37話 建国祭③
ロレッタ視点
「初めまして、座長を務めるヤングです! 是非とも我々のショーをお楽しみ下さい!」
陽気な男性の挨拶と共にステージから煙が上がり人が飛び出してきた。そしてジャグリングや火の輪くぐりを披露していく。
「凄い迫力だね!」
「うん、これは凄いね」
技が成功するたびに観客からは拍手が沸き起こる。私とクリフトが固唾を飲んでショーを楽しんでいると、白髪の混じった男性と若い男が近づいてきた。
「どうですか? 気に入ってもらえましたか?」
白髪の混じった男性は髭を摩りながら尋ねてきた。えっとこの人は確か……
「お初にお目にかかります。ガレルカ王国のガレルと申します。そしてこっちが息子のジャングラーです」
そうだ思い出した。建国祭の招待状を送ったガレル陛下だ!
「初めまして、ロレッタと申します。今日は遠方よりお越しいただきありがとうございます」
私はドレスの端をつまんで、そっと会釈をした。なんだかんだで王妃をしているから、基本的なマナーや挨拶は完璧になっていた。
「あの……つかぬことをお聞きしますが、ここからではショーが見えづらくないですか? すぐに特別席を作る事もできますが……」
「お気持ちは嬉しいのですが……ここで大丈夫です」
私はガレル陛下の提案を丁重に断った。でもこれは今回に限らず、普段から外食をする時や、街に遊びにいく時も過剰な待遇は断っている。
そんな私をみて『ロレッタ妃は謙虚で素晴らしい!』『ロレッタ妃は庶民の気持ちが分かっている!』などと口を揃えて褒めてくれた。まぁ、私としては特別扱いをされるのが苦手なだけなんだけどね……
「ロレッタ妃は謙虚な方ですね……息子のジャングラーにも見習ってもらいたいです」
ガレル陛下がちらっと視線を向けると、ジャングラーは苦笑いを浮かべた。
「初めましてジャングラーと申します。噂によると最近ご出産をされたとか?」
「はい、女の子が生まれました!」
「それは、おめでとうございます。ちなみに今日はどうされているのですか?」
「えっと……まだまだ小さいので王宮で寝かせています」
「そうですか……それは残念。なるほど王宮ですか……」
ジャングラー王子は確認をする様に呟いて顎に手を当てる。何か気になる事でもあったのかな?
「すみません、少し用事があるので席を外させてもらいます。ロレッタ様、どうぞごゆっくりショーをお楽しみ下さい」
ジャングラー王子はそう言い残すと、そそくさと離れて行った。なんとなく違和感を感じる。妙にソワソワしているような……気のせいならいいけど……
ステージの中心から爆発音が響いて、モクモクと白い煙が漂う。そして大勢の人が現れた。その後も華やかなショーが続き、観客席から歓声と拍手が沸き起こった。
* * *
ユーゴ視点
「凄いショーだったな!」
「うん、そうだね!」
俺たちは演者達に拍手を送り、投げ銭を入れた。他の観客達も絶賛の声をあげる。その中にはロレッタ姉さんとクリフト王子の姿もあった。
さてと、次はどうしようかなぁ……
「ちょっと失礼……」
この後の予定を考えていると、1人の男がコソコソと妙に周りを警戒しながら舞台裏に向かっていた。なんとなくこれまでの経験から警告音が頭に響く。
「悪い、カトリーヌ、ちょっと離れる」
「えっ、うん、いいけど……どこに行くの?」
俺は適当に誤魔化すと怪しい男の後を追いかけた。
* * *
ジャングラー視点
「いいか、よく聞け、お前達はこの火薬入りの箱を国中にばら撒くんだ!」
俺は曲芸師として潜入した部下達に指示を出して火薬入りの箱を運ばせた。
「どうやらロレッタ妃の子供は王宮にいるらしい。もうすぐだ……もうすぐこの国は俺のものになる!」
自分の子供が人質となれば、こちらが話を有利に勧められる。少しでも拒ばんだらその度に子供を痛めつければいい!
「さぁ、行け! この作戦が成功したらお前達に一生遊べるだけの財産をやる。失敗はするなよ!」
部下達はニヤリと笑みを浮かべると、我先に火薬入りの箱を持って駆け出した。
* * *
ユーゴ視点
「なるほどな……やっぱり何かあったな……」
俺は耳を済ませて謎の男の会話を聞いていた。そのせいで……後ろからくる謎の影に気づけなかった……
「ねぇ、何をしているの?」
「うわ! びっくりした……」
一瞬敵かと思って身構えたが、声をかけてきたのはカトリーヌだった。
「どうしたの怖い顔をして?」
「どうやら……この国に喧嘩を仕掛けるバカがいるらしい。とりあえず後を追いかけるぞ!」
俺はバレないように火薬を運ぶ部下を追いかけた。部下の1人は路地裏に向かい物陰に箱をしまう。
「おい! そこのお前! 何をしてるんだ!」
敵がビクッと体を震わせると、一目散に逃げて行く。まずいな……大通りに出られると一般人に紛れちまう!
「待て! 止まれ!」
敵は曲芸師らしく器用に体をくねらせて狭い道を全力疾走する。クソ、追いつけねぇ……!
「ストップガン!」
必死に追いかけていると、突然敵の部下が動きを止めた。この魔法はまさか……
「何かトラブルでもあったみたいね」
案の定、バーバラが杖を持って現れた。その隣にはライアンもいる。
「バーバラ? それにライアンも? どうしてここに?」
息を切らして走って来たカトリーヌが2人に尋ねる。
「えっと……一緒に屋台をしていたら村の人に祭りを楽しんでおいでって言われて……」
ライアンがちらっと隣を見ると、バーバラがため息をついて続きを話した。
「仕方なくライアンと2人で楽しんでいたのよ。そしたらユーゴの声がして様子を見に来たの」
バーバラはピタッと止まっている部下を睨みつけると、口元だけ魔法を解いた。
「さぁ、早く白状しなさい!」
バーバラは敵を脅しつけて吐かせようとする。でも、盗み聞きをしたからその必要はない。
「いいか、こいつらは火薬入りの箱を国中にばら撒いてるんだ! お前達は手分けして探してくれ! 俺はロレッタ姉さんを見つけて事情を話す」
「えっ、そうなの? 分かったわ。ライアン、行くわよ!」
「はい!」
「ユーゴも気をつけてね!」
俺たちは互いの無事を祈ると、全力で国中を駆け回った。
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