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遠雷と狐―― ホワイトチャペル

 ミリセントが人力車から降りる。即座に、斎門は屋根の上から飛び降りた。同時に、爆破の術を見せつける。ミリセントの足元の地面が発火し、陥没する。人家が近い。最高レベルの術を放つのは控えた。

「いつでも木っ端微塵にしてやれるのだぞ! 何があった? 全部話せ!」


 歯の根も合わないようすで、ミリセントはあれこれ説明した。ホリデイが何やら企んでいるらしいこと、娘の異変、そして意外な来訪者のことなど。花扇という子爵の館に穂波がやってきたのだ、という。穂波は子爵家の跡取りの友人であるらしい。


「あの藤村彦乃って娘、なぜかわからないけど、死に損ないどもを引き寄せてしまうらしいの。何年か前、ロンドンでも似たような話を聞いたことがあるわ。お針子の娘が錯乱状態になったとか」

「そのお針子、どうなったんだ?」

「ロイヤル病院に運ばれた、とか。そこまでしか知らないけど」

 ミリセントはホワイトチャペル地区のどまんなかにある大病院の名前を口にした。

「ロンドンで調べてきてくれ」

「じゃあ、来週あたり」

「今すぐ!」

 一瞬にして、ミリセントは消えた。

 斎門は穂波の書斎へ飛んだ。



 すでに穂波も帰宅していた。

 斎門は簡単に説明した。ミリセント・ブラックウェルが魔の者であること。ミリセントが気まぐれに藤村彦乃にちょっかいを出そうとして、いらぬ術を放ったこと。そのせいで彦乃に異変が生じたらしいこと。それをミリセントが斎門に伝えてきたことなどを。

 彦乃が死者の魂を引き寄せてしまうらしいこと、死神が彦乃に(どういうわけか)目をつけたらしいこと。その二つは言わずにおいた。すべて、ミリセントの気まぐれのせい、ということにしておいたほうがいい。


「あの女、おまえの仲間だったのか。どこかで見たようだ、とは思ったんだが。いらぬ術って、何だ? おまえたちは、どうしてそういうことばかり――」

 斎門は遮った。

「で、藤村彦乃は? 医者でも呼んだのか?」

「あの娘さんなら心配ない。……だいじょうぶ」

 なぜか、穂波の頬から首筋にかけて、ほんのり赤みが射したように見えた。

「どうした?」

「何が……?」

 穂波は斎門から目を逸らした。紅潮は一瞬のことで、薄らいでいく。


「いや。――無事なのか。それならいい」

 安心はできない。斎門は思った。ミリセントが戻るのを待たなくては。

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