コルデー回想10
白雪は腕を離してくれない。冷え切った指が強く握りしめている。屋上まで出ると駐車場の一角で詰られた。
「どうして、頭体落ちていったよ。みすな、捕まってしまうよ。」
「そうかな。転んだふりしたし、気づかなかったシラをきってしまえば、いけそうじゃない?」
「カメラチェックされたら。」
「混んでいるし、事故ってことならチェックもないよ。」
「でもさ。」
「心配してくれるの?ありがとう。捕まってもさ、どうせ、おじいとおばあだけだし、迷惑かけても許してくれそう。」
白くなっている顔色を強張らせる。対照的にわたしはまだ気持ちの余裕がある。
「大丈夫、嫌な奴だし、事故ってことになるよ。」
言葉は届かず、白雪は首を横に振る。
「みずな、もう、帰りな。みずなは引っ越し先から戻ることはなかった。」
「まぁ、帰るけど。」
サイレンの音がひっきりなしに鳴り響きうるさい。
白雪の仇を打ててただ嬉しかった。
電車への通路が最も遠い入り口からエレベーターの乗った階下に降りる。施設の中ではなく、外から駅に向かうよ、と告げられた。
その時。
わたしは気づいた。
何という事だろう。
「髪飾り、ない。」
大声で叫ぶ。髪の毛を指でかき回す。足元から地中に引き込まれる感覚の絶望に沈められた。




