24.同族との合戦
ユニコーン会の使者が訪れたのは、それから数日後のことだった。
「結果が出たのか」
「はい」
使者はゆっくりと告げた。
「全会一致でフィン及び丘陵の馬たちをユニコーン会から追放する」
そこまで言うと使者の視線は鋭くなった。フィンやオスカーが襲ってくるかもしれないと思ったのだろう。ところが、彼らは身動き一つしなかった。
「なるほど」
使者は少しだけ気を落ち着けた様子で言った。
「以上だ。失礼させてもらおう」
彼が立ち去ると、複数の馬たちがフィンの前にやってきた。
「お、長……どうするんだよ!?」
「これ、この丘陵が攻められても、援軍が来ないってことじゃないか!」
「それどころか、ユニコーン会が攻め込んで来るかも……」
フィンはオスカーを見た。どうやら、早くもオスカーに決断を迫っているようだ。オスカーはあらかじめ用意していた言葉を口にした。
「この後、ユニコーン会が行うことは、良くても交流の封鎖、悪ければ武力での制圧が待っているだろう。その際に戦いに巻き込まれることが嫌な者は、速やかに丘陵を後にせよ」
馬たちの顔色は見る見る青ざめると、我先にと逃げ出して行った。
オスカーの後ろで、今まで黙っていたフレディとベンジャミンは苦笑したまま言った。
「ほとんど……いなくなっちまったな」
「世の中、世知辛いもんだ」
オスカーは2人を見た。
「君たちも遠慮することはないよ」
その言葉を聞いたフレディとベンジャミンは、つれないなと言いたそうな表情を返した。
「どこに行けって言うんだよ。すでに俺たちは脱走してるんだぞ」
「我々はオスカーに付いて行くと決めたのだ。戦士に二言はない。そうだろうフレディ?」
「ああ、こう見えても元プリースト……つまりは破戒僧だからな」
2頭が笑い合っていると、ジョニーが木の枝に止まった。
「よー、予定通りすっきりしたな」
辺りを見回すとよくわかる。残っているのはオスカー、エマ、フィン、フィンレー、フレディ、ベンジャミン、そして人間でありエルフのアンジェリカだけである。
フレディが言った。
「そういえば、マベリックはどこに行った?」
「前日に、今日の話をしたら、黙って出て行ってしまったよ」
オスカーが答えると、ベンジャミンは何とも言えない顔をした。
「おい、今度は一体……何を企んでるんだ?」
オスカーはアンジェリカを見ると、彼女は笑った。
「どこまで彼がやれるか、楽しみね」
「ああ」
一方その頃、ジョニーの友達は狼山で山犬同士のけんかを見物していた。
ガラの悪そうな山犬は5匹で1匹を攻撃していたが、最初の1匹が返り討ちに遭った。
「ごは!?」
「次」
「舐めるな、よそ者!」
「ぐぶほ!?」
「次」
ガラの悪い山犬は叫んだ。
「いっぺんに攻撃するぞ!」
「おう!」
山犬は3匹がかりで襲い掛かったが、その山犬は目を細めると、ボスと思しき山犬に体当たりし一撃で木に叩きつけた。
「ぎゃあ!」
他の2匹は青い顔をしたまま立ち止まり、木に叩きつけられたボス山犬は、むせ返りながら睨んだ。
「げほ……お、お前……いったい、な、何者だ!?」
「我が名はマベリック。炎の一角獣の家来の中で……最も弱い部下だ」
「う、うわーーーーーー!」
ガラの悪そうな山犬たちが逃げ出すと、草むらに隠れていた狼や山犬たちが出てきた。
「あ、ありがとうございます」
「礼には及ばん。私は私の覇道のために戦っている」
「覇道……?」
雌狼が聞き返すと、マベリックはそびえるような狼山の頂上を見た。
「この狼山を平定する。まずはそこからだ」
「それなら、会っておくべき人物がいます」
マベリックは表情を変えた。
「その人物とは?」
「我々の間では、仙人とも呼ばれる錬金術師が山奥に住んでいるんですが……」
「ほう……何か問題でもあるのか?」
「彼はお弟子さんと2人で住んでいるのですが、少々、性格に難がありまして」
マベリックは笑った。
「その程度のことで怖じ気付いていたら、オスカー様の部下は務まらんよ」
「わかりました。宜しければご案内しましょう」
「頼む」
その光景を眺めていたハトは満足そうに笑っていた。マベリックがしっかりとやっていることで安心したのだろう。やがて飛び立ち、空高く舞い上がるとフィン丘陵を見た。
「さすがにただの犬じゃねえや。これからは狼山が熱いぜ!」
彼は2分ほど飛ぶと、表情を変えた。
「ん……? あれはフィン丘陵の馬たちか。この様子だとフィンはユニコーン会から締め出されたのか」
ハトはしばらく観察していたが、その中の数頭が道を外れ、雑木林へと入っていく。
「あれ? 雑木林なんて天敵がいるだけなのに……」
高度を下げ、枝の上に着地したハトは、木の隙間から森の様子を眺めた。
「あれは……水の一角獣オリヴィエント!?」
「で、どうだった?」
水の一角獣オリヴァーの前には、フィンの部下だった牡馬たちがいたが、いずれも遠慮がちの態度を取りながら密談している。
「はい。フィン丘陵の馬のほとんどが長であるフィンや家畜ヤローを見限りました」
「ほとんどって、何頭だ」
「既に、フィンを見限ってる奴もいましたので、詳しい数はわかりませんが、残ってるのは多くても10頭もいないかと……」
「ほう」
そう言うと、水の一角獣オリヴィエントは不敵に笑った。
「そうかそうか。そんなところに愛しのエマを置き去りにするわけにはいかん。迎えに行かないとな」
言葉とは不釣り合いな歪な笑みを浮かべると、オリヴィエントは自らの部下を見た。
「行くぞ、フィン丘陵をわが手に!」
「おう!!」
間もなくオリヴィエントは70頭ほどの部下を連れ、フィン丘陵に進撃した。
皆さんこんにちは。エマの弟にして、フィンの第2子のフィンレーです。
フレディさんとベンジャミンさんは筋肉で勝つとか言ってたけど、大丈夫なのかな? 群れの大人たちも大部分が逃げちゃったし。
まあ、あの水のユニコーンは、それほど筋肉はなさそうだし、やっぱり筋肉なのかな?
ええと、どうしたの姉さん。え、ぶっくまーく? 星??
なにそれ、おいしいの?
まあ次回も、オスカー空をゆくをよろしくお願いします。




