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首相官邸 2

「突入部隊の編成が終わりました。全員、死亡確認書へのサインも確認しています。」


 報告する次官の前で、膝に肘をのせて手を組んでいる栗夫が顔をあげる。


「人数は?」


「精鋭を十名です。武器は最新の銃を持たせます。バズーカは持たせません。中を確認するだけですので、長時間の滞在は想定していないことから、食料はなく、その分、銃弾を多く持たせます。一人でも負傷者がでたら、すぐに撤退するよう命令してありますので、失敗はしないと思われます。」


「保証は?」


 栗夫の問いに、次官はため息をつきつつ首を振る。


「ありません。」


「識者はだんまりだろ。」


 栗夫は、両腕を広げ、おどけたように言い放つ。


「はい。一人として答えません。すでに、連絡がつかない識者もいます。」


「ちっ。」


 あからさまに舌打ちをする栗夫は、数日で、明かに疲れた様子になっていた。


 とばっちりがこないだけマシですかね。


 次官は、ブツブツ言っている栗夫を少し眺めると、次の書類を取り出した。


「こちらが、突入を実行するための命令書です。サインをお願いします。」


「私も保証できないぞ、成功するんだろうな。」


 栗夫が、次官を睨み付ける。

 次官は、ため息気味に、口を開く。


「円盤の向こうにいるのが、連日都内に現れている怪物でしたら、数にもよりますが、逃げることはできると思います。確認だけでしたら十分に上手くいくと思われます。が、保証はありません。」


「もっと人数は増やせれないのか?」


 カタカタと机を叩く栗夫。


「すぐにですと、これが限界です。あと、円盤の大きさが、三メートルほどしかありませんので、一度に突入できる人数が限られます。多くしても、後ろが詰ってしまうだけで効果は薄いと思われます。」


「つまり、この辺が限度だと。」


「申し訳ありませんが、そうなります。」


「ちっ。」


 納得がいかない栗夫は、サインをしようとしない。

 実際、数日の被害はかなりでていて、後出しでバズーカを撃つ以外何も手立てもなく、生活を破壊されるがままに放置している政府の対応は、かなり批判が集まっていた。その上で、部隊を突入させ、円盤の向こうで解決する何かが見つかればいいが、見つからないどころか失敗となれば、栗夫の立場はかなり危ういものになるのは間違いなかった。

 考え込む栗夫に、次官が、仕方なさそうに口を開いた。


「気休めかもしれませんが、円盤の向こうを撮影した動画があります。ご覧になりますか?」


「そんなものがあるなら、何故出さない?」


 批判の声を上げる栗夫に、次官が、小さいUSBメモリーを差し出す。

 栗夫は、次官の手からUSBメモリーをひったくると、急いでテーブルに置いてあるPCに取り付けた。


「カメラのレンズを円盤に通しただけでは、撮影できなかった為、機材を全部向こうに通そうと、スマートフォンを動画撮影にして、自撮り棒に付け、円盤の向こうに通すことで撮影しました。」


 自動再生が始まると、いきなり、黒い画面になり、すぐに視界が広がる。


「まず、中は明るいようで、視界は良好です。入ってすぐは、洞窟の様な壁の部屋になっているようです。そして、その先に、かなり広い空間があるようですが、それだけです。それ以外、動く何かは全くありません。」


「何故だ、怪物がいるんじゃないのか?」


「わかりません。ただ、隊員の練度から考えて、最悪の失敗、帰還者がゼロはないと思われます。また、隊員には、全員に小型カメラを取り付けますので、一人でも帰還者いれば、状況が少しは判明すると思われます。どちらにしろ、突入して確認する以外の確認方法はありません。」


 足を組み、そこに肘をつき、その手に、額を置くようにしてPCを見ていた栗夫が、ゆっくりと顔を上げて、次官のを見やる。


「現に四人が入って、帰って来ていない。何かがあるはずなのに何もないなんて、怪しいだけだ。信用できん。それに、何故、こちらが最初に部隊を出さないといかんのだ?怪物はいきなり街中に現れるのであって、この、面倒くさいからゲートだ。このゲートから出てくるわけではない。わざわざ向こう側の、ダンジョンだ。に急いで部隊を送る必要はない。他の国が送ってからでも、十分なはずだ。」


「他国も同じことを考えています。」


「なに?確認、、。」


「確認もなにも、言葉が通じますので、間違えようがありません。」


 栗夫の言葉を切った次官は、ため息をつくと続けた。


「某国より連絡が入っています。突入部隊の成果に期待している、と。」


 舌打ちをした栗夫は、ペンを手にサインした。

読んでいただき、ありがとうございます。

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