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26.新たなる訪問者

 オリヴァー襲撃から3日後。ジョニーはゆっくりと木の枝に止まると、オスカーに言った。

「おい、オスカーさま」

「なんだい?」

「戦力の補充とか考えてる?」

「仲間は多いに越したことはないけど、心当たりがあるのかい?」

 聞き返すと、ジョニーは頷いた。

「実はさっき、古戦場跡に外からやってきた馬の一団がいたんだよ。試しに話しかけてみたら故郷が住めなくなって逃げ出して来たんだとよ」

 オスカーはジョニーが仲間にいて良かったと思った。いくら自分やフィンが空を飛べると言っても、古戦場跡まで飛べば自分たちの居場所を人間に教えることになる。

 オスカーはすぐにフィンやエマを見たが、彼らも反対するつもりはないようだ。

「直接会いたいな。丘陵の入り口まで案内してもらえる?」

「わかった」


 それから十数分後。オスカーの前に難民の馬の12頭が姿を見せた。

 そのほとんどは牝で、仔馬の中に1頭だけ牡が混じっているという様子である。

「……」

 その馬たち、特に仔馬はオスカーの角と翼を珍しそうに眺めていた。

「こちらのお方こそ、フィン丘陵の次期当主オスカー様だ」

「牝馬が目立つけど、牡はどこに?」

 こっそりとジョニーに聞くと、ジョニーもまた小声で返した。

「危険な旅だったらしく、密猟者や野生動物に襲われたときにはぐれちまったらしい」

「……なるほど」

 年長者と思われる牝馬が言った。

「オスカー様、どうか我ら一族をこの丘陵に住まわせてください」

 オスカーは少し考えた。

「僕も歓迎したいところですが、あいにく、今の我々はユニコーン会と対立しています。あなた方を戦闘に巻き込んでしまう危険性もあるので、あまりお勧めはできないのが本音です」

 その言葉を聞いた牝馬たちは不安そうな顔をしたが、年長者の牝馬だけは落ち着いた様子で質問を返してきた。

「もし、差しさわりがなければ教えてください。なぜ、あなた方はユニコーン会と対立を?」

「僕が牧場出身の家畜だからです」


 少し間が空いた。しかし、牝馬たちの雰囲気はオスカーを嫌悪している感じではなく、むしろ都合がいいと言いたそうな表情をしている牝馬さえいた。

 年長者の牝馬も、何かを確認するように横目で仲間たちを見てから、オスカーに言った。

「そうでしたか。それなら隠すこともありませんね……実は、我々も牧場育ちなのです」

「え……それは本当なの!?」

「はい。平和だった牧場に……武装した男たちが乗り込んできて……」

 オスカーは頷いた。勘の良い馬やユニコーンなら、彼女たちの正体に気付くだろうし、当然差別もされるだろう。

「そういうことなら力になりましょう」


 オスカーに連れられ、複数の牝馬が入っていくところを、見覚えのある馬たちは羨ましそうに眺めていた。彼らは、ユニコーン会と敵対したことで逃げた馬たちの一部である。恐らく、他の群れに行っても受け入れてはもらえず、途方に暮れているのだろう。

「見たか……育ちのよさそうな牝馬がいっぱいいたぜ」

「謝って仲間に入れてもらうか?」

「いやでも、それはカッコ悪くね?」

「でも、そうしたらどうするんだよ」

「そんなところで何をしているんだお前たち?」

 フィンが話しかけると、元部下たちは驚いて振り返った。

「長!?」

「私は優柔不断な態度は嫌いだ。出ていくのか、オスカーに謝るのか……はっきりしろ!」

 馬たちはお互いを見ると、次々とフィン丘陵の坂道を登っていった。



 オスカーが逃走した馬を、とりあえず許していたとき、深い森の中では黒いローブの狼男が、洞窟の前で跪いていた。

「グリーンハート様、任務の調査を進めていたところ、興味深いことがわかりました」

「なんでしょう?」

「どうやら、ユニコーン会で仲間割れが起こっている模様」

「ほう……もしやそれはフィン丘陵で起こっているのではないでしょうか?」

 狼男は驚いた表情で答えた。

「ご存じでしたか。さすがですな」

「小耳に挟んだだけなので仔細はわかりません。具体的な抗争があったのですか?」

「はい。まずは仲間割れが起こった理由ですが、フィンが後継者に指名した馬が牧場出身というのが理由です」

 意外そうな声が洞窟から響いてきた。

「後継者は、エマかフィンレーではないのですか?」

「はい。新しいリーダーはオスカーアライズという炎と風の一角獣です」

「上位ユニコーン!?」

 狼男の顔からは汗が流れ出た。その表情はまるで、今までグリーンハート様がこれほど驚いたことがあっただろうかと思っていそうだ。

 やがて、クツクツという笑い声が聞こえてきた。

「グリーンハート……さま?」

「その牡馬、おもしろい。あまりに興味深い……最上級のおもしろいです!」

「……」

 洞窟の中から脚音が響くと、中からはエマそっくりな葦毛の一角獣が姿を見せた。

「美しい……」

 狼男が呟くと、グリーンハートは涙を流しながら狂喜していた。

「私が孤独に戦っていた時に、そのような牡馬は現れませんでした。お父様、フィンレー……見ていますか? このエマは……破滅の未来を少しずつですが、変えようとしています」

「……」

「オスカーアライズを……如何なさいますか?」

 グリーンハートは表情を戻した。

「是非、力を持たせてみたいです。手始めにオスカーアライズには……宵闇麒麟になって頂きましょう」

エピソード2へ続く……


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