18.白の兵団vsユニコーンの亡者
オスカー一行は古戦場跡の側にある森まで来ていた。その理由はもちろん、ユニコーンの亡者と白の兵団の戦いを見るためである。
「一角獣のスケルトンはどこにいるのでしょうか?」
「実は、俺たちの背後に……なんちて」
ジョニーが言うと、マベリックは鼻を動かしながら反論した。
「沼の底の臭いのついた骨のにおいを見逃すほど、私は無能ではないぞ」
「オーラでも感知できますね」
エマも言うと、オスカーは笑った。
「この状況で奇襲を成功させたら、それこそ最強の一角獣だな」
「違いない」
エマは真面目な表情になると、太陽を見た。
太陽は西に傾きつつあったが周囲を明るく照らしている。
「昼間のうちはあまり長く表に出られないのかもしれませんね」
オスカーは夕陽へと目を向けた。
「夕暮れまで待機しよう」
白の兵団は古戦場の沼の周囲で、オスカー一行は遥か離れた森の中でそれぞれ待機し、時間が経つごとに日は傾きはじめた。
太陽がオレンジ色の光りを放ち、辺りを赤く染めはじめた頃、オスカーやエマの瞳にははっきりとこの世に存在しない者たちを映しはじめた。
「……出てきたな」
「ええ」
「お前たちも物好きだな」
オスカーが耳をピクリと動かすと、見覚えのあるユニコーンが音もなく降り立った。エマの父親フィンの登場である。
エマも笑っていた。
「おもしろいものを見たい。というのは父上譲りのようです」
「言うではないか」
フィンはオスカーの隣に腰を下ろすと「ほう……」と言いながら白の兵団を眺めた。
「さすがは神の親衛隊。凄腕の使い手ばかりだな」
「彼らに勝つ自信は?」
「我々だけではまず勝てんな」
そのさっぱりとした受け答えに、オスカーは好感を持った。
「ここにウイングユニコーンもいますよ」
「貴殿は駄目だ。どさくさに紛れてエマ以外の牝馬の心も取りかねん」
「おや、あの動きは……」
マベリックが言うと、一同は沼へと視線を向けた。
白の兵団はすでに異変に気が付いているらしく、武器を構えて沼を睨みつけている。
「……」
オスカーは西の空を眺めた。太陽の大半は地平線の中に消えており、東の空を見ると少しずつ星が光りはじめている。
「この世とあの世の境界が、あいまいになっているな」
「ええ……じきに魔の時間帯となります」
「なんだかワクワクしてきたぜ」
ジョニーが言うと、マベリックも頷いた。
「動いたぞ」
フィンが言うと、一同は白の兵団の動きに注目した。
隊長風の男は、瓶を取り出すと液体を沼の中に流し込んでいる。あれは、特殊な聖水だろうかとオスカーは思っていた。
後方に控えていた弓使いが矢を番えている。魔導士も魔導書を開き、戦士一行も盾をしっかりと構えた。
そして沼の中からは少しずつ邪気が流れ出て、恐ろしい気配が伝わってくる。
「……始まったな」
白の兵団の魔導士たちは、沼に向かって大地系の投射魔法を放った。相手が骨であることを考えると、質量のある大地系魔法を選ぶことはベターな選択だろう。
何発も繰り返し魔導士たちは放つと、沼から流れ出る邪気は噓のように収まった。
「……あれ?」
ジョニーが首を傾げると、フィンも腑に落ちない表情をした。
「何だ、今のが致命傷にでもなったのか?」
「だとしたら、ずいぶんあっけねえな」
白の兵団の戦士たちは警戒した様子で沼を眺めていたが、沼から何も浮かび上がってこないため、不可解に思ったようだ。横目で仲間に視線を向けはじめている。
隊長と思しき剣士も、難しい顔をしながら少しずつ前へと歩み始めたとき、急にその足が止まった。
「……ん?」
「ああっ!?」
目の良いジョニーはすぐに気が付いたようだ。何と白の兵団の隊長のすねに、鋭利な刃物のようなものが突き立てられていた。
「あ、あれは……!!」
いや、それは刃物ではなかった。ユニコーンの角である。
ユニコーンは地中から頭を出し、その角で隊長のすねに突き立てていた。
私はエマの父フィンだ。
様々な世界の英雄伝があるなかで、オスカーの話を選んだだけでなく、ここまで読んでくれたことに感謝する。フィン丘陵の者たちを代表して礼を言わせてくれ。
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今後とも、オスカー空をゆくを是非、楽しんで欲しい。




