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22.フィン丘陵の長へ、そして……

 フィンはオスカー一行を連れて、丘陵へと戻ってきた。

「父上、本当にオスカー殿に家督を?」

「私ももう年だ。そろそろ次の世代に座を譲る準備をせねばな」

「ちちうえ、おかえりなさい」

 フィンの前には、フィンやエマに似た仔馬が走ってきた。

「……そちらのかたは?」

「フィンレー、まずはお前に紹介しなければな」

 フィンはオスカーを見た。

「次のリーダーであるオスカーアライズだ」

「フィンレー君、よろしく頼む」

 オスカーが挨拶をすると、フィンレーは不思議そうにオスカーの角を眺めていた。

「……」

「私の顔に何か付いているかな?」

「い、いえ……長い角だと思いまして」

 エマはどこか得意げに言った。

「オスカー殿は、炎と風の力を持つ一角獣です」

「に、2ぞくせい……つまり、ハイユニコーン!?」

 オスカーは苦笑した。

「風は母から譲り受けたものだし、炎はアンジェリカという相棒がいるから維持していられる。私自身が成し遂げたものはないよ」

 フィンは言った。

「皆を広場に集めてくれ」

「わ、わかりました!」


 フィン丘陵の馬たちは広場へと集まった。

 その数は仔馬を含めて50前後いる。彼らの目はフィンではなく、隣に立つオスカーへと向いていた。

「あいつが、カマキリの悪魔を倒したっていう?」

「ああ、だろうな」

「なんだか、コイツが悪魔みたいな姿をしてるな。目が赤いし」

「毒を以て毒を制すか? ある意味楽しみなんだけど」

「それよりもさ、若くない?」

「ああ、この様子だと、せいぜい1歳馬って感じだろう」

「おいおい、1歳馬で悪魔を叩き潰せるなんて、どんな馬生を歩んできたんだよ!?」


「みな、良く集まってくれた」

 フィンが言うと、ざわついていた馬たちは一斉に静まり返った。

「今日集まってもらったのは、私の後継者について紹介したいからだ」

「あの……」

「なにかな?」

 歩み出て意見したのは、馬の中でも年齢が高そうな牡だった。

「後継者は息子さん……フィンレーではないのですか?」

「フィンレーはまだ生まれて2か月だ。彼の成長を待っていたら、私の身に何かあった時に空席になってしまうよ」

 今度は牝馬が意見した。

「それなら、エマさんに摂政を……」

「エマは優しすぎるところがある。誰かを陰ながら支えるのには向くが、群れのために毅然とした行動をとることは難しい」

 オスカーがエマをそっと見ると、彼女は満足した表情で頷いていた。やりたくなかったのかと、オスカーは思いながら視線を戻した。

「……」

 馬たちの半数以上が不満そうな顔をしていた。特に牡馬たちは俺たちのリーダーがよそ者。それも家畜かよと言いたそうだ。


 フィンは言った。

「このオスカー君は、炎と風の2属性を使いこなすだけでなく、ここ数百年の間、誰も浄化することができなかった古戦場跡に眠っていた古のユニコーンを、天へと還した」

 その話を聞いた馬の複数、特に牝馬たちがオスカーに視線を向けると、ざわつきはじめた。森の至る所に点在する瘴気を制することができれば、安全に子育てができるからだろう。

 フィンは話を続けた。

「また、同日のレースでは私も競争で敗れたため、オスカーを5代目の長へと推薦することにした」

 馬たちの表情は様々だったが、オスカーに向ける目は、肯定的か否定的かで真っ二つに分かれており、中途半端な意見がない様子である。

 オスカーはフィンに言った。

「私もまだ、1歳馬になったばかり。もうしばらくの間は……」

「わかっている。正式にオスカーが長となるのは3歳になってからとする」


 その直後に、広場を離れようとする牡馬が数頭いた。

「おい、まだ話は終わっていないぞ」

 場を離れた牡馬たちは、フィンを睨んだ。

「テメーの王様ごっこにこれ以上、付き合ってられっか!」

「よそ者の、それも家畜の1歳馬なんかが長にでもなれば、他の群れから笑われちまう」

 フィンは涼しい顔をしながら答えた。

「そのような連中など、勝手に笑わせておけ」

「うるせー!」

「アンタのやり方は、前から気に入らなかったんだ。これ以上は我慢の限界だ」

「そうか。ならば二度とその顔を見せるな」

 フィンがそう言うと、更に牡馬3頭、牝馬も2頭がフィン丘陵を立ち去っていった。


 集会が終わると、エマは困った顔をしていた。

「オスカー殿ほどおもしろいかたは、そうはいないのに……なぜ皆、生まれしか見ないのでしょう」

「よそ者、それも人間が育てた馬をリーダーにすると言ったのだ。むしろ流血沙汰にならなかっただけ、良かったかもしれん」

 オスカーが言うと、フィンも頷いた。

「そうだな。今日脱退した面々も、いざとなったら逃げ回るだけのくせに問題ばかりおこす連中だった。オスカーには悪いが、お前をリーダーにしたおかげで仕事もやりやすくなったというもの」

 オスカーが苦笑すると、フィンの息子のフィンレーが言った。

「それはそうとオスカーおにいさん、どういうコーヤクをつくるの?」

「こうやく?」

 フィンは気が早いと言いたそうにフィンレーを見た。

「まあ、要するにオスカーがリーダーになった時に、優先的に行いたい目標はなに? とフィンレーは聞きたいようだ」

 オスカーは頷いた。

「そうですね。私の支持者は牝馬が多いでしょうから、安心して子育てのできる環境を整えることからでしょう。その中には外敵の排除や、外部でも有能な者をスカウトすることも含まれます」

 フィンは満足そうに頷いた。

「うちの子供たちもこき使ってやってくれ。きっと役に立つはずだ」

 オスカーは感謝しながら、フィンたちにお礼を言った。

「それから、長」

 フィンは表情を曇らせた。

「長は君だ。私のことは先代と呼んでくれ」

「わかりました。先代様……私に空の飛び方を教えていただけませんか?」

「……すでに君なら、上手く飛んでいる気がするが」

「荷物や捕虜を乗せて飛ぶこともあり得ますので」

「なるほど。わかった……予定が空いたら声をかけよう」


 そのやり取りを眺めていたマベリックは、満足した様子で微笑んでいた。その表情は、大きな仕事を終えたようにも見える。

 なあ、フレディ。

 どうした、ベンジャミン?

 オスカー様って、本当にやる気があるな。

 じゃあ俺たちも見習って、筋トレでもするか?

 ああ、それがいいだろう。


 さて、読者の皆様ここまで読んでくれてありがとう。筋力のある全ての動物を代表して、お礼を言わせてほしい。

 あと、下の欄から【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆】に筋肉をどうかつけてやってくれ!


 …………

 おい、フレディ……ブックマークや☆と筋肉に何の関係があるんだ?

 筋肉は正義だからだ。期待を裏切らないからだ。

 まあ何でもいいが、今後もオスカー空をゆくをよろしく頼む。

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