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2.猛者の片鱗

 オスカーは森の奥まで入り込んだ。そこは牧場とは全く違う空間だ。

「この臭いに雰囲気……死の空気?」

 森の木々や草のにおいに混じって、かすかに獣の臭いを感じた。それは草食獣のにおいではなく、自分を捕食する肉食獣の臭いである。

 オスカーは大きく息を吐くと、暗い笑みを浮かべた。

「このまま待っていれば、後はオオカミたちが何とかしてくれる」

 これで何もかもが終わる。これ以上は苦しまなくて済む。

 そう思うと何だか笑えた。今日で死んでしまうなんて何だかあっけないものだ。あれだけ食事を拒否して空腹と渇きに耐えるよりも、よっぽど簡単じゃないか。

「……」

「……」

 間もなくあちこちから足音が聞こえてきた。においを嗅ぎつけた狼たちが自分を取り囲んでいる。その空気や息遣いに、オスカーは震えあがった。

 彼は生まれて初めて恐怖という感情を味わった。先ほどまで死んでしまえばいいと思っていたが、実際に死を前にすると、何て自分は馬鹿げたことを考えていたんだろうと思えてくる。

 結局はオスカーは甘えていたのだ。ふてくされていただけだ。本当は、本当は死にたくなんてない。

「グルルルル……」

 そんなオスカーにはお構いなしという様子で狼たちは不気味な笑みを浮かべていた。じりじりと距離を縮めてくると、1頭が牙を剥いて飛び掛かってくる。

「……!?」

 ところが、最初に飛び掛かってきた狼は木に叩きつけられた。藪から飛び出した牧場の番犬が、狼に体当たりを見舞ったからである。

「あなたは!?」

「何を考えているんだお前は!」

 次の狼が向かってくると、番犬も勢いよく走り出してタックルを見舞った。

「いいじゃないか、放っておいてよ」

「状況を見て言え、この馬鹿!」

 オスカーと番犬が言い合う間も、狼たちは怒り狂った様子で番犬を睨んでいる。

「何で、ぼくなんかのために!?」

「俺が番犬になれたのは、お前のかーちゃんのおかげなんだ!」

 番犬の言葉を聞くと、オスカーの目にも光が戻った。

「それ、どういうこと!?」

「くたばれ!」

 狼の1頭が突き進んでくると、オスカーの瞳に怒りの色が灯った。

「邪魔だよ!」

「あ、あちぃ!?」

 目が真っ赤に光り輝くと、オスカーは間髪を入れずに向かってきた狼の顔面に蹴りを見舞った。狼は木に叩きつけられ、周りにいた狼たちは愕然とした様子でオスカーを眺めている。

「今、炎が出てなかったか!?」

「こ、このウマの分際で!」

 狼の1頭が背後から襲い掛かろうとしたが、オスカーは後ろ脚蹴りを狼の眉間に直撃させた。

「あぎゃあ!?」

 蹴りを食らった狼は草むらの中に頭から落ちると、周囲にいた狼の腰も引けた。

「何でこの馬、こんなに強いんだ!?」

「な、なんつーか……足が……震える」

 気が高ぶったオスカーは、まるで悪鬼のように目を光らせている。

「ば、バケモノだ」

「逃げろー!」


 狼たちが退散すると、オスカーの体は震えだした。少しでも動き方を間違えれば、自分自身はもちろん、番犬も死んでいた。そう思うと恐怖が今になって現れてくる。

 危機を救った番犬もまた、安堵した様子で息を吐くと言った。

「さっさと戻るぞ」

「うん」

 森から出ると、番犬はじろりとオスカーを睨んだ。

「おいガキ、これに懲りたらもう二度と馬鹿げたことをするんじゃないぞ」

「ごめんなさい……」

 そう謝ると、番犬は怒りを鎮めるように息を吐いた。

「あと、嬢ちゃんには謝っとけよ。お前のこと誰よりも心配してるだろうからな」

「どうして、ぼくなんかを?」

 聞き返すと、番犬は不機嫌そうにオスカーを睨んだ。

「出来の悪い仔ほどかわいい……そう考える女の子なんだよアンジェリカ嬢はよ」

「そういうものなのかなぁ」


 彼らがトボトボと牧場に戻ると、牧場主のオリヴァーが慣れない様子で扉を修復し、その隣にアンジェリカがいた。

「オスカー! 今までどこに行ってたの!?」

「ごめんなさい」

「まあ、許してやってくれよお嬢、御覧の通り無事に戻ってきたんだからよ」

 番犬が言うと、アンジェリカは仕方なさそうに頷いた。

「マベリックもお疲れ様。はやく入って」

「あいよ」

 オスカーが納屋へと戻ると、いじめっ子のワルガキトリオたちは母馬に甘えていた。自分の納屋に出迎える者はおらず、独り納屋の中に寝転んだ。

 彼が、オスカーの置かれている状況はなにひとつ変わっていない。だけど、オスカーは一つだけ賢くなった。外の世界には危険があふれている。納屋の中で腐ってられるのは、ある意味幸せなことなんだ。


「そうだよね……かあさん」

 静かに呟くと、姿の見えない母馬が微笑み返した気がした。

 番犬マベリックです。牧場前からご挨拶いたします。

 オスカー空をゆくを読んでいただきありがとうございます。これからもキャラクター一同で作品を盛り上げていきたいと思います。

 あと、下の蘭から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をよろしくお願いします。オスカーを襲った野良犬や狼を、1匹倒すべきだと思ったら星1つを、全滅させるべきだと思われたら☆5つの評価を何卒よろしくお願いいたします。

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