カセットテープに録音された俺の黒歴史が長女に暴かれた話
※「なろうラジオ大賞3」参加作品です。
「ねぇパパー。コレなぁに? 絡まっちゃったー」
長女で小学5年の未海が、懐かしいカセットテープを持ってきた。
ちょっ、テープのところがつまみ出されて絡まってるじゃないか!
だから子どもたちの手の届かないところにしまっておいたのにー!
「あー、ダメだよそんなに引っ張っちゃ。音が出なくなっちゃうだろ」
「みうじゃないよ。たっくんがやったんだよ」
「よこしなさい。直してあげるから」
テープの穴に鉛筆を差し込んで丁寧に巻き戻し、結び目になった箇所は最小限カッターで切ってつなぎ直す。アナログはいい。
「パパすごーい。直ったー」
これが昔の録音テープだと説明すると、みうは聴きたがった。
昔の歌なんて、子どもが聴いたってつまらないのに。
「やだ! 聴きたーい」
たぶんこの娘は、テープから本当に音が出るのかを確かめたいのだ。
まぁ仕方ない、俺は物置から丸っこい形をした懐かしのCDラジカセを引っ張り出してきた。
「いくぞ。再生!」
「ワクワク」
『――ジャカジャーン♪』
〇十年の時を超え、果たして音は……出た。
それは懐かしい、子ども心にお色気ぷんぷんだった――魔女っ子アニメのオープニング!
『~~♪ イヤーん♡』
「ちょっと待った」
俺が停止ボタンを押そうとすると、みうがキャッキャ言って妨害する。
すると突然、音楽に被せて人の声が飛び出してきた。
『ちょっとー! ヒデちゃん!』
『シーーーっ! お母さん!』
「……なぁに? 今の」
「……ばぁばの声。と、パパの声」
「わかーい!」
当時、小学〇年だった俺は、週1で放送していたテレビアニメのオープニングを今週こそテープに録音しようと、気合を入れてテレビの前にスタンバっていたのだ!
ちょうど夕飯時に重なるから、前もって母には仮病を使って、「部屋で寝てるから静かにして」って言っておいたのに~。
『ヒデちゃんご飯だって言ってるでしょー! 来ないと食べさせないよっ!』
『いま録音してるんだから! 声出さないで~!』
『あっまた! そんなマンガ観て! 学校でダメだって言われてるでしょ!』
「あははは! パパ、ばぁばに怒られてる~」
☆ ★ ☆
――12年後。
「……これは小学生の頃、父に昔のカセットテープを聞かせてもらったときに、私がこっそりスマホで録っていたものです」
未海の披露宴の席で再生されたそれは、テープの声に加え、あのときの父と未海の会話が重ねて録音されていた。
いたずらっぽく笑う花嫁に、困ったように照れる祖母と父の姿があった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。