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38話 建国祭④

ロレッタ視点


「なるほど……分かったわ。全兵士で火薬を見つけ出すのよ!」


 私はユーゴから事情を聞くと、すぐに兵士に命令を下した。


「ロレッタ、僕も行ってくる!」


「うん、気をつけてね!」


 クリフトもユーゴと一緒に兵士を引き連れて行った。一体誰がこんな真似をしたの? そもそも火薬なんてどうやって持ち込んだの?


(火薬……火薬……火薬……確か……曲芸師のショーの時に爆発と一緒に人が飛び出して来たよね? あれって多分火薬だよね? 怪しいわね……)


 私は必死に頭を回転させてガレル陛下との会話を思い出した。そういえばジャングラー王子がソワソワしていたわね。妙に私の赤ちゃんがどこにいるのか気にしていたし……


(えっ、まさか……敵の狙いって……)


 背中に嫌な汗が流れる。気がつくと私は王宮に向かって全力で走っていた。




* * *


ジャングラー視点


「よしよし、これなら忍び込める!」


 予想通り兵士たちが火薬入りの箱を探しに向かって行く。おかげで王宮の警備が手薄になっていた。


 それにしても……もうバレたのか……兵士たちの対応も早い。やはりロレッタ妃は相当なやり手のようだ。あまり時間もない……急がなければ!


 俺は城に忍び込み王室に向かった。生まれた時から王宮で過ごしていたから、なんとなく城の内装が分かる。予想通りロレッタ妃の部屋は一番奥にあった。見張りは2人いるな……


「これでもくらえ!」


 俺は小袋を取り出して兵士の前に投げた。


「なっ、何だこれは⁉︎」


「まっ前が見えない!」


 小袋にはショーで使った火薬と白い粉が入っている。爆発と共に粉が舞って、あたり一面が白い煙で包まれた。


「邪魔だどけ!」


 俺は見張り役に不意打ちをかました。兵士たちは予期せぬ攻撃を受けて気絶する。これで邪魔はいなくなった!


「さてと……いるだろうな?」


 ゆっくりと扉を開けて部屋に入ると、大きなベットの横にベビーベットが設置してあった。そしてお望みのものが眠っていた。


「なかなか可愛いじゃないか」


 2人の子供はスヤスヤと眠っている。特に娘の方は綺麗な顔をしている。将来美人になるのは間違いない。ただこいつらに将来があればの話だがな……


「さぁ、連れて帰るとするか」


 子供たちがいなくなって、取り乱し泣き叫ぶロレッタ妃を想像すると楽しくてしょうがない。俺は起こさないようにそっと手を伸ばした。すると……


「シャァ!!!!!」


 突然白い猫が毛を逆立てて襲いかかってきた。なんだこいつは?


「邪魔をするな!」


 白猫は俺の顔に飛びつくと、鋭い爪で引っ掻く。


「痛い、痛い! 痛い! やめろ!」


 俺は白猫を振り解くと、思いっきり蹴飛ばした。白猫は「ギャッ!」と鳴いてうずくまる。目を覚ました子供達は倒れた猫を見て激しく泣き出した。


「うるさいな! 静かにしろ!」


 こんなところで捕まったら元も子もない。俺が小刀を取り出して子供の喉元に狙いを定めた時だった……


「ホーリーアロー!」

 

 突然飛んできた白い矢が俺の持っていた小刀を粉々に粉砕した。


「だっ、誰だ!」


 慌てて振り返ると、そこにはロレッタ妃が立っていた。あきらかにさっきまでとオーラが違う。圧倒されそうな覇気を感じる……


 その右手には光の弓矢を構え、長い金髪が大きくなびいている。そして瞳に不思議な幾何学模様を宿していた。




ロレッタ視点  


「ここで何をしているの!」


 私は光の弓矢を構えたまま尋ねた。やっぱり嫌な予感が的中した……


「クソ……もう少しだったのに……」


 ジャングラー王子は忌々しそうにシャーロットと睨みつけながら愚痴を吐く。


「シャーロット、2人を守ってくれてありがとね!」


 私は光の弓矢を消すと、祈るように手を握りしめて呪文を唱えた。


「ホーリーレイン!」


 光の雨がシャーロットに降り注ぎ、怪我をした箇所と乱れた毛並みが元通りになっていく。


「にゃ~お!」


 シャーロットは、まるで私にお礼を言う様に甘えた声で鳴く。


「おい、子供がどうなってもいいのか⁉︎」


 ジャングラーは、私がシャーロットを助けている隙に別のナイフを取り出して、子供達の喉元に当てていた。しまった……まだ武器を隠し持っていたのね!


「こいつらを無事に返して欲しかったら俺の言う通りにしてもらおうか! まずは跪け」


 ジャングラーは薄ら笑いを浮かべてナイフを弄ぶ。しかたなく私は言われた通りにした。


「一体何が目的なの?」


「俺の目的? ふっふっふっ、気になるか? 俺はなぁ……この世界を統一して頂点に立つんだ! だからこの国をよこせ!」


 ジャングラーは鋭い目で私を見下ろすと、高らかに宣言した。


「まずはそうだな……この国の国王と王妃を追放する!」


「なっ、なんですって⁉︎」


「安心しな。空いた席には俺が着いてやるよ!」


「そんなこと……認めらるわけないでしょ!」


「おっと、そんな口の聞き方をしてもいいのか?」


 ジャングラーはシャルルの喉元に軽くナイフを当てた。首筋から赤い血がスッーっと流れる。


「やめて! お願い! 子供達に手を出さないで!」


「じゃあ、大人しく言う事を聞いてもらおうか!」


 フィリップとシャルルの泣き声が部屋中に響く。その声は共鳴するように徐々に大きくなり、手で耳を塞いでも聞こえる。これは一体……


「うるさいな! いい加減にしろ!」


 痺れを切らしたジャングラーがついにナイフを振り下ろす。でも、謎の超音波がジャングラーごと吹き飛ばした。これってまさか……


「痛ってえなぁ! 何をするんだ!」


 すぐに立ち上がって反撃に出ようとするが、またしても2人の泣き声を直に受けて吹き飛ばされた。そして白目を向いて倒れる。やっぱりこれって……2人の魔法?


「フィリップ! シャルル! もう大丈夫よ!」


 私は鼓膜が破れそうな泣き声に耐えながら2人を抱きしめた。そしてあやしてあげると、ニコニコと笑い出して静かになる。


「2人とも、怖かったよね? もう大丈夫だからね……」


 私は首元の怪我を直してあげると、ぎゅっと抱きしめて無事である事を確かめた。

ご覧いただきありがとうございました! 

次回は18時頃に投稿します。

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