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14.フィン丘陵のキメラ退治

 樹海の奥深くから声が聞こえてきた。

「そうですか。キメラカッパは家族の無念を晴らしましたか」

「はい。ですが報告によると、白の兵団が動き出したという報告もあります」

「問題ありません。キメラカッパは既に自力で数を増やすことができません。ならば、単身でどこまで戦えるのかを証明して頂きましょう」

「ははっ」

「……ところでマンティス、ガーディアンの性能は如何ですか?」

「一般的な自警団員などを相手にするには十分ですが、相手がユニコーンとなるとまだまだ力量不足です。精進いたします」

「ユニコーンの角を持って参りなさい。そうすれば貴方にもつがいとなるメスを提供しましょう」

「必ずや、ご期待に沿って見せます……グリーンハート様」

 グリーンハートという言葉を聞いた影は、丸く大きな目を光らせた。



「オスカー様、起きてください」

 オスカーが起きると、見張りをしていたエマがこちらを見ていた。

「先から険しい顔をなさっていましたが、何か不吉な夢をご覧になっていたのですか?」

「ああ……あまり、気分の良い夢ではなかったな」

 彼は表情を戻した。

「交代の時間だな」

「まだ少し早くありませんか?」

「十分に休んだ。君も少しは横になった方がいい」

「では、お言葉に甘えさせていただきます」

 エマは腰を下ろすと、ゆっくりと目を瞑った。その寝顔には気品があり、オスカーも思わず見惚れている。

「……」

「オスカー様のエッチ~ なに見ているの」

 オスカーは不満に思いながら枝の上へと視線を向けた。

「就寝中だぞ」

「おう、カマキリどもを見かけたから、こっそりと報告するな」

 この声を聞いたエマとマベリックは、目を開いた。

「また見つかったのですか!?」

「どこだ!」

 オスカーは起きてしまった仲間たちを見て、何とも言えない顔をした。

「すまん、起こしてしまったな」

「いいえ、我らが勝手に起きただけです」

「ジョニー殿、例の巨大カマキリはどこに?」

「フィン丘陵のふもとだよ。オイラが見かけたものだけで5匹、それとは別に術者と思しき魔導士の姿もあったぜ」

 マベリックはすぐにオスカーを見た。

「オスカー様、如何なさいますか?」

「術者を叩く。ジョニーよ案内を頼むぞ」

「任しとけ!」


 オスカー一行が駆けつけたときには、既にカマキリの一段とエマの父親が戦闘を始めていた。

「父上……」

 エマの父親は翼を持つユニコーンだが、地上からカマキリたちを迎え撃っていた。空中から攻撃した方が自分の身は安全だが、自分の体を浮かせることに風魔法のエネルギーを傾けると威力が減り、カマキリ部隊から群れを守ることができないのだろう。

「ぐぎゃーーーーーー」

 エマの父親は、最初の1匹を倒したものの残り4匹は間合いを大きく詰め、2匹目に応戦している間にも3匹目が鎌を振りかざすという状況になっている。

 エマの父は辛くも一撃を交わしたものの、残り2匹に側面と背面に周られ、取り囲まれてしまった。


「さあやれ、あのボス馬を叩き潰せ!」

 術者と思しきローブの人間が叫ぶと同時に、藪が揺れた。

 飛び出したのはマベリックである。彼は術者の腕に噛みつきながら転倒させ、更に喉元に食いつこうとした。

「……お前たち!」

 マベリックは気味悪がりながら術者から飛び退いた。術者の体からは小さな犬くらいはありそうなカマキリが次々と現れ、マベリックに襲い掛かってきた。

「させません!」

 エマが大地を蹴ると、無数の石が打ち上げられカマキリや術者へと降り注いだ。

 次々とカマキリたちは潰れたが、術者の体の中からは更にカマキリが出てくる。マベリックはエマの側に立つと、襲い掛かろうとするカマキリを爪で薙いで援護した。


 一方、オスカーはと言えば、巨大カマキリを風刃で切り刻んでいた。

 エマの父親の左側面のカマキリは、鎌を振り下ろすよりも前に崩れ落ち、次の風刃で後方から噛みつこうとするカマキリの首を飛ばしたとき、オスカーの側面後方に影ができた。

「ガアアアアア!」

 伏兵役だったと思われるカマキリは、オスカーに鎌を振り下ろそうとしたが、待ち受けていたのは透明化を解除したアンジェリカによる炎の洗礼だった。

 炎弾の1発目は、カマキリの顔と首の辺りで破裂し、2発目は腹部と足の大半を吹き飛ばし、3発目は背中を翼ごと焼き払った。

「……」

 結局オスカーは、伏兵役のカマキリに視線を向けることすらなく、3匹目のカマキリに炎弾を撃ち込んだ。その一発は今までの弾よりも速く、着弾と同時にカマキリの後頭部を燃やしはじめた。

 エマの父親も、最後の1匹に風刃を放ち、肩から息をしながらオスカーを睨んだ。

「娘を連れて好きな場所に行けばいいものを……」

 群れのボスの手前、どうしても棘のある言葉になっているが、その表情は無茶をするなとオスカーを心配している雰囲気だった。

 その本心を感じたオスカーもまた、言葉を返した。

「そうさせてもらっている」

 オスカーは翼を広げると、エマとマベリックの加勢に入った。

「……」

 エマの父親は複雑な表情をしていた。あくまでエマの父親である自分の意見と、野生馬のリーダーである森の守護者としての振る舞いが、その表情の中でも激しくぶつかり合っているようだ。


「この馬ども……よくも、よくも俺様の手下どもを!」

 術者はボロボロになりながらも立ち上がると、ローブの下から鎌のような武器を光らせた。

「やかましいぞ」

 オスカーが炎弾を撃ち込むと、術者は木に叩きつけられ、見る見る燃え落ちていく。

「……!」

 いや、違う。ローブが燃え落ちたことで、正体を現したというところだろう。

 その姿は、人間とカマキリが融合したような外見に、摩訶不思議な文字や幾何学模様が記されていた。

「その姿……デーモンですね」

 エマが恐々とした表情で言うと、カマキリ人間は不敵に笑った。

「この3魔将のイプシロン様が、お前らを地獄に送ってやる!」



 皆さんはじめまして。牝馬のエマです。

 いよいよ、本作品も強敵と対峙することになりました。敵は強大ですがオスカー殿たちと力を合わせ、果敢に立ち向かいたいと思います。


 ああ、あと、例のご挨拶ですね。

 この欄の下にある【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】から、作品の応援をよろしくお願いします。

 たとえ☆1つでも頂けれは幸いです。


 では、今後ともオスカー空をゆくを、よろしくお願いします。

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