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第17話 妹とのプライベート時間

 幼馴染の神崎阿子(かんざき/あこ)には部活がある。西野麗(にしの/うらら)は友人らとの付き合いがあり、春季は一人で学校を後にし、街中に繋がっている道を進んでいた。


「あれ? お兄ちゃん?」

「ひよりも、どうしてここに?」


 街へ行く途中で、喜多方春季(きたかた/しゅんき)は妹のひよりとバッタリと遭遇した。

 ひよりは自販機を前に、飲み物を購入していたのだ。


「何を買ってたんだ?」

「おしるこ味のジュースだけど。お兄ちゃんも飲む?」

「俺はいいや」


 春季はその自販機を見た。

 おしるこ味の他に、コーンポタージュ味のジュースもあったのだ。

 季節も冬に近づいている事から、自販機の商品も温かい飲み物へと切り替わっているようだった。


「そういえば、お兄ちゃんはこれからどうするの?」

「街中に行こうと思って。そうだ、丁度いいし、今からアニメショップに行かない? お兄ちゃんは予定とかあった?」

「いや、特に深い予定もなかったけど。ただ何となく街中に寄って行こうと思っていただけで」

「じゃ、行こうよ」


 妹はおしるこの蓋を開け、飲んでいた。


「お兄ちゃんも一口どう?」


 おしるこのデザインがされた、おしるこ缶を春季へ渡そうとする。


「いいよ、遠慮しておく」

「えー、兄妹同士なんだし、別に遠慮しなくてもいいのにー、昔はそんなの気にしなかったじゃん」

「それは昔の話な。今とは全然違うだろ」

「そうだけど。でも、懐かしいよね、お兄ちゃんとこうして街中に行くの」

「確かにな」


 昔はアニメの話をしたりして、妹とは色々と楽しい時間を過ごしていた。

 中学の終わり頃からは普通に話しかけたりする事に、ちょっとした戸惑いがあったり、妹の事を意識し始めたりと。自身が読んでいるラノベに登場する妹キャラと重ねて考えてしまったりと、気まずかったり。

 変に考えてしまう事も多々あり、そこからアニメやラノベから距離を置くようになったのだ。


「お兄ちゃん?」


 ふと、声をかけられる。


「え? な、なに?」

「何じゃなくて、さっきからボーッとしてなかった?」


 隣を歩いている妹のひよりが、春季の顔を覗き込んでくるのだ。


「そんな事はないと思うけど」

「そう? 変な事でも考えていたとか?」

「そんなわけないさ。まあ、ただ昔の事について振り返っていただけ。それだけのことだよ。昔はひよりと一緒にラノベを読み合ったり、同じアニメを見たりさ」

「そうだね。あの頃は楽しかったよね。でも、これからお兄ちゃんもラノベとか、アニメを見てくれるだよね?」

「そのつもりだけど」

「でもさ、お兄ちゃんって、二年近くの空白があるし、私よりも知識が少ないかも。まあ、アニメとかでわからないところがあったら、私に聞いてもいいからね。そこに関しては私の方が上かも」


 自慢げな顔を見せるひよりは、春季の隣でウインクをして見せた。




「ここだよ、アニメショップ!」


 街の入り口まで到着すると、そこからひよりが案内してくれたのだ。

 今、入店した場所は、この街でも人気なアニメ専門だった。


 以前入店したのは二年前の事であり、お店の外見も、内装も様変わりしていたのである。

 店内でかかっているBGMも今流行りのアニメの主題歌を中心に採用しており、今放送中のアニメを殆ど視聴していない春季からしたら、何となくしかわからなかった。


 久しぶりの入店という事も相まって、新鮮な気持ちで春季は店内を歩けていたのだ。


「お兄ちゃん、こっちに来て」


 春季は妹から制服の袖を引っ張られ、とあるエリアまで移動する。


「ここが今のラノベの本棚だよ」

「え? かなり様変わりしてるな」

「そうだよ、昔と全然違うんだからね!」


 妹から現実を突きつけられた。

 昔、夜遅くまで読んでいたラノベのタイトルの殆どがなく。

 今では時代背景を意識した、新しいタイプのネーミングセンスをしたラノベや、投稿サイトから出版された大判ラノベなどが多数あったのだ。


「こういうのもあるんだ」


 春季は本棚にあった大判の本を手に取って、そのラノベの背面を見る。

 あらすじがあったり、物語に登場するデフォルメされたキャラクターが描かれていたりと。そこに関しては変わっていないが、驚くことがあるとすれば、本の価格が違うということだ。


「千円以上もするの?」

「そうなんだよね、今のラノベはそれくらいするよ?」

「マジか」


 今まで六〇〇円くらいでしか購入したことがなかった春季からしたら、驚きの方が勝る。


「お兄ちゃんが昔、買っていたタイプのラノベの方は七〇〇円もするよ」

「そうなのか?」


 ひよりから、最新刊であるラノベを渡され、その背面を確認してみた。


「……色々と変わってるんだな」


 ラノベのデザインからして、今風を意識した仕様になっている。


「まあ、高くはなったけど普通に内容も面白いし、買って損はないと思うよ。すぐに読みたいなら電子書籍とかを使えば、半額セールとか、一定期間限定とか色々あるし、おススメだよ」


 妹はスマホの電子書籍サイトを開いて、見せてきたのだ。


「でもさ、本は紙の方が読み易い気がするんだよな。読んでる気がして」

「私も同意見! 紙の方がいいよね! コレクションしているみたいだし、紙のページをめくっていくのが楽しかったりするしね」

「それ、わかるよな」

「うん。でも、楽し読みしたいなら、まず手始めに電子書籍からで、その後で本を購入すればいいかも」

「んー、そういう買い方もあるか。俺、このラノベは買うよ。新しい作品も読んでみたいし」


 春季はファンタジー風のキャラクターが登場するラノベを購入する決意を固めたのだ。


「そういや、ひよりって、プラモデルを買うとか言ってなかった?」

「うん。そうだよ。えっとね、確か、あっちのエリアにあったと思うから、ついて来て」


 春季は妹の後について行き、アニメショップ内のプラモデルコーナーへと辿り着く。


 そこのエリアでは、ロボットが登場する新作アニメのPVや、新作プラモデルの展示が行われてあった。

 塗装までされたロボットのプラモデルを前に、昔感じていた少年心を擽られる感じだ。


 昔はロボットアニメを中心に見ていたが、年を重ねるごとに、ラノベのような美少女系の作品をよく見るようになっていた。


 久しぶりにロボット系のアニメ作品を間近で見ると興奮する。


 ロボットのヴィジュアルや、体の動きなどが昔と比べて洗礼されており、リアル感が表現されているようだ。


 ひよりが、今のロボットアニメに魅了される理由が分かった気がした。


「私、やっぱり、欲しいんだよね、このプラモデル! お兄ちゃんはどうする?」

「んー、どうするかなぁ?」


 値段を見る限り、案外安く四〇〇〇円程度。

 買えなくはない。


「今は……少し足りないし。お小遣いが入ったらまた買いに来ようか」

「また今度ってことだね、お兄ちゃん。約束だからね」


 二人は展示されているロボットのプラモデルを前に約束を交わすのだった。


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