をグラスに注ぐ。芳醇で、果実が混じり合ったような甘い香りが、ふわりと立ち上った。


 一口、口に含む。

 舌の上で転がすと、複雑で奥深い味わいが一気に広がった。濃厚な甘みと、それを引き締める上品な酸味。喉を通った後も、豊かな余韻が長く続く。


「……くはぁーっ! うめえ……」

 思わず、心の底から声が漏れた。全身の細胞が、歓喜に打ち震えているのが分かる。

 これだ。これこそが、俺の求めていた人生だ。

 戦場で命のやり取りをするでもなく、執務室で書類に埋もれるでもなく、ただただ美味い酒を飲み、気ままに暮らす。


 朝はカフェでメイドに癒され、昼はチョロいプリンセスから軍資金を調達し、夜はこうして最高の酒に舌鼓を打つ。

「ああ、最高だ。将軍なんて面倒な仕事、さっさと辞めて正解だったな」


 アレンはワイングラスを片手に、窓の外の夜空を見上げた。星が綺麗だ。

 その星空の下、魔王の激怒を受けた緑髪の悪魔による手が、王都に向けて放たれたことなど、知る由もなかった。


「さて、明日は何をしようか。まずはエマちゃんの笑顔からだな」


 悲劇の英雄の、最高に不真面目なスローライフは、こうして始まったばかりである。

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