コルデー回想7
時計をチラチラ確認することが増えた。
帰りたくないが、予約してあるバスに乗らないと帰ることができない。少しでも長く白雪との時間を取りたい。
雑貨屋で髪飾りを眺めながらひっきりなしに、ショッピングモール出る時間を計算する。
買い物をしていた白雪が戻ってきたようで、他所ごとに気を取られているわたしの肩を指先で突いてきた。
「何時にここ出る?」
「あと、30分くらいしたら。」
「店をでていい?」
放っておけばいつまでも商品を眺めていることができたが、買い物をするわけではないので、白雪について店を出た。
エスカレーター脇のソファに先に座り、自分の横のシートを叩いて座るように急かす。訝しみながら斜めに左膝が、白雪の右膝に付き合わような角度で座る。
大きめの口をニコニコさせながら、はい、と小さな袋をわたしの前に差し出す。一瞬、何だろうと呆けて間が空いた。
「プレゼント、お揃いだからね。」
淡いピンク色の包みにそろりと手を伸ばし、封を開ける。
細かい花飾りのついた金属の髪飾りがあった。室内灯に反射してキラキラ光る。金属の擦れるチラチラ鳴る音も繊細で可愛らしい。言葉がでないまま静止しているわたしの手から髪飾りを取ると髪に留めた。白雪も同じように揃いの髪留めをつけている。
「仲良しのしるし。」
「ありがとう、白雪。」
声が掠れて、喜びをうまく伝えられない。胸と喉の奥が痛くて喋れない。横に顔を寄せてきて、自撮りをしているので、わたしもそれに倣った。
この場で、死んでも最高に幸福だ。