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25.フィン丘陵の戦い(7vs72)

 夕暮れ時。丘の上からフィンとフィンレーは地上の様子を見下ろしていた。そこにはオリヴィエント率いる野生馬たちが大挙して押し寄せている。

「あんなにたくさん……」

 フィンレーが不安そうな顔をしたが、フィンは表情を変えずに言った。

「いいかフィンレー。戦いは数ではない。どのような戦い方をするかだ」

「長、命令はまだですか?」

 フィンが振り返ると、フレディとベンジャミンが立っていた。元軍馬である2頭は筋骨たくましく、フィンも頼もしそうに眺めていた。

「お前たちが残ってくれたのは、フィン丘陵にとって幸いなことである」

「軍馬としての実力、しっかりとお見せします」

「元だろ」

 かしこまった様子のベンジャミンと比べ、フレディは自然体である。

「頼んだぞ」

 ベンジャミンとフレディは頷くと、丘陵の集会場を出て崖の出入り口の前に立った。出入り口は狭く、筋骨隆々の2頭に立たれると、1頭ずつしか勝負を挑むことができない。

 悠々と坂道を駆け上がってきた一角獣オリヴィエントも、2頭を見ると表情を変えた。

「お、お前たち……手柄を立てるチャンスだぞ。行け!」

 当たり前のことだが、オリヴィエントの部下も嫌な顔をした。

「俺はやだよ」

「オリヴィエントさんが行ってください」

「……ぐぅ」

 オリヴィエントは、あくまで自分は行きたくないようだ。

「おい、フィン丘陵の奴ら。お前らが行け」

「え!?」

 どうやらフィン丘陵にいた馬たちにとっては、寝耳に水だったようだ。

「約束が違う……」

「うるさい、行かないのならお前ら追放だぞ!」

「そんな~」

 フィン丘陵側から寝返った馬たちは、半ば強引に先頭に突き出されて突進してきた。

「うわあああああああ!」

「へっぴり腰が!」

 ベンジャミンは普段の喋り方からは想像もできないほど野太い声を響かせ、先頭を駆けてきた牡馬を蹴飛ばした。牡馬はバランスを崩して転倒し、後方から走ってきたオリヴィエント派の馬や、オリヴィエント自身も巻き込んで坂道を転げ落ちていく。

「ひいいいいいいいいー」


 転げ落ちた牡馬数頭は泡を吹いて倒れ、オリヴィエントだけは泥まみれになったまま起き上がった。

「くううう……この」

 その目が及び腰の部下を睨んだ。

「さっさと行け。何をぼさっとしてる!」

「は、はい!」

 オリヴィエント派の牡馬たちはフレディやベンジャミンを突破しようと走り出した。屈強な2頭でも多勢に無勢と思われたとき、彼らの頭上に翼の生えた一角獣フィンが姿を見せた。

「い……」

 姿を現しただけで、先頭を走っていた馬たちの脚が鈍った。

 そして、フレディやベンジャミンの蹴りを受けて、再び馬たちは仲間を巻き込んでゴロゴロと坂道を転げ落ちてくる。

「こ、こ、こーなったら……俺様が行くぞ、待ってろエマちゃーーーーん!」

 オリヴィエントはそう言いながら角を光らせて突っ込んできた。

「くらえ、筋肉ウマども!」

 そして、フレディやベンジャミンに向けて水魔法を浴びせてくるが、フィンの角が光ったが……

「風魔法エア」

 タイミングを合わせてフィンが突風を巻き起こしたため、フレディに向けて投げつけられた水塊は全てオリヴィエントの顔へと帰ってきた。

「ごぼあ!?」

 そしてバランスを崩したオリヴィエントは、ゴロゴロと転がりながら坂道を再び転げ落ちていく。

「げふん……ゴホゴホ……はぁ……はぁ」

 オリヴィエントは悔しそうにフィンとフレディたちを睨んだ。

「きょ、今日の所はこれで勘弁してやる!」

 そう言うとオリヴィエント一行は逃げ去っていった。

 同時に、オスカーとエマは蔓の生い茂った植物の影から姿を見せた。

「奇襲をするまでもなかったね」

「そのようです」


 一行が合流すると、フィンは満足した様子で笑った。

「皆、よく頑張ってくれた。特にフレディとベンジャミン。お前たちが体を張って守ってくれたからこそ、被害がほとんど出ずに済んだ」

 フレディたちは苦笑していた。

「まあ、俺たちも本当に大したことはしていませんでしたけどね」

「ああ……」

 オスカーだけは険しい顔をしていた。

「どうしたオスカー」

「いや、今回は危なげなく勝てたのだが……敵の名前が気に入らなくてね。どうして僕の牧場主と似た名前なんだろう」

 まるで無性に腹が立つと言いたそうなオスカーだった。


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