戦刃物語《あやめクロウ》
「戦刃さん?」
西園寺は首を傾げる。
「去年、この私立鳴神第一高等学校に転入してきた転校生のことだよね?」
「ああ、戦う刃と書いて戦刃、ここじゃ珍しい名前だよな」
「えっと――たしか、徳川家の家臣から代々続く武家の御家じゃなかったかしら、半年くらい前にニュースで見たけれど、剣豪で有名だった――」
「――戦刃玄道だな」
「そうそう、玄道氏」
西園寺は合点がいった様子で、顎に手を当てる。
加えて、微かに笑みを浮かべた。
「もしかして、逆玉でも狙っているの?」
「よく知ってるな、そんな言葉……全くの誤解だ」
「そう? 芥生くんのタイプ、面白い子でしょ?」
「なあ西園寺……はぐらかさないでくれ」
「うーん、どうしようかな」
肘をついた西園寺は唸りながら、窓際へと向く。
「一年生の時は、それなりに話してたよ――けど、彼女も色々あったから……」
西園寺は言葉を濁した。
遠い昔を見るような、そんな穏やかな表情。
あるいは、親しい仲だったのかもしれない。
「西園寺は戦刃が今どうしているか、気にならないのか?」
「それは……何というか」
微妙な反応。
曖昧な返答を強いられ、困ったような表情。
すると、端を発したように。
「――で、芥生くんは、その戦刃さんに何の用なのかな?」
西園寺は、語気を強めた。
「何で西園寺が怒るんだよ……僕はただ、昨日、歩道橋で戦刃を見かけただけだ」
そう、見ただけ。
それ以上でもそれ以下でもない。
偶然、何かの悪戯で目が合っただけだ。
歩道橋の上。
人が辛うじてすれ違える通路。
部活動も終わり、生徒は完全下校する午後六時。
歩道橋の手すりを颯爽と歩く黒髪の少女と、偶々、目があっただけなのだ。
まるでロシアンルーレットのように。
脳天を貫く引き金を堂々と、自ら引けるとでも喧伝しているように。
彼女は堂々と歩いていた。
加えて、綺麗な顔立ちだった――控えめに言って、クールな美少女だ。
違和感があるとすれば、彼女の手に『裁ちばさみ』が握られていたことだろう。
そう――中学の家庭科の授業で使っていたであろう裁縫道具のハサミだ。
ご丁寧に『いくさばあやめ』という名前シールが貼られていた。
学校の授業で裁縫の授業でもあったのか、と考えたが、そんな授業はない。
なぜ断言できるかといえば、彼女の制服が――私立鳴神第一高等学校の制服だったからだ。
僕らの高校にそんな科目や部活動はない。
ではなぜ、いかにも大和撫子といった少女が、ハサミを手に歩道橋の手すりを歩いているのか。
それが気になって、今こうして西園寺に話しかけているのだ。
このことをそれとなく、西園寺にも説明すると、
「えっと、芥生君……すごく言いにくいんだけど」
「ん? なんだ言いにくいことって……言っておくが、夢の話じゃないからな」
「ううん、そうじゃなくて――それ本当に、戦刃さんだった?」
西園寺は微妙な表情で、首を傾げる。
さっきから微妙に会話が噛み合わない。
「いやなんだ、この高校には『戦刃あやめ』という同姓同名が二人いるって話か?」
「違う、戦刃さんは一人だよ」
「じゃあなんだよ、西園寺にしては歯切れが悪いな」
どこか煮え切らない西園寺の態度に、違和感を覚える。
何か僕が大きな勘違いしているとでも言いたげな顔だ。
「ほら、覚えてない? 去年の夏にあった剣道部の全国大会」
「全国大会で準優勝だっけ、うちの高校、凄く剣道が強い奴いるんだな」
「それだよ、その剣道部の主将が戦刃さんだったじゃない」
「え?」
頭が混乱した。
去年の夏のことは、比較的記憶に新しい。
だからこそ鮮明に覚えている――全国大会の予選で、全国ニュースにもなった。
過積載トラックの交通事故――その下敷きとなった少女は、利き足の自由を失った。
歴代最強と呼ばれたその生徒のチームは初戦敗退を喫し、全国大会優勝を逃した。
そのチームとは、うちの高校の剣道部だったのか。
それじゃあ、なんだ。
西園寺は何がいいたい。
僕が見たのは、ドッペルゲンガーか何かだったとでもいうのか。
そんな馬鹿なことあるか。
僕はそんなスピリチュアルなことを信じちゃいない――だけれど、西園寺の言いたいことはようやく分かった。
「つまり、車椅子だった……のか?」
「……そう」
西園寺は俯く。
掛ける言葉が出なかった。
夢を粉々に壊され、二度と剣道の出来ない体にされた少女。
戦刃あやめ。
彼女はこの学校の同学年の生徒だったのだ。
「ごめん、西園寺」
「ううん、いいの……彼女が元気にしてるなら、それでいいの……」
西園寺はおもむろに席を立つ。
もうこんな時間だ。
帰りのバスの時刻だろう。
引き留めて悪かったな、と言うと。
「彼女の話、しっかり聞いてあげて……」
と、一言言い残し。
短く手を振り、教室を去っていった。
♢
五月十五日。
黒板横の時計は、午後六時。
気が付けば、下校時間になっていた。
教室の扉から出入りする音は無く。
窓の外では、運動部がグラウンドで片付けをしている。
ここで、部活に入っていないのか、と聞くのはナンセンスだ。
僕は帰宅部だ。
誰が考えたか知らないが、上手い言い回しである。
さて、こんなどうでもいい話は心底どうでもいい。
僕が今、考えていることは二つある。
一つ――戦刃あやめに会うため、もう一度あの歩道橋に行く。
二つ――何事も無かったかのように帰宅する。
つまるところ、事の真相を知るために危ない橋を渡るか、いつもの平穏な日常に戻るかの二択である。
直感で申し訳ないが、何か嫌な予感がする。
僕の第六感は当たる方だ。だからこそ一考している。
もしかしたら、超次元的な何者かによって死ぬかもしれない――そんな予感だ。
未確認飛行物体にでも攫われるかもしれない。
あるいは、神様に喰われるかもしれない――と、冗談はさておき。
歩道橋へと向かった。
私立鳴神第一高等学校の校門を右に出て、少し海岸沿いを歩くと、十字路がある。
そこを直進し、景色は一気に街中へと入る。
ここら辺一体は、数百年前は田んぼ以外に何もなかったと聞く。
昔からあるものと言えば、高台の大きな社を持つ鳴神神社くらいだ。
もう夕方だからか、人通りも疎らで、夕陽が街路樹に影を落としている。
そんな大通りのど真ん中に、それはいた。
「あら、奇遇ね」
歩道橋の手すりにバランスよく立つ少女――戦刃あやめ。
裁ちばさみを手に、こちらを見下ろしていた。
「本当に奇遇だな、昨日と全く同じ時間だ」
腕時計は六時六分を指している。
丁度、逢魔が時だ。
「昨日の視線――やっぱり貴方だったのね、不思議な人」
「ああ、名乗りが遅れたが、僕は芥生清隆だ。戦刃――」
「あやめでいいわ、面倒臭いのは嫌いなの」
戦刃あやめは、あっけらかんと言葉を被せて言う。
距離の詰め方がバグっている。
さすが元剣道部主将だ。
剣道をやると、こうも懐に入るのが早いのか。
だがしかし、悲しくも僕は未経験である。
「戦刃あやめ、一つ聞きたいんだが」
「あやめ。よ」
「戦刃さん、大変言いにくいんだが」
「仕方がないわ、あやめるで妥協するわ」
「ハードル上がってるんだけど⁉」
「あら、友達は皆そう呼んでいたわ――?」
戦刃あやめは、流し目で首を傾げる。
十中八九、嘘を吐いている。
ならば、呼んでやろうではないか。
「おい、あやめる――」
「は?」
「うぉ⁉」
戦刃あやめはハサミで僕を切った。
正確には、空を切り裂き、僕の制服のボタンだ。
いつの間にか、その手にボタンが摘まれていた。
「避けないで頂戴、狙いがズレてしまったじゃない」
「そんな無表情で……なんて奴だ⁉」
明らかにヤバい奴だった。
初対面でこれほどクレイジーな奴に会ったのは、勿論初めてだ。
テレビで馬鹿やっているタレントの方がよっぽど常識的だろう。
「それで何か。私の名前を誤用した芥生君、誤用ならぬ御用かしら?」
戦刃あやめは脈絡もなく寒いことを言う。
「まあお前を見てると、もう大した用事ではないんだが……」
「というと?」
「最近の……調子はどうだ? 西園寺も心配していたぞ」
「あら、調子とは千葉県銚子市のことかしら、温暖な海洋性気候で暮らしやすい所だとは思うけれど……私は住んだことはないから、参考にならないわよ」
「いや、お前の身体の調子のことだ⁉」
「貴方の目は節穴かしら、私の完璧な肉体のどこを心配するのよ」
「自画自賛するか普通……まあ見た感じ問題なさそうだな」
戦刃あやめは、その両足で手すりに足をつけている。
傍から見れば、僕の姿は生足を吟味する変質者に見えそうだが、幸い人通りはないので通報はされないだろう。
そんなことを考える時点でアウトな気もするが。
「いつもここにいるよなお前、学校は行ってるのか?」
「いえ、もう学校は行っていないわ。そんなどうでもいいことより、ここは夕陽の見える最高の特等席なの――ほら、見なさい」
その視線の先には、海の地平線に沈む直前の太陽。
幻想的で、儚げで、沈む夕日が僕らを照らす。
「――綺麗だな」
「そうでしょう、私はいつも見ているわ」
そう誇らしげに言う戦刃あやめは、器用に手すりへと座り込み、両足を橋下へぶらぶらとしている。
ブランコで助走をつける時のような、退屈した子供が駄々をこねるように。
ふと、気になったことがあった。
戦刃あやめの左足だ。
西園寺から聞いた話では、事故で怪我をしたのは左足だった。
重症だったと聞く。
違和感がどうにも拭えない。
「戦刃あやめ、一つ、聞いていいか?」
「結局フルネームなのね……まあいいわ、それで何かしら」
「その、左足――もう平気なのか?」
「……は?」
歯?
意外な反応をされた。
戦刃あやめは、絶句といわんばかりに口を開ける。
何か不味いことでも言ったか。
そんなことを考えていると。
「……誰から聞いたのかしら?」
強い口調。
戦刃あやめは、歩道橋の手すりを強引に降りて僕を睨んだ。
思わず半歩下がる。
「……貴方に私の姿は、どう見えるのかしらね」
戦刃あやめは、僕の瞳を覗き込んだ。
その黒い瞳に意識が吸い込まれそうになった瞬間――
視界がぐるぐると反転した。
いや、足が地面につかない。
「――⁉」
見えたのは月だ。
耳を劈く風とともに、全身が何かに掴まれている。
真上を見上げると、左足に三本の鋭い鉤爪。
その先に、漆黒の黒い翼。
そして、人間がいた。
――戦刃あやめだ。
「お前、その身体⁉」
僕の問いに答えることはなく。
そのまま高度を上げ、街全体を見渡せるほどになった。
見れば、黒い翼は痛々しく舞い落ちている。
しかし、さらに天高く昇ってゆく。
どこまで行くのだろうか、そう思った矢先。
「……あ」
自由落下。
真っ逆さまに落ちてゆく。
空に落ちる感覚。
もう駄目だ――そう思った。
とうに夕陽は落ち、光輝く街の景色。
最後に見るかもしれない景色は、綺麗だった。
幻想的な走馬灯。
「――貴方」
真上から声がした。
大きな鴉だ。
いや、少女か。
戦刃あやめは、目を細めて僕を睥睨すると。
「――私が怖い?」
そんな皮肉めいたことを言った。
「今、それ聞くか普通……まあ怖くない訳じゃないけどさ」
戦刃と初めて会った日――
歩道橋の手すりを歩く少女に、僕は目を奪われた。
そのインパクトか、美貌か、儚さか。
いずれにしても、あの顔をされたら、もう何も言えなくなる。
全てを諦めたように、白を切る顔だ。
それでいて、まだ希望を残している顔だ。
そして僕は、彼女の『秘密』を垣間見た気がした。
頭から吸い込まれていくような深い――ブラックホールとでも言おうか。
そんな人知を超えたものを感じた。
だからこそ。
「お前が僕を殺すのは勝手だ――だけど、僕はお前を知りたいと思ったんだ!」
これは僕の性分だ。
どうしようもなく、心の底から湧き上がる。
未知を知りたい。
その強い好奇心で脳が埋め尽くされる感覚。
僕はどうしようもない奴だ。
何度死んでも変わらないだろう。
ただ僕は、歩道橋で寂しげに佇んでいた少女――戦刃あやめのことが知りたい。
「――ふふ、おかしな人ね」
一体どこにツボがあったのだろうか。
僕の真剣そのものの顔を見て、戦刃あやめは笑っていた。
空気抵抗で不細工にひしゃげてるであろう人の顔を見て笑うとは、不愉快な奴だ――とは思ったが、悪い気はしなかった。
無表情より何倍も、笑顔が魅力的だったからかもしれない。
「それと、お前じゃないわ。戦刃よ」
「あぁ、戦刃……肩を、貸してくれないか?」
「嫌よ」
「だよなー⁉」
叫びは空しく宙に四散する。
すでに街の広告テナントの文字が見える距離だ。
これ、本当に死ぬんだが……そう思っていると
「――ただし、協力するなら助けてあげてもいいわ」
戦刃はわざとらしく、咳払いの仕草をする。
お前のせいなんだけど……と声を大にして罵りたい気分だが、背に腹は代えられない。
渋々、仕方なく。
「どうせ拒否権なんてないだろ……協力するさ」
「ええ、どうもありがとう」
浮遊感が消えた。
口約束だが、約束は守るようだ。
ゆっくりと地面に近づくと、街の高台にある神社の境内についた。
「足ついたぁ……」
「全く、情けないわね」
「なんとでも言え……」
無茶を言わないでくれ。
こっちは空中遊泳の人生初体験だったのだ。
空飛べる奴と同じにしないで欲しい。
地面に足がつくって贅沢だ……
「芥生くん、いいかしら」
「あぁ、なんだ」
「私は、紛れもなく人間だわ」
「過去の話か?」
「違うわ、次は本気で刺すわよ」
「わっ⁉ 悪かったって……で、さっきのは一体何なんだ」
黒い翼が背中から生えていた。
しかし、今ではすっかり元通り、そこには何もない。
「これは、私にも何かは分からないわ。感情が高ぶると出るのよ」
「そんな得体のしれないものよく使えるな⁉」
「使えるわ、手足のように制御できるもの」
「そういうことじゃない……危険だと思わないのか?」
戦刃は、鼻で笑って言う。
「全く思わないわ」
「そうかよ……」
お互いそっぽを向く。
言いたいことが山ほどあるが、皮肉も聞かなそうだ。
疲れたからとりあえず帰るか。
……
神社の境内は、涼しげな風が吹いていた。
とっくに夕暮れ時は過ぎ、もう夜だ。
明日は早朝からバイトだと思うと、足が重い。
それでも家に帰らねばならない。
階段を一歩降りる。
「待って」
ふいに制服の袖が固定された。
「まだ何かあるのか?」
振り向くと、ジロリと睨まれた。
なんか怒っている。
「もう忘れたのかしら、協力しなさい」
「別に協力するのは明日でいいだろ……休ませてくれ」
「家に泊めなさいよ」
「は?」
聞き間違いだろうか。
「家に泊めろ、かしら」
「いや、命令形にすれば解決するって話じゃないからな⁉」
「じゃあ、泊めろ下さい?」
「丁寧なのか命令なのかどっちだよ⁉」
それだと丁寧に命令しながらねだるみたいじゃないか。
「迷惑はかけないわ、犬小屋でいいもの」
「それは法律的に不可だ! さっさと自分の家に帰れ」
「帰れたらとっくにそうしてるわ、無茶を言わないで」
「無茶を言うのはお前の方なんだが……」
どんな事情があるいかは知らないが、厄介言であることは明白だ。
ましてや、どこぞの馬の骨かも分からない僕に、戦刃家から大事な娘を奪われた(濡れぎぬ)を着せられた日には、日向を歩けなくなりそうだ。
「やっぱり帰れ」
「ひどいわ……芥生くんも私を捨てるのね」
「僕が悪いのか⁉」
戦刃は目を両手で覆い、その隙間からチラッと覗くと、
「私の『秘密』を知ってるのに――ね?」
「なんで疑問形なんだよ」
言ってる本人が疑問に思って不安になってどうするんだよ。
ちょっと可愛いと思っちゃったよ。
どうしてくれるんだ。
「――いいわ、今なら翼が出た経緯もつけるわ」
「商売上手か⁉」
強力なカードを出してきた。
そんな簡単に話していいことなのか、と思うが、きっと約束は守るだろう。
僕の好奇心が勝つか、猜疑心が勝つか。
無表情の先に、そんな悪戯めいた揺さぶりをかけてきている。
まあ、そんなの答えは決まっている。
「……分かった。ただし一日だけだ」
「ふふ、私の勝ちね」
手銃の真似をし、満足したように鼻をならす。
「いや、勝ち負けじゃないから」
「さあ、夜も遅いわ、行きましょう」
相変わらず切り替えが早い奴だ。
「ああ、分かったよ――」
その後を追って、僕も階段を下り始めた。
♢
「あら芥生くん、誰もいないわ。二人きりよ」
開口一番。
不知火荘の三号室の扉を開け、戦刃あやめは言う。
どうしてここに戦刃が立っているのか。
それは数分前の出来事だが。
狐に摘まれた気分だ。
「靴が一つしかないなんて……」
「そりゃ、一人暮らしだから、必要なものだけだな」
「これが最低限度の生活だというの……」
「そこまで悲観的か⁉」
「雨が降った翌朝、濡れた靴は履けないわ」
「確かに、今まで奇跡的にその日はなかったな」
「でも、心配しなくて大丈夫よ、芥生君」
「何でだ?」
「靴がないなら、長靴を履けばいいじゃない」
「どこの熱帯雨林のマリーアントワネットだよ⁉」
「ふふ、それにしても、芥生君」
「今度は何だ?」
「てっきり実家住みだと思っていたわ、顔に貫禄あるもの」
「それは褒めているのか? まあ、実家は高校からだいぶ遠くにあるからな」
電車通学も一時期考えたが、片道三時間だ。
精神的にも肉体的にもきつい。
それならこっちでバイトした方が幾分かマシだろう。
それに、このアパート『不知火荘』は年季があって賃貸も格安だったのだ。
名前も『火を知らず』って感じで、燃えにくそうで語呂が良いし。
「よしよし、いい子ね」
先に部屋に入っていた戦刃は、丸い毛玉を撫でている。
白色、茶色、黒色の三色の毛並み。
手触りの良いもふもふとした尻尾に、円らな瞳が愛らしい。
「――三毛猫ね」
「ああ、可愛いだろ、名前はミケだ」
「途方もなく安直ね、でもシンプルなのは気に入ったわ」
ミケも戦刃のことを気に入ったらしく、いとも簡単に寝転んだ。
僕の時とは大違いだ。
「あ、飯は簡単でいいか?」
「ええ、せっかくだから私も手伝うわ」
そう言うと、戦刃はミケを下ろして立ち上がる。
僕も鞄を片付け、キッチンへと回る。
戦刃には、冷蔵庫の余りものしかないと伝えたのだが。
白米と人参、玉ねぎ、卵を取り出し、あっという間にコンロに火をつけ始めた。
主婦も驚く、見事な手際だ。
玉ねぎと人参は、約五センチ角に均等に切り刻まれる。
僕もまな板に回り、食材をフライパンへと運んでゆく。
「戦刃は何でもできるんだな」
「――いえ、何でもは……できないわ」
食材を炒めながら、戦刃は短く答えた。
懐かしむような虚しいような、そんな声色だ。
少し気にはなったが――いい香りがしてきた。
「お、見た感じ旨そうなオムライスだな」
「見た感じではなく、味も旨いの、美味なのよ」
あっという間に料理が完成した。
上に乗っている卵が良い感じにふわふわしているのが良い。
冷めないうちに運ぼうとすると、ピシッと止められた。
「いえ、まだ完成ではないわ」
「そ、そうなのか?」
戦刃は冷蔵庫から、赤い容器――ケチャップを取り出す。
そして、オムライスの上に文字を書いた。
「これで完成よ」
「お、おう」
そこには『LOVE』の文字がでかでかと書かれていた。
「これで芥生君の胃袋は、私のものね」
「良くある台詞なのに、なぜか背筋が寒いんだけど……」
「だって、その意味で合っているもの」
「ストレートな殺害予告だった⁉」
「あら嫌だ、冗談よ。座って頂戴」
着席。
ようやく席についた僕たちは、オムライスを口へと運ぶ。
「旨い……!」
思わず頬が緩む美味しさ。
味付けはシンプルだけれど、素材の味が引き立っている。
玉ねぎと人参の甘味にトマトケチャップの酸味がいいアクセントになっている。
「ふふ、それは良かったわ」
戦刃が笑った。
誰かと食べるのも案外悪くないな、と思いながら。
つられて一口、また二口と食べ進める。
完食直前。
ふと、気になったことがあった。
「そういえば戦刃、両親に連絡は――」
「芥生君」
ピシャリと、一言。
驚くほど冷たい声だった。
軽い金切り音が同時に鳴る。
いや、ただ僕のスプーンが落ちただけだ。
耳に響く。
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ――」
戦刃は落ちたスプーンを拾い、僕の方へと差し出す。
「いや、僕も悪かった……」
誰だって触れられたくない秘密の一つや二つある。
それが戦刃あやめにとって、きっと家族のことなのだ。
あの姿のことも少なからず関係しているのだろう。
早めに気づいておくべきだった。
いいや、そうじゃないな。
何か大事なことを見落としている。
思えば、戦刃が歩道橋の上にいたこと自体、不可解な話だった。
なぜ僕は、彼女と目が合った。
四六時中、街中は人が行き交うというのに、誰も彼女を気に留めないのはなぜだ。
歩道橋に屯する少女がそこら中にいてたまるか。
そんな街に暮らしたくはない。
なら、戦刃は透明人間だとでもいうのか。
でも、僕にははっきりと姿が見えている。
答えが出ない。
前提条件を変えてみよう。
僕だけが観測できる戦刃あやめ。
もしもこの現象の特異点が、偶然にも僕だったとしてみると。
これはまるで――
「――神隠し?」
「えっ」
僕の言葉に、戦刃の手が止まった。
まるで図星をつかれたと言わんばかりに、目をぱちくりさせている。
「つまり……そう、なのか?」
「……」
音が止んだ。
静寂。
少し息をのむと。
「――少し長くなるのだけれど……いいかしら?」
戦刃は口をひらいた。
緊張した面持ちで、深く目を瞑ったまま。
「ああ……聞かせてくれ」
「ええ……」
頷く戦刃。
そしてゆっくりと、語り始めた。
戦刃あやめという過去の話を――。
♢
戦刃家。
戦国乱世に終止符を打ち、江戸幕府を開いた初代将軍――徳川家康。
その初代から第十五第将軍、徳川慶喜に至るまで仕えた武将の一族。
由緒正しい御家。それが戦刃家なのだ。
戦刃あやめ。
江戸時代から代々続く武家の御家の一人娘として生まれた。
彼女の名付親は彼女の祖父――戦刃玄道。
古くから伝承されてきた戦刃流抜刀術の免許皆伝。
戦刃あやめの師匠でもあった。
彫の深い顔の造形に、髭の生やした豪傑で、親戚ですら恐ろしいと評すほどの御仁だったという。
それもあって、こう密かに呼ばれていたらしい。
『天狗』
人間離れした剣裁きと鼻の高い風貌も相まって、その名前が定着したようだ。
戦刃あやめはそんな人に、あくる日もあくる日も厳しい稽古をつけられた。
それは酷かったらしい。
まさに拷問だ。
体力増強を兼ねた毎朝四十二キロのランニング。
型の素振りは毎日千回。
学校から帰れば、道場で容赦のない本気の打ち込み。
まだ中学生の戦刃あやめを子供と思わないような、そんな眼つきだったという。
いつまでこの地獄が続くんだろう。
戦刃あやめは限界だった。
自分が戦刃家に生まれたことを憎むほど。
戦刃あやめの鋭くも優しさを持った目は、いつの日か、祖父を今にも射殺すような目に変わっていた。
当たり前の生存本能だ――そう声を大にして言いたくもなる。
戦刃あやめは悪くない。
むしろ過酷な修行を課した戦刃玄道に、矛先が向くべきだろう。
そしてある日――戦刃あやめは交通事故に遭う。
利き足だった左足は、回復することはなく、車椅子が彼女の足となった。
家族には見放され、二度と剣道の道は進めなくなる。
そんな時、戦刃あやめはこんな御伽噺を耳にする。
『戦刃家の箪笥には、天狗の翼がある』
それは――呪物と呼ばれるもの。
天狗の翼は、願いを一つ叶えるが、その代わり身内に不幸が起こるという。
戦刃あやめは、夜更けに家中の箪笥を探した。
どうしても叶えたいことがあった。
たとえ、それが許されないことでも。
自分が自分でいるためには、そうするしかない。
戦刃あやめは、ついにその箪笥を開けた。
それは――存在した。
漆黒の羽毛に、鋼のような骨。
『天狗の翼』
呪物は実在していたのだ。
これで願いは叶う。
戦刃あやめは願う。
左足の怪我が治りますように。
そして、箪笥の引き戸を閉め、部屋を後にした。
その後、夜明けがきて。
戦刃あやめは喜びを露わにする。
左足がすっかり治っていた。
最初から何もなかったように、綺麗さっぱり。
その足で、屋敷の道場に続く角を曲がると。
――戦刃あやめは、絶句した。
願いは叶っていた。
戦刃あやめの意図しない形で。
呪物の恐ろしさを知った。
その特異さを、異質さを。
火花。
真っ赤。
道場は火だるま。
おびただしい数の消防車。
その中に、一台の救急車。
担架が運ばれた。
この日――戦刃玄道は死んだ。
♢
「戦刃……」
戦刃あやめは泣いていた。
その腫れた目線を泳がせて。
「そうよ、私はあの男を……!」
呪物への願い事。
その代償として、戦刃の身体は天狗の翼に憑りつかれた。
さらに師匠であった叔父を亡くし、激しく悔やんだ。
僕が戦刃の姿が見たのは偶然だと思っていた。
けれど、それは少し違う。
先に目の前に現れたのは、戦刃の方だったんだ。
誰からも存在しない世界。
そこで戦刃は、自らの過去と戦っていた。
争いの種がなければ、争いは生まれない。
誰も争わず、平和な世界。
なら、いなくなってしまえばいい。
そう自分に言い聞かせ、忽然と姿を消した。
ただ、それは残酷なものだ。
どれだけ時間が経っても。
どれだけの後悔を繰り返しても。
戦刃の願った未来はやってこない。
結局、神に与えられた呪いも祝福も、受け入れるしかないのだ。
大切な過去も、後悔した過去も。
自分を縛り付ける憎たらしい過去も。
ただ、前に進むために。
だから、姿を現した。
きっとそうなのだ。
「聞いてくれて……ありがとう」
戦刃あやめは言う。
力強く、拳を握りしめて。
♢
「――えっと、どこからツッコめばいいのかな……?」
西園寺は眉を顰める。
五月二十日。
放課後の教室。
前の席の西園寺は、顎に手を当てて困った表情を浮かべていた。
戦刃あやめの秘密は上手く伏せ、一連の出来事を西園寺に話した。
「つまり、戦刃さんは元気で――ご両親とは喧嘩中だって言いたいのかな?」
「まあ……そんな感じだな」
「それで、芥生君は一人暮らしの家に女子を一晩泊めた――と」
「その言い方は語弊がある!」
戦刃が僕に強制、無理やりだ。
それもやけくそみたいな約束で。
「――でも、芥生君は実際に、戦刃さんと会って話をしたんでしょ……?」
それはそうで、そうだった。
戦刃は今、神隠しに遭っている。
誰からも見えていないのだ。
僕だけが彼女と話せていた。
「それは良かったんじゃないかな……戦刃あやめさんにとっても、芥生君にとっても……」
僕にとっても?
その言い方は変じゃないか。
「戦刃にとってだけでなく、僕にとって? それはどういう意味だ?」
直接、戦刃に会って話すのを勧めたのは、西園寺だ。
その言い方だと、僕が戦刃と話すことで何かを解決したみたいじゃないか。
まだ何か、西園寺と噛み合わない節がある。
「西園寺も戦刃に会いに行くか? 今日もあいつ、歩道橋の上にいるはずだ」
「うーん……私は遠慮しとくね」
「そうか? というか西園寺、あいつ料理できるって知ってたか? オムライスなんだけど、滅茶苦茶旨かったんだよな」
「へぇ……そうなんだ」
「あんまり興味なさそうだな? 戦刃といえば剣道だったもんな、強かったんだろ。全国大会に行くくらいだし」
「まあ……ね」
「そういえば、戦刃が西園寺に感謝してたぞ。いつも教室で話してただろ――それで」
他愛もない話。
それでも話したかった。
僕にしか伝えることができないんだ。
だから、いくら話しても話し足りない。
だからもう少し聴いて欲しい。
「それで――」
僕が言葉を発した。
刹那。
「もういい加減にしてよ……!」
絶叫。
思わず全身が硬直する。
見れば、西園寺は泣いていた。
僕が泣かせた?
なぜ。
「……」
嗚咽。
どうして泣いてるんだ、とか。
状況が読み込めず、時間だけが過ぎてゆく。
そしてしばらくしてから、西園寺は頭を上げて。
優しい聖母のように穏やかに。
まるで無知な子供をあやすように、優しく。
こう言った。
「――戦刃あやめさんは、去年に亡くなっているじゃない……」
「……?」
言葉を失った。
不謹慎だ。
西園寺こそ、いい加減にしてくれ、とか。
咄嗟に拳で西園寺を殴りかけて、止めた。
その真剣な目に、否定の言葉は一切ない。
本当に――事実が、現実が、どうしようもなく、きっと正しいのだ。
間違いようがないのだ。
言葉は重々しく。
頭は頭痛が痛い。
そうだこれは。
世界の方が間違っている。
きっと。
きっと――間違っている。
『バイバイ』
そんな別れ際の短い言葉が、頭を反芻する。
違う。
そんなはずはない。
戦刃は一人、そこに確かにいたのだ。
ずっと、そこに一人ぼっちで。
家族のことを愛し、憎み。
厳しい祖父のことを嫌い、それでいて一番尊敬していた。
そんな少女が、もう死んでいる?
だからなんだ。
事実だとしても、それに何の意味がある。
そんなのどうでもいい。
戦刃は戦刃だ。
いるんだ、そこに。
「――――芥生君⁉」
――僕は力の限り、走った。
教室の扉をなぎ払い。
校門を右に出て、海岸沿いを走った。
十字路を駆け抜けて、街中の人込みを突っ切る。
街路樹の先に。
「戦刃っ……どこだ、聞こえてるんだろ!」
思いっきり叫んだ。
無我夢中に、どんなに息が苦しくても。
全人類に聞こえるように。全力全開で。
悔しさをぶつけるように。
ただ、日頃の運動不足が祟った。
咄嗟に出た足がもつれて転んだ。
我ながら情けない。
「……はぁはぁ」
大の字で倒れこむ。
冷たいアスファルトが気持ちいい。
雨が降っていたようで、鞄も靴もびしょびしょだ。
戦刃アントワネットの言っていた通りだ。
これじゃ明日は靴が履けないな……ざまあない。
視界もぼやけてきた。
ああ、なんだこれ。
バカみたいだ。
泣けてきた。
こんな有様じゃ、もう少し雨にあたるか。
そのまま、目は瞑る。
行き交う人混みの喧騒。
無機質な排気音とともに人が通り過ぎる。
遠ざかっては近づく靴音。
その中の一音。
コツコツと、こちらに近づいていた。
そして。
――ふと、雨粒が止んだ。
「あら、とんだお寝坊さんね。芥生君」
いたずらな軽口。
黒い髪の少女。
見間違えるはずがない。
「戦刃……なのか」
「ええ、芥生君にだけ見える幽霊とかは管轄外よ」
「その軽口……戦刃だな……」
戦刃は僕を覗き込むと。
「なにを泣いているの? 気持ちが悪いわ」
「泣いてる人に対してひどい言い草だなっ⁉」
安心したら腰が抜けた。
ただ、そのまま歩道を占拠しているわけにもいかない。
脱げた靴を持って、立ち上がった。
「生きてる……よな」
戦刃の輪郭を確認し、何度も反芻する。
間違いなく、生きている。
「……は?」
「ごめん、嬉しくてつい」
戦刃は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているが。
しばらくすると。
「――まあいいわ、今日くらいは……貸しにしといてあげる」
と言って僕の手を引いた。
「いや、貸しかよ……」
その手はとても。
とても――暖かかった。
♢
鳴神公園。
大きな滑り台にて。
戦刃は滑り落ちながら。
叫ぶ。
「私が死んでる――ですって⁉」
開口一番。
怒声。
「対外的にそうなってるみたいだぞ、西園寺もそう勘違いしてたし」
「まさに寝耳に水ね……死人扱いされているなんて」
戦刃は心外といった様子で、こちらを睨む。
いや、僕が喧伝した訳じゃないんだが。
それこそ戦刃と全く同じ気持ちなんだけど。
「何かそうなった心当たりあるか?」
「ない――と言いたいところだけれど……心当たりがない。という訳でもないわ」
「そうなのか?」
「ええ、私、交通事故で入院してた訳じゃない」
「ああ……聞いた」
「私、窓から飛び降りたのよ」
「なるほど……って、はぁ⁉」
「飛び降りたの」
飛び降りた。
自殺。
戦刃は二度繰り返した。
その真意を理解するのに、それ以上言葉はいらなかった。
真っ直ぐな目を見れば分かったからだ。
後悔何て一切していない。
となると、あのことが関係してるのか。
「えっと――無事なのは、あの翼のおかげか?」
「ええ、まあ結果的にはそうね」
結果的には。
一か八かということだろうか。
それにしては危ない賭けだ。
そこまで追い詰められていたのか。
戦刃は。
「……」
僕の横で戦刃は、通りを歩く親子を眺めている。
母親と父親、その間を娘が手を繋いで。
まさに絵にかいたような、幸せいっぱいの家族だ。
その家族が通り過ぎた後。
「――場所を変えましょう」
戦刃は唐突に言う。
滑り台からブランコへ、その隣に僕も座る。
「芥生君、家族って何かしら」
「急になんだよ」
「いいから答えて」
「……生まれた時から一緒にいて、自分を一番近くで見てくれる存在――かな。曖昧だけど、そんな感じだな」
「ふーん、良い答えね」
「反応薄いな……で、どんな意図で聞いたんだよ」
「秘密」
そう短く言い、戦刃は立つ。
「もう夜といってもいい時間ね」
公園の時計を見れば、午後七時を回っていた。
家に帰る時間ってことか。
そういえば、戦刃はどこで暮らしてるんだ。
姿が見えない状態で、どう生活しているのだろうか。
「なあ、戦刃」
「何かしら?」
「今、どこに住んでるんだ? 神隠しに遭ってるのに、実家って訳にもいかないだろ?」
「いえ、家よ」
「いえ?」
いえいえって否定か?
いや、そのまさかなのか。
余りにも自然に言うものだから、オウム返ししてしまった。
「実家ってことだよな……両親は心霊現象とか気にしない人か?」
「あら、言っていなかったかしら?」
そう言って戦刃は、首を傾げた。
「半年前、私の両親は離婚しているわ」
衝撃の事実。
そんな好物はこれよ、みたいなノリであっさり言われても。
反応に困る。
「ああ……つまり、屋敷に一人暮らしなのか?」
「そうよ、道場は……ないけれど、本館や別館は無事だったものだから、数年前からお座敷の一部屋で暮らしているわ」
それはつまり、大きな屋敷に一人暮らしか。
その様子だと、料理もそれなりにするのだろう。
前に家に来た時のオムライスは絶品だった。
それに――
誰かと一緒にご飯を食べるのは、楽しいし気も紛れる。
割と単純で、そういうものだ。
だから、口が軽くなったのかもしれない。
「――その、戦刃ん家、行ってもいいか?」
「え?」
戦刃は足を止め、こちらに振り向いた。
そして、どこからともなく銀色のアレを取り出す。
「そのハサミどこからだ⁉ いや、だって、前は僕の家に泊めた訳だし……」
滅茶苦茶な理屈だ。
自分でも支離滅裂な言い分だと思う。
だけど、こうするべきだと感が告げていた。
しばらく睨み合っていると。
「――ふふ、そのくらい構わないわ。お茶くらいは出してあげる」
戦刃は眉を上げて一言。
意外とすんなりOKされてしまった。
♢
矢倉門。
戦刃家の紋章が描かれた重厚な木造の扉。
左右は高い石垣で囲まれている。
門構えで格式は決まる――というが、これは驚嘆だ。
いかにも武家屋敷といった堂々たる門だった。
「凄いな、戦刃ん家」
「普通じゃないかしら? 早く入りなさいよ、夜は物騒よ」
戦刃に連れられ、門の横の扉から屋敷に入る。
まず目に入ったのは、日本庭園だ。
初めて見たが、枯山水というのだろうか。
自然一体の静けさに侘びさびを感じる。
そして、その庭の湖の奥にそれはあった。
いや、そこにかつてあった、というべきか。
「在原君、こっちよ」
「ああ……ごめん」
戦刃は足早に僕の手を引いた。
ただ、怯えるようにその手は震えていた。
怖いのだ。
見るたびに震えるほど。
しばらくすると、戦刃の足が止まった。
「着いたわ、ここが本館よ」
さっき見た建物よりも、落ち着いた雰囲気の屋敷に着いた。
見れば、玄関は驚くほど綺麗に掃除されている。
「さあ、あがって」
戦刃は下駄箱に靴をしまうと、奥に向かってしまう。
僕は案内されたお座敷へと向かい、卓袱台の周りの椅子に腰かけた。
「牛乳でも大丈夫かしら? 丁度、お茶を切らしていたわ」
「ありがとう。あー、落ち着くなこの部屋。こう、実家って感じだ」
「在原君、さっきから発言が上京して定年退職後に帰省したおじさんみたいよ」
「やけにリアルで怖いが⁉ それに僕はバリバリの高校生だ!」
「あら嫌だわ、自分でピチピチだ何て汚らわしい」
「勝手に脳内補間された⁉ というか、戦刃……」
「何かしら?」
戦刃は首を傾げる。
「僕の見間違いか――と思ったがそれはなんだ」
僕が気になっていたのは服装だ。
妙に軽装に見える。
「裸エプロンよ、気に入ってくれたかしら」
裸エプロン……だと⁉
新手の嫌がらせなのか⁉
そんな真顔ですることじゃないぞ、戦刃よ⁉
「あら、在原君はこういうの好きじゃないのかしら?」
「もはやわざとを通り越して、怖いわ⁉」
「ふふ、冗談よ。もちろん服は着ているわ。第一、そんな時間無かったもの」
「なんだよ、驚かせるなよ」
少し期待した僕が馬鹿みたいじゃないか。
「はぁ……勝手に勘違いしたのはそっちよ、私は悪くないわ」
心外とでも言いたげな戦刃は、やがて席を立ち、広間の仏壇の方へ。
「――私の両親は、私を憎んでいたわ」
唐突に戦刃は言う。
「自業自得よね……私が、この家を、祖父を……殺したのだもの。恨まれて、疎まれて、怖がられて、当然なの……よ」
今にも消えそうな囁き声。
懺悔と後悔の声。
その目には、かつて幸せだった過去。
もう今は無き、家族との大切な思い出。
それが彼女の手鎖となって、圧し掛かる。
いくら前を向いても、時間が彼女に思い出させるのだ。
お前が家族を壊した、と。
「戦刃……それはお前の罪なんだろう。僕がこれを言うのは見当違いだろう……だけどな」
戦刃は生きている。
まだ生きているのだ。
これから先、何十年ときっと。
それは戦刃にとって、辛いことだろう。
「もう過去には戻れないんだ」
戦刃はその霞んだ目を開ける。
もう起きてしまったことを再び認識するように。
仏壇に飾られた祖父の面影を噛み締めるように。
深く、深くお辞儀をした。
「ごめんなさい……おじい様、私は……私は」
僕は屋敷を出た。
♢
柄にもなく、出しゃばってしまった。
もはや、自分への戒めみたいなものだった。
過去に縛られて苦しみ続ける戦刃を見ていられなかった。
もう過去には戻れない。
それは当たり前で、誰の目にも見える常識で、とても怖いことだ。
それでも受け入れて、進むしかない。
かつての僕がそうであったように。
戦刃もまた自分の過去と戦っている。
同属嫌悪という言葉があるが、同属好善もあっていいだろう。
それくらいは許してほしい。
「じゃあな」
僕は戦刃家の門をくぐり、押して歩いていた自転車を走らせる。
別れが惜しいとか、そんなことを言うつもりはない。
何も、今生の別れじゃない。
いつかまた会う日がくるだろう。
それは明日かもしれないし、一週間、一か月、将又一年後かもしれない。
出会いと別れはそんなことの繰り返しだ。
良い出会いもあれば悪い出会いもある。
西園寺の言う通り、きっと戦刃との出会いは僕にとって、かけがえのない出会いだった。
戦刃と出会った歩道橋、あの公園を思い出す。
振り返ると戦刃は、家族のことを何よりも大切に思っていた。
幸せな過去を憂いていた。
それに、いつも懐かしむような悲しげな顔をしていた。
「……?」
それは。
僅かな違和感。
戦刃あやめは家族のことを好いている。
そんな言葉が頭を駆け巡っては、どこかピースが嵌らなかった。
家族が離れ離れになったとはいえ、あの戦刃がどちらの親にもついていかず。
唯一の肉親であり、戦刃あやめという正当な戦刃家当主を娘に持つ戦刃の両親も、それに賛同して自ら出て行ったのも妙だ。
戦刃が追い出した?
いや、それは万に一つない。
なら今、戦刃は何に泣いている。
叔父を間接的に殺めてしまったことか?
両親に嫌悪と憎悪を向けられたことか?
いや、咽び泣く娘を放り出して家を出て行く両親は何だ。
自分たちにも責任の一端はあるだろう。
戦刃あやめという存在を守れなかった責任が。
守れなかった?
いや、守らなかったのか?
親子の愛情。
それは。
それはどう説明する――。
♢
五月十八日。
早朝、午前六時。
僕は、誰もいない鳴神公園にいた。
団地の正面にあるが、遊具はブランコと滑り台くらい。
シンボルマークなのか、稲妻みたいな変てこなオブジェがある。
この公園いつも無人だな――最近の子供はどこにいるんだろう。
そう思いながら、日課のラジオ体操をしていると。
公園の入口。
長い髪を靡かせる少女と目が合った。
「あら、こんな早朝に人がいる何て、明日は雨かしら」
戦刃あやめだ。
「おっ、早いな――僕だって早起きくらいするさ。それに、雨に降られたくはないからな」
「ふふ、貧乏は辛いわね」
「誰が貧乏だ。家が金持ちのお嬢様に言われたくはないよ」
「……叔父の遺産よ、手何てつけていないわ」
「そうだったな……ごめん、少し言いすぎた」
戦刃は木に寄り掛かる。
「あれから両親とはどうだ? 上手くいってるか?」
「ええ……お蔭様で。勿論、男の家に泊まったこと何て、バレていないわよ」
「そ、それは良かったよ……ここ、良い場所だろ」
「――そうね、子供がいないのは静かでいいわ」
「……そういうことじゃねぇよ」
「まあ、この気持ちを『チル』とでも言うのかしら」
「そんなチルタイムは、いっそ散ってしまえ!」
「芥生君、桜が散っているわ」
「そうだな――って、桜の話だったっけ」
「あら、何を勘違いしたの、芥生君」
「僕の一人芝居だった⁉」
「ふふ、冗談よ」
戦刃あやめは、ブランコに腰掛ける。
「――よく遊んだわ」
唐突に言う。
「ブランコか?」
「ええ、この公園ではないけれど、母がよく近所の公園に連れていってくれたの」
「そっか……いいお母さんだったんだな」
「……そうね、そうだったわ」
戦刃あやめは、噛みしめるように言う。
どこか痛むような、遠い昔を見るような。
今にも消えそうな、そんな儚さがあった。
「また一緒に来れるといいな」
「ええ、そうね……」
そう言い残し、ブランコから綺麗に着地を決めて。
振り向き様に、バイバイ、とそのまま公園から去っていった。
♢
「……はっ⁉」
僕は駆け出した。
何でとか、如何してとか、色んな言葉が巡る。
ただ、この憶測が杞憂に終わって、嘘であってほしい。
そうでなければいけない。
戦刃が報われない。
誰よりも優しい少女は、誰よりも傷つきやすいのだ。
それが――凄惨な裏切りなら、なおさらだ。
戦刃は僕に一つ、大きな嘘をついた。
それは――
『僕にしか見えない』という――真っ赤な嘘。
「不味い!」
煙が上がっていた。
本館の屋敷の方角から。
僕は鍵の開いていた門の横の扉をくぐり、燃えさかる炎を頼りに暗闇を走った。
「戦刃っ……! どこだ! 返事をしろ!」
黒い煙で視界が塞がる。
近くの水道で水を被り、玄関から入って、お座敷の方へ行くと。
「――何だね、君は」
見知らぬ人の声がした。
それは低く、底冷えするような寒い声。
そして、その傍に戦刃はいた。
苦悶の表情を浮かべ、床に倒れこんだまま動かない。
男が助けようとする様子はない。
感が当たってしまった。
つまり、そういうことだった。
「――お前……戦刃の父親だな」
「はは、もしかして、あやめの友達か? こんな娘に友達がいるとはな、とんだ物好きがいたものだ――いや、君も金かね?」
ふざけるな。
「ふざけるな……お前のせいでどれだけ戦刃が苦しんだと思ってるんだ……」
戦刃の父親は笑う。
「何を言っているのかさっぱりだ――君は妄想が豊からしい。大体、もう君も知っているのだろう。あやめがしたことの愚かさを――」
「それはお前たちの罪だろう」
「……ほう」
戦刃の父親は黙り込む。
僕はようやく気が付いた。
戦刃あやめは、天狗の翼に左足の怪我の完治を願って呪いを受けたというが――そもそも天狗は、災厄を取り除き、開運の力を持つ縁起の良い存在だ。
天狗の翼が呪物だとは到底思えない。
戦刃の祖父――戦刃玄道が天狗と呼ばれていたのも、畏怖の対象というだけではなく、畏敬の意味も含まれていたのだろう。
戦刃玄道は刀を持たせれば、比類なき強さを持つ御仁だった。
だから、無防備になる瞬間を狙うため、騙す必要があった。
凡そ、娘を出しにでも使ったのだろう。
「実にお見事だ――そうだ、僕があの忌々しい爺さんを殺した。最期まであやめのことを気にかけていたようだが――意味が分からない、どうしてこの子を愛せる?」
戦刃の父親は言う。
そこから語られたことは、酷い話だった。
戦刃の父親は、御家同士のお見合いで戦刃の母親と出会い。
婿入り後に、やがて子を授かる。
しかし、問題が発生した。
生まれたのは女の子だった。
戦刃家の当主になれるのは――男の子。
頭を抱えたのは、遺産相続だ。
戦刃の父親は、遺産を何とか懐に入れる方法は無いかと考えた。
そして、考えついた方法は、娘を使った――戦刃玄道の失脚だ。
一年前の交通事故。
戦刃あやめは、左足を負傷し、二度と剣道の道を歩めなくなった。
戦刃家に見放され、自らの後悔に苛まれながら。
神隠しを――自ら望んでまで。
「お前は絶対に許されないことをした……」
「だから何だ、これで僕は晴れて次期当主だ――全て順調なんだよ。だから――」
戦刃の父親は、懐から――刀を取り出した。
「君にはここで死んで貰う、悪いね」
そう言って、笑顔を浮かべ歩いてくる。
僕は傍に転がる物を投げつけ、本館の中を逃げ惑う。
しかし、地の利では負ける。
行き止まりに追い詰められ、四方八方は炎の渦だ。
「もう、逃げられないだろう――さっさと終わりにしよう」
そう言って、戦刃の父親は刀を構える。
不思議と怖くは無かった。
間違いなくこれから殺されるというのに。
それよりも怖いことがあった。
「戦刃……いや、戦刃あやめはお前より強かったぞ……!他人を傷つけることでしか自分を上げられないお前よりよっぽどな!」
「は? 何を言い始めるかと思えば、情に絆されでもしたか? とっくに煙に巻かれて死んでいるに決まっているだろう」
「お前は見えないのか、あの光が――」
「光だと?――待て、何だこれは」
地鳴りのような轟音。
その刹那。
閃光が走った。
「私は――馬鹿ね」
嗄れ声。
それでいて底知れぬ力強い声。
神々しい真っ白の長い髪。
絵画から抜け出したような純白の大きな翼。
その大きな翼が羽ばたいて、眩いほどの白。
そんな戦刃あやめの手には、銀色に輝く刀が握られていた。
「なにっ! なんだその姿は――まるで」
戦刃の父親が振り向いた瞬間。
「おじい様っ――!」
戦刃あやめは叫ぶ。
全てを受け入れ、過去を断ち切るように。
流水の如く、石を穿つ剣筋を。
舞踊の如く美しい瞬歩を。
そして。
「――ありがとう、私はもう大丈夫よ」
そう告げた戦刃あやめから、大きな鴉が空高く飛び立った。
やがて地面を抉る勢いで着地し、その姿見が口を開く。
「儂の弟子に良くも手を出したな……許さぬ」
「……ひぇぇぇ、助けてくれぇぇ!!」
戦刃の父親は刀を捨て、庭へと逃げ始めた。
「愚かな――」
戦刃の父親は受けの姿勢をとるが、全てが遅い。
「あぁぁぁ……なぜだ! そんなことはありえな――」
眩い閃光。
神速の一刀。
気が付けば、戦刃の父親は倒れていた。
立っているのは、完全に翼の消えた元の戦刃あやめ。
僕の姿に気が付くと。
「――芥生君、ごめんなさい……嘘をついてしまって」
「ううん、戦刃は間違ってない」
戦刃は信じていた。
かつて幸せを築いた家族を、その温かさを。
だからこそ、戦刃の祖父は戦刃あやめを弟子にした。
分かりづらい優しさだった訳だ。
それに誰かに気づかれる嘘何て、嘘とは言わない。
ただの優しさだろう。
「それにしても、あの爺さん派手にやったな……」
「ええ……そうね。加減を知らない人だったから……」
上を見上げれば、星空があり。
周囲を見渡すと、本館の面影はなく輪切り状に全壊。
見るも無残な様子だった。
「これでは、もうここで暮らせないわね――?」
戦刃は声を弾ませて言う。
わざとらしく、声高らかに。
ここまで来たら一蓮托生だ。
しょうがない。
「さて、警察に連絡するか――」
「芥生君」
戦刃は僕の腕を掴むと。
「――逃がさないから」
そう言って、百十番へコールした僕の電話を取った。
春とはいえ、まだ肌寒い季節だ。
僕らは門前で警察車両に手を振り。
それから、しばらくして消防車と救急車も到着した。
♢
五月二十七日。
いつもの教室。
僕が戦刃あやめと初めて出会った――五月十五日。
あの日と同じ時刻。
午後六時の放課後。
「それで、芥生君は不法侵入の罪でパトカーに連行されたの?」
「縁起でもないことを言うな……西園寺」
僕は西園寺に今回の出来事の顛末を話しているのだった。
「それにしても、戦刃さんが神隠しに遭ってただなんて……大変だったんだね」
「そうだな……あの後も色々、御家は大騒ぎだったようだしな」
何せ戦刃家の婿が当主を毒牙に掛けていたのだ。
そんな一大スキャンダルがマスコミを通じて、世間を震撼させた。
戦刃の親戚も昼夜問わず火消しに回っていることは、容易に想像できる。
「まあ、解決して良かったよ」
最初は好奇心だった。
だけれど、戦刃と関わっていくうちにそれは変わっていった。
歩道橋で初めて彼女を見たときから、不思議な奴だとは思っていた。
宇宙人に攫われはしなかったけれど、それこそ何度も死にかけた。
でも僕は、戦刃と出会えたことに感謝している。
前に西園寺に言われた通り、僕の方こそ救われたのかもしれない。
「――それにしても、芥生君はよく気が付いたよね」
「なにをだ?」
「だって戦刃さん、神隠しに遭っていたんでしょう? なら、ご両親も戦刃さんの姿が見えなくても、何ら不思議じゃなかった訳じゃない? だけど、芥生君は戦刃さんの嘘に気づいた――」
確かに、言われてみればそうだ。
あの時、僕はそんな荒唐無稽な推測に納得し、思い込んでいた。
それはなぜか――思えば単純な話かもしれない。
「戦刃はそういう奴なんだよ――強いて言えばそんな理由かな」
「えっと、どういう意味?」
「言葉にしづらいから、パス」
「えー、そんなぁ」
家族を大切に思っている。
戦刃はそういう奴だった。
だから、僕は気が付いたのだろう。
嘘だって吐き続ければ本当になるのだ。
「――あら、こんな所で油を売っていたのね、芥生君」
馴染みのある軽口。
教室の扉から、こちらを覗く少女がいた。
「戦刃さん――だよね?」
西園寺は疑問符を付けて言う。
それもそうだ、僕も戦刃の姿に驚いた。
腰まで届く長い髪はバッサリとなくなり、短髪になっていたのだから。
「久しぶりね、西園寺さん。それと芥生清隆君――かしら? 初めまして、とでも言っておこうかしら」
「ああ、学校では初めまして、ではあるな……お前、もう来て大丈夫なのか?」
「大丈夫な訳ないじゃない、芥生君のおかげで大変な目に遭っているわ。そんな疫病神の芥生君には、これを差し上げるわ」
「これはお菓子か、開けていいか?」
「家で開けて頂戴、私はまだ死にたくはないわ」
「爆弾でも入ってるのか⁉」
「冗談よ、中身はただの菓子折りよ」
戦刃は白々しく言う。
「あ! 私、先生から頼まれてた急用を思い出したから、二人で先に帰ってて、また明日ね!」
「おい西園寺、待ってくれ!」
西園寺はニヤニヤと手を振ると、教室から去っていった。
勘違いだ。絶対良からぬことを考えている。
「芥生君」
背後から声。
「なんだ――戦刃か」
「芥生君を呼ぶ人何て、他に誰がいるのよ――あと、その戦刃――何て余所余所しくて、全身が痒くて堪らないわ。今すぐ止めて頂戴」
戦刃は不満げな表情を浮かべると。
それに――と、言葉を付け加えて。
「戦刃の名は、祖父の代で最後がいいもの」
そうはっきりと言った。
「そっか――なら、あやめる。でいいってことか?」
「あら、そんなにこのハサミで刺されたいのね? 芥生君」
「冗談だ!こっちに切っ先を向けるな、暴力女!」
「心外だわ、私は正当防衛を遂行しているだけよ」
「言葉の暴力に正当防衛を持ち出すな――⁉」
戦刃のハサミを避けていると。
「ふふ」
「何だ、その含み笑いは」
「いえ、ただ笑ってみただけよ」
「なんだそれ」
戦刃は笑顔を浮かべると、教室の窓際に立った。
その刹那、心地よい風が吹く。
「芥生君、――――よ」
戦刃は何かを言ったようだけれど。
僕の耳には届くことはなかった。
けれども、その穏やかな表情で佇む彼女に。
僕の目がすっかり奪われていたことは、言うまでもない。
臥苑さぎりと申します。
生まれて初めて小説を書いてみました。
戦刃物語は、如何だったでしょうか。
拙い文章だったと思いますが、ここまで読んで頂き有難う御座います。
では、また。