数奇の恐怖
冬休みが始まった。春がきたら高校生だ。
わたしの住む過疎化した地域では、よほどのことがない限り、唯一ある高校へ進学する。無難な学校生活を送っていた私も形式に沿って、その高校への進学が決まっていた。
制服は新調して貰えた。小太りなので、貰える予定の制服が入らなかったためだ。制服は古着でいいから、新しい私服が欲しかった。小学5年生で引っ越してきた場所は緑は豊富あるが、キラキラ輝くものはない。貧しい暮らし振りから、測り食料だけは田舎ゆえ豊富にあり、怠惰に食べ続けたことから、中学生になるとぶくぶく太った。
中学生になる時節、軽トラでスーパーマーケットの一部で埃を被るつるし、簡素か、奇抜かな二択から選んだ服も、三年間着続けている。
グレイのだぼっとしたワンピースは伸びて毛玉ができ、膝丈だったフレアスカートの丈は膝を丸出しだ。
この服で白雪に会うのは嫌だな。
部屋の隅に畳んである服を見てしみじみ思う。
そう思っても、正月に貰うお年玉で引っ越す前の、馴染みの町へ繰り出すのだ。服を新調する金はない。
大晦日なのに、早々に寝た祖父母に習い、暖房のない室内で布団で丸まりながらスマホを眺めている。
12時を回ると、新年の挨拶を受信する。明後日、一緒に遊ぶ白雪からもメッセージがくる。
「明後日、お父さんと迎えに行くよ。いっぱいあそぼうね。」
私は、高揚と惨めさを噛み締めて眠りについた。