17.白の兵団が来た理由
オスカーは、また夢を見ていた。
深い森の中で黒いローブを着た者が跪き、奥の暗闇に向かっている。
「まさか、マンティスが倒されるとは……」
「奴は魔族に名を連ねる者。近衛兵やハイエルフと言えど、簡単に倒されることはございません」
「そうですね。敵側に十分な戦力があったのか、それとも手練れがいるのか」
暗闇の者は言った。
「関係があるかはわかりませんが、古戦場の先にある森で魔獣が殺害されました。こちらは、白の兵団の仕業でしょう」
「連中の目的は……やはり、古戦場跡のアレでしょうか?」
「恐らくは、そうでしょう」
暗闇の者は、僅かに歯を光らせた。
「もちろん、手は打っています。ですから貴方は有望な魂を探してください」
ローブの者の目元が見えた。
「マンティスの仇は如何なさるのですか!?」
「あそこは、ユニコーン会の管轄下です。この状況でぶつかっても王国を喜ばせるだけ」
「そ、それは……そうですが……」
「不満ですか?」
声が言うと、ローブの者は慌てた様子で言った。
「いえ、この人狼アドルフ。決して有能ではありませんが、任務の遂行能力だけは高いことを御覧に入れて差し上げます」
「ならば、生き残って我が元に戻りなさい。これは命令です」
その言葉を聞いたアドルフは「ははーーっ」と恐れ入った様子で頭を下げた。
オスカーが目を開けるとマベリックの寝顔があった。難しい顔をしていることが多い彼が、珍しく心地よさそうに眠っているのだから、起こすのも忍びない。
なるべく物音を立てないように起きると、オスカーは寝起きの頭を総動員して考えを巡らせた。
古戦場のアレとは何のことだろう……?
起きて10分ほどでジョニーが飛んできたので聞いてみることにした。
「古戦場のアレ?」
「ああ、夢の中でルドルフという人狼とその主人が話をしていたんだ」
ハトのジョニーは当然のように答えた。
「ユニコーンの遺体のことだろうな」
「ユニコーンの遺体?」
「ああ」
ジョニーにしては珍しく、難しい顔をした。
「あくまでこれは噂なんだけどさ。あの古戦場で敗れた大将は、ユニコーンに乗ってたみたいなんだ」
「ユニコーンに?」
「ああ、それも三大始祖とかいうスゲー馬たちの直系に当たる奴で、主人と殉じたって話だけど……肝心の角が見つかってなくて、あの戦場のどこかに眠ってるらしい」
「なるほど」
「オスカーさまはユニコーンだろ。何か感じなかったか?」
「いいや、これといって特には……」
ジョニーは苦笑しながらも頷いた。
「まあ、噂は噂だし……仮に本当だとしても沼の奥深くとかに埋まってるから探知できないとか、そんなオチだろうな」
「トレジャーハンターが古戦場に踏み込むこともあるのか?」
「そりゃもちろん。ユニコーンホーンは40センチのやつでも、同じ重さの金貨と交換されてるくらいだからな。始祖直系の角なんて見つかれば豪邸が建つだろうよ」
「……豪邸か。我々からすれば迷惑な話だ」
「違いない」
ジョニーはオスカーの角をじっと眺めると言った。
「ところでさ、角ってどうやったら生えるんだ?」
「私もわからんことばかりだが、精霊やエルフと契約したり、先祖から譲り受けたりするのが一般的みたいだな」
「……オイラにも生えないかな?」
ジョニーが切実そうに言うと、オスカーは苦笑した。
「よせ、角の生えたハトなど目立って仕方ないし、飛ぶ際にも邪魔になるぞ」
「それもそうか」
2人はそう言うと笑い合った。
「大変だ―!」
「どうした?」
ハトは近くの木の枝に止まると、焦った様子で言った。
「沼地でドロ攫いしてた連中が、恐ろしいものを探り当てちゃったぞ!」
「恐ろしいものとは?」
ハトは唾を呑むと、一気に叫んだ。
「ウマのスケルトンだよ。それも角付きのやつ!」
このハトがオスカーに報告していた時、既に現場ではユニコーンのスケルトンが、ドロをさらっていた冒険者たちは壊滅していた。
唯一、生き残った軽戦士は命からがら逃げ延びると、仔細を白の兵団に報告。隊長であるムキムは、非常に険しい顔をした。
「ユニコーンの亡者か……」
「はい、俺のいたパーティーは、1分と持たずに全滅しました」
ムキムは、報告した軽戦士の肩にそっと手を置いた。
「わかった。後のことは我ら白の兵団に任せていただこう」
間もなく、白の兵団はユニコーンのスケルトンを討伐すべく、古戦場跡へと出撃した。
オイラジョニー、スィグのヤツ、修正作業に追われてるぞ。
僕オスカー、そろそろ終わりそうだね。
マベリックです。
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