表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/24

第15話 春季は新しい朝を迎えた――

 (うらら)阿子(あこ)

 その二人と過ごした日曜日を乗り越え、今日――月曜日へと至る。


 喜多方春季(きたかた/しゅんき)は眠たい瞼を擦りながら自宅を後に、朝、学校へ向かって登校していた。


「春季、おはよう!」

「春季くん、一緒に行こ!」


 通学路の道で二人と遭遇し、春季は彼女らに挟まれながらも学校へ向かって行く。


 月曜日の朝から、二人からはグイグイと攻め込められているのだ。

 昨日。阿子が春季に対しての想いを、麗の前で晒し、それから彼女らの間で競い合いが生じている感じだった。


 平穏に過ごせると思っていたのに、とんでもない日々を送る羽目になるとは想定外だ。


 春季は通学路を歩いている最中もため息をはいて、今後の事について考えていた。


「私、春季のために弁当を作って来たんだけど。今日のお昼どうかな?」


 右側の方からは神崎阿子の誘いがあった。


「私も弁当を作って来たんだけど。春季くんは食べるよね?」


 今度は左側にいる西野麗から誘われる。

 双方から勢いある問いかけを受け、春季は戸惑っていた。


「春季くんが好きなのは、私の方だよね?」


 左側にいる麗が、春季の腕に抱きついてきた。

 いつもながら、素晴らしいと言わんばかりのモノに触れ、春季は麗の方ばかり見てしまう。


「最初から春季の事が好きだったのは、私の方なんだけどね」


 阿子も負けじと対抗してくる。


 その豊満な胸を使って誘惑してきた。

 春季の右腕は、今まさに阿子のおっぱいに挟まれていたのだ。


 朝っぱらから二人に近距離で絡まれ、緊張感を覚え始めながらも俯きがちになってしまう。


 ハーレム的な状況に、どう反応を示すべきか迷うのだ。

 通学路を歩いているだけでも、周囲の視線が気になってしょうがなかった。


「二人とも、今はこんなところでやめてくれないか?」


 春季は二人の勢いを宥めるように言う。

 しかし、彼女らは春季の意見を聞く素振りはなく、むしろ、先ほどよりも体の距離を縮めてきたのだ。


 春季は学校の昇降口のところまで二人から逃れることが出来ず、緊迫した学校生活がスタートしたのだった。




 他人から好意を持たれるのも大変だな。


 春季にとって、心が休まる時間といえば授業を受けている時くらいであり、授業中なら問題なく過ごせる。

 同じ教室にいる麗も真剣に授業と向き合っており、壇上前に佇む担当の教師の話をしっかりと聞いていた。


「では、授業はこれまで」


 担当の教師の発言と共に、授業終わりのチャイムが鳴り響く。

 クラス委員長が中心となって、クラス全員で終わりの挨拶をし、それを見た担当の教師は教室から立ち去って行く。

 授業中生じていたピリピリした空気感から、お昼休み時間へと移行して、ゆっくりと教室内が賑やかになっていくのだ。


 春季は机の上を片付けるなり、席から立ち上がり、教室から出た。


「ちょっと、春季くん」


 廊下を歩き始めたところで麗から呼び止められる。


「春季くん、一緒に食べる予定だったでしょ」

「え、ああ」


 春季は振り返って、彼女の方を見やった。


「私、自信作のお弁当を作って来たんだよ。今日は食べてほしいなって。一緒に食べてくれるよね?」

「そのつもりで、俺、今から自販機でジュースを買おうと思ってさ」

「そうなんだ、じゃ、一緒に行こ!」


 麗はテンション高めで、春季の事を慕うように満面の笑みを浮かべていた。

 二人は隣同士で一緒に廊下を歩き出す。


 廊下を移動していると、お昼休み時間なのに作業をしている人らがいる。

 その人らは、生徒会役員のバッジを制服の胸元につけており、校舎の壁にポスターを貼っていた。


「なんだこれは?」


 春季は立ち止まり、そのポスターへと視線を向ける。

 ポスターの内容としては、生徒会役員メンバーの再編成を目的とした、役員選挙だった。


「もうそんな時期なんだね。春季くん、去年もあったでしょ、この選挙」

「ああ、確か、そういえばあったな」


 振り返ってみると、そんな大がかりな行事を去年の十一月頃にやった記憶があったと、春季は思い出す。


 春季には関係ないイベントであり、あまり気にする必要性はないとも思ってしまう。


「あなた達、そのポスターに興味があるのかしら?」


 ポスターを見ている二人の前に、副生徒会長である東条二奈がやって来た。


「この選挙で一位を獲得すれば、私が来年から生徒会長という事になるの。あなた達も絶対に投票しなさいよ」


 二奈は堂々とした立ち振る舞いで話す。

 特に、麗に対しては対抗心があるらしく、二奈は彼女の事をジッと見つめていた。


「でも、ただ選挙をするだけだとつまらないし。あなたも出なさい、麗!」

「私が? なんで?」

「じゃないと、あなたに勝ったって実感が湧かないもの」


 副生徒会長である二奈から麗は名指しされ、候補者として出馬するように促されていたのだ。


 二奈は昔から麗に対してライバル意識を燃やしており、この選挙にて、正真正銘の一騎打ちをしたいらしい。


「私、生徒会役員の選挙には興味ないし。私はやらないよ」


 麗はきょとんとした顔で即答する。


「でも、あなたが出ないと意味ないじゃない」

「えっと、何が?」

「だから、私が正式に勝ったっていう実感を持てないってこと。麗、あなたにはその踏み台になってもらうわ」


 勝手に名指ししてきて、勝手にライバル意識を持たれているのだ。

 麗も面倒くらいといったオーラを放ち、近くにいる春季も、そんな彼女の様子を察する事が出来ていた。

 がしかし、二奈だけはわかっておらず――


「じゃあ、あなたが今回の選挙に参加するって事を、今の生徒会長に伝えておくわね」

「え、いいよ。私、本当にやらないし。そういうの興味ないもの」


 麗は拒否を示していたが、二奈は納得がいかないらしく、ジト目になっていた。


「はあぁ……分かったわ、一応、参加するわ。でも、一次の予選で落ちたら必然的に私、参加できないと思うけど。それでもいいの? 私みたいな一般生徒が一次を通るわけがないと思うけど」

「まあ、それは任しておきなさい。私の方で何とかしておくわ」


 二奈はニヤッとし、また後でと言い残して背を向けて立ち去って行く。


 そんな彼女の後ろ姿を見て、二人は少々ため息がちな顔を見せていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ