数百年かけて“最愛のあなた”を救ったら、死後に修羅場が待っていた件
「ようやく守れた……」
泣いている私を見て最愛のあなたは呆然とする。
「どうしたの?」
あなたの言葉に私はすぐに答えられなかった。
あなたが困惑するの無理もない。
だって、あなたからしたら今日は普段通りの一日。
いつもと同じように私と過ごし、何の疑いもなく最後まで続いていく……そう信じて疑わない世界でしかない。
だけど。
だけど、私にとってこの瞬間は。
数百年ものループを繰り返してようやく辿り着いた最高の結末……ハッピーエンドだった。
「泣かないで」
「うん……」
困惑しながらもあなたは私を抱きしめた。
「君の事だ。きっと何か色々あったんだろう?」
「うん……」
「頑張って、頑張って、頑張って……きっと、僕を守ってくれたんだね」
「う……ん……」
数百年の記憶が奔流となって押し寄せる。
遂に私は耐え切れず泣いてしまった。
「よく分からないけれど。落ち着いたら教えてくれる? 君の旅を」
泣きながら私は頷く。
あなたはきっと信じてくれるだろう。
この嘘にしか思えないタイムリープを。
永遠に続くかと思っていた私の旅を。
「あっ、きた」
「あー、きちゃった?」
「うっわ、気まず……」
そして、今。
私は目の前の光景に頭を抱える。
つい先ほど、私はお婆さんとなってあなたに抱きしめられながら天寿を全うしたはずだった。
死者の国での再会を約束して。
それほどまでに私とあなたは愛し合っていたのだから。
そして、今。
私はかんっぜんに予想外の光景を死者の国で目撃していた。
「ごめんね、本当に」
「いや、ほんっとうにごめん」
「うん。だけど、誰も譲れなくて……」
「そうなんだよ……その、僕ら君の事本当に愛しているから」
何百年も続いたタイムリープの中で悲劇的な別れを経験した最愛のあなた『達』。
そう。
私が死者の国で『あなた』を待つのを心に決めたように、あなた『達』も私を待っていてくれたのだ。
全ての魂が必ず還る場所で。
「えっ、どうしよ……」
頭を抱える。
全員が私を愛しているし、私もまぁ、全員を愛しているわけだけど……。
「ちょっと数が多すぎない?」
私の言葉にあなた『達』は頭を掻く。
「そうなんだけどさ。だけど、ほら」
「僕らも君のことを愛しているから……」
「そう。その、誰一人ここを譲る気はないっていうか」
えっ、本当にどうしよ。
この後、もう一人来るんだけど……。
「両手に花どころじゃないわね……」
私の冗談にあなた『達』は苦笑いをするばかりだった。