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10.カワラバトのジョニー登場

 クマザルが消滅すると、オスカーと僧兵一行の目が合った。

「真っ黒な……ユニコーン!?」

「それに、角だけでなく目が赤い!」

 彼らが武器を構えると、オスカーは目を細め大きくため息をついた。

「これは魔獣が魔獣を取り込んで、更に強くなったということですか!?」

 僧兵の1人が言うと、神父は頷いた。

「そういうことでしょう。皆さん……」

「貴殿らに用はない。速やかに家に帰りなさい」

 オスカーが厳めしい顔をしたまま警告すると、僧兵たちは裏返った声で叫んだ。

「しゃ、喋った!」

「それも悠長に……これは高等魔獣なのでは!?」

「そうでしょうね。皆さん……」

 オスカーは人間の発言に呆れ、何もせずに立ち去った。これ以上、面倒ごとには関わるのはごめんだと考えている。

「あれ……? 帰って行きましたよ」

「もしかして俺たち、食べる価値もない相手と思われたのか?」

 傷だらけになった傭兵が言うと、僧兵も情けなさそうに項垂れた。

「……そうかもしれない」

「な、情けねえ……」

「ま、まあ命拾いしましたし……皆さん、傷の手当てを」


 オスカーは少し歩くとマベリックと合流した。

「お見事です、オスカー様」

「マベリックにいい知らせと悪い知らせがあるよ」

「いい知らせはキメラ討伐が成功したこと。悪いことはオスカー様が魔獣と勘違いされたこと。でしょうか?」

「そう。話が早くて助かる」

 オスカーはそこまで言うと険しい顔をした。

 キメラを浄化したのは、あくまで自分のためだったとはいえ、心の中では人間たちに暖かく迎えられることを期待していた。ところが、彼らの味方となって危機を救っても魔獣としか見なされなかったのだから厄介である。

「彼らは間違いなく、僕を討伐しようとするだろう」

「ええ、あまりここに長居するのは得策ではありませんね」

「うん、なるべく早く引っ越しをしよう」

 マベリックは視線を上げた。

「そうですね……ただ、私もこの辺りの地形には、あまり詳しくありませんし」

「それなら、古戦場跡を通ってフィン丘陵に抜ければどうだ?」

 オスカーとマベリックは意外に思いながら、枝で羽根を休めているハトを眺めた。いることは気が付いていたが話しかけられるとは思わなかったのである。

「この辺りは、人間の行き来が多少あるけど、夜の戦場跡なら、まず通る奴はいないぜ」

「君は……?」

 オスカーが不思議に思いながら尋ねると、ハトは笑った。

「オイラは麦好きジョニー。あのクマザルとかいう怪物にダチがやられてよ。お前さんが倒してくれて少しだけ気が晴れたんだ」

「そうだったんだ……」

 オスカーが気の毒に思いながらハトのジョニーを見たが、ジョニーは気にする様子もなく自分のペースで話を進めていく。

「まあ、人間側も今回の討伐で凄い被害を出した訳だし、しばらくはお前さんを討伐はできないと思うから、2・3日休んでから行けばいいんじゃないかな?」

 オスカーは頷いた。

「そうだね。まずは体を休めないと」

「何かあったら連絡するぜ。じゃな森の勇者と御一行様!」

 ジョニーが飛び去ると、マベリックはどこか不安そうな顔をしていた。

「あのカワラバト……信用していいものか……」

「悪い鳥ではなさそうだから、今はゆっくりと休ませてもらうよ」

「わかりました。一応の警戒はしておきます」


 オスカーはぐっすりと4時間ほど眠ると、起き上がって草を食みはじめた。マベリックも捕らえた小動物を食べ終えると横になり、交互に見張りと休憩を取った。

 マベリックが起き上がると、オスカーは言った。

「おはよう」

「今は昼過ぎでしょう。何か変わったことはありましたか?」

「何人か商人が小道を歩いたくらいかな?」

「ふむ……」

 マベリックは少し考えると言った。

「ふと、昨日のキメラのことで思ったことがありまして」

「どうしたの?」

「動物の中には、我々犬や狼のように、父親と母親で子供の面倒を見る者もいます」

 オスカーの表情は曇った。

「要するに、あのサルとクマのようなキメラにも……父親キメラがいるかもしれないと?」

「ええ、あくまで可能性ですが……」

「……だとすると、ここも安全とは言い切れないね」

 オスカーとマベリックは草むらの中に身を隠した。こういう状況だからこそ、慎重に行動した方がいい。

 それから30分ほどすると、旅人の1人が木の根に足をかけて転んだ。

「いたっ……」

 彼女は這うように進むと岩に腰を下ろし、ゆっくりとズボンを上げて膝を見ていた。地面に強く打ち付けてしまったらしい。

「血の臭いがしますね」

「うん、あれは……痛そうだね」

 そこまで言うとオスカーの表情は険しくなった。

「ねえ、もしかして、キメラがいたら……血の臭いで近づいてくるんじゃない?」

「……」

 マベリックは表情を変えた。

「すぐに場所を変えますか?」

「キメラもかなり鼻が利くだろうから、僕らの足跡から追跡されるんじゃない?」

「……」

 オスカーは藪から立ち上がった。

「何をなさるのですか?」

「証拠隠滅」

「ええ!?」

 オスカーはゆっくりと近づくと、足を悪くした旅人の表情は凍り付いた。青毛に赤い瞳と角の一角獣が近づいてきたのだから当然の反応である。

 一方オスカーは、ゆっくりとその女性を見た。どうやら旅芸人のようで、荷物はあまりなく、笛のような楽器を持っている。

「ひ、ひい……神様、どうかお助けを……」

「静かに」

「……」

 オスカーは女の旅芸人の足を見ると頷いた。骨に異常は見られず、軽くひねったという様子だ。

 膝に角を近づけると、角は暖かい光を放った。まずは邪気を浄化し次に止血。最後に皮膚の蘇生を行うと女の旅芸人の足はすっかり元通りになった。

「……」

「痛みはあるか?」

「大丈夫です」

 彼女はそう言うと一礼した。

「ここは危ないから早くいった方がいい」

 そう言ってオスカーが背を向けたとき、女の旅芸人は笛を出し、両手でいじると仕込みレイピアが出てきた。

『危ない!』

「危ない!」

 マベリックが叫ぶと同時に、女の旅芸人はオスカーに襲い掛かった。

 しかし、オスカーは後ろ脚で旅芸人の手を蹴り上げ、仕込みレイピアは宙を舞いながら落下し、木の根に深々と突き刺さっていた。

 旅芸人は、マベリックにうつ伏せに倒され、牙を突き立てられている。

「何か言い残すことはあるか、女?」

「その角さえあれば……楽な生活ができるというのに……」

 マベリックが牙を光らせると、オスカーは「待て!」とマベリックを止めた。

「なぜ、止めるのです!?」

「これほど素晴らしい治療費はそうそう貰えん。ありがたく頂戴しよう」

 オスカーが立ち去ると、マベリックは旅芸人を睨みつけた。

「あのお方が人間を襲う様になったら貴様の責任だぞ。さっさと消えろ下衆が!」

「……」

 アンジェリカはマベリック以上の敵意と憎悪の籠った目で、女旅芸人を睨んでいた。

 俺たち、クマとサル。

 合わせてクマザル!

 こんちは、地元の住人から早くも討伐されたキメラクマザルです。

 オスカーにはあっけなくやられたけど、一応は強い生き物だから、忘れないでくれよ。


 ああそうそう、下の欄にある【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆】から、この作品の応援をお願いしたいんだ。

 俺たちの足だけが臭いのが理想的なら☆1つ。

 体からも振り返る程度の臭いが理想なら☆4つをお願いします。


 ……おい、なんで☆5つがないんだ?

 いや、何となく控えめに言った方がいいのかな、とか思ったり思わなかったり……

 どっちなんだよ!?

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