1日目 前編 そこは白い部屋だった
日々の記録、というスタイルで書いていくつもりですので、サブタイトルには経過日数を入れていこうと思います。ただし、初日は異世界転移当日なので、内容が濃いため分割します。
異世界転移もののラノベで主人公に選ばれるのはたいてい、「スクール・カースト最下位と思いきや実は強かった」パターンの奴か「我こそはキング・オブ・ザ・モブ!(という割には実はイケメンで雑学詰め詰めのヲタ知識多め)」パターンの奴だ。
つまりまあ、俺は選ばれるタイプじゃない。
スクール・カーストは、自分で言うのもなんだけど、多分、中の下。昼休みを共に過ごす仲間には困ったことは無いけれど、その中に親友と呼べる相手が何人いるのかと訊かれるとちょっと悩む。モテたことはない。彼女がいたこともないし、可愛い幼馴染フラグも持ち合わせちゃいない。成績は可もなく不可もなく、球技がちょっと苦手なものの、運動音痴ってわけでもない。ムキムキな筋肉もなければこれといった特技も趣味もない。ラノベも読むし、広く浅く小説や雑誌だって読むけれど、ヲタと言えるほどの知識がある得意分野はない。成績はほぼ3で、5と1には出会ったことがない。去年までは唯一4だった技術・家庭(父親が家を空けがちな父子家庭なら大抵、子供はひととおり家事をこなさなくちゃならないもんな)が3になったのは今年の担当教師との相性が最悪なせいだと思っているし、入学以来ずっと2の英語は壊滅的に発音が苦手なせいだと自分でもわかっている。父子家庭ではあるものの、〝性格の不一致〟離婚による片親世帯なんて珍しくもないし、お涙頂戴ものの母との別れがあったわけでもない。親父だって目玉だけになって茶碗でちゃぷんとしていたりするような特殊な生態をしているわけでもなければ、使徒と戦う巨大ロボを作るような特殊な仕事に就いているわけでもない(酔うと始まる唯一の自慢話が「高校時代は剣道が得意だった」なんて漠然とした思い出の、しがないトラックドライバーだ)。ちなみに、親父も俺もイケメンではない。あれ?下の上くらいかも・・・?
何が言いたいかと言うと、俺は、異世界転移に選ばれるタイプじゃない―――はずだ、ってこと。
なのに、なんでこんなことになっているんだろう。
白い空間だ。
テンプレ上等の白い空間だ。
ここ、どこだよ・・・?
ふと、視界の端から、腰が90度に曲がったご老体が、抜き足差し足並みのスピードでのったりとこちらへ歩いてくる。
っていうかコイツ、どこから出てきたんだ!?
俺の前を通り過ぎようとして―――ピタリと止まった。ギギギ、と効果音が聞こえそうなほど不自然な動きでこちらを振り向く。ふさふさの白髪眉毛のせいで目の動きがいまいち読めないけれど、どうやら相当びっくりされている。俺だってびっくりしているんだからお互い様だ。
「なんでこんなところに一人余っておるんじゃ!」
小柄な体格の割に声がデカい。耳が遠いのかな。
「儂は耳が遠いわけではないぞ!」
おお、心を読まれている・・・なんだこの爺さん、気持ち悪いな・・・
「気持ち悪いは失礼じゃろ!」
しまった、心が読まれるんだった・・・この爺さん、テンプレでいけば・・・異世界の神様、とか?
「爺さん・・・神なのに、爺さん・・・」
あ、地味にダメージ喰らってる・・・っていうか、やっぱり神様なのか。
「こほん。」
おお、持ち直した!
「そもそも、おぬしはなんでこんなところに余っておるんじゃ!」
「余って・・・って!知るかそんなの、そもそもここどこだよ!?」
キレるジジイに、俺だってキレで応戦する。中三男子の反抗期なめんな!
「そんな・・・キレんでも・・・」
いや、小動物風にプルプルしないで?似合ってないよ?
「だって・・・だって・・・向こうの大広間でさっき終わったんじゃよ?勇者たちよ~っていうアレ、終わったんじゃよ?なんで?なんでこんな舞台裏に残っちゃってるんじゃ?儂の大事な寛ぎスペースなのに?」
いや、ただの白い部屋だからね?殺風景極めてるからね?
「ミニマリストなんじゃよっ!」
いや知らねえよ―――っていうか、他にもここに連れてこられた奴らがいたのか・・・?つまり―――最近読んでるラノベ的には、これは「異世界転移」の中でも「クラス転移」的なアレか。まあ、そうだよな、俺みたいなの、呼んでも勇者とかには向かないだろうし、きっと勇者君は別にいるんだろう。うっわ、噛ませ犬的に死ぬのだけは勘弁して欲しいな・・・っていうか、何で呼ばれたの、まだ見ぬ勇者君は?やっぱりアレかな、魔王退治とかかな?
「いや、女神の婿選びじゃが?」
―――は?
「いやだから、女神の婿選びじゃが?」
―――は?「神」はアンタなんじゃないのかよジジイ。あれか、多神教か。そうなのか。じゃなくて。
「婿選びィ!?」
なんだその平和的かつ男子中学生には刺激の強すぎるパワーワードは!義務教育終えてないんだぞ、こちとら!現実世界じゃ結婚できる年齢じゃない―――ん?こっちの世界じゃ早婚文化なのか?
「いや、じゃから!おぬしがこんなところに居る予定じゃなかったんじゃもの!」
「いや泣くなよジジイ、俺が老人を虐めているみたいだろうが!勝手にこんなところに連れてきたのはむしろそっちだからなっ!この誘拐犯っ!だいたい自分が連れてきておいて『こんなところに余ってる』だって?お前の不手際だろうがこのダメ神!!泣きたいのはむしろこっちだ!」
えー。
神様(?)曰く。
俺と、まだ見ぬ同胞たちは、魔王退治でもドラゴン退治でもなく、女神の婿選びのために異世界召喚された―――そうだ。
女神さまのお見合いオーダーは黒目黒髪の男。神様会議の結果、女神の婿なら強くないとね・・・ってことでアジア系の剣士にしよう!となり・・・日本の剣道場からクラス転移ならぬ道場転移をぶちかましたところ―――なぜか道場の脇を歩いていただけの俺も巻き込まれた、と(なにが「ちょっと手元が狂ったのかもしれんのう」だ、ジジイのてへぺろなんて可愛くないぞ・・・)。
っていうか、さ。
「なんであんな道場?女神に相応しい剣士を探していたんだったら、他にあったろ、玉竜旗の会場とか、フェンシングのアジア選手権の控室とか?」
「だってちょうど良かったんじゃもん、空間の磁場的なヤツがちょうど良かったんじゃもん!っていうか、あそこの道場主はホントに強いんじゃもん、本来なら第一候補のはずだったんじゃもん!」
「いや・・・見た目アンタとさして変わらないほどジジイだぞ?女神様ってのが幾つなのか知らないけどさ―――って・・・『本来なら』?」
ヲイ、どうして目を逸らす?ジジイ、てめえ「神」名乗ってんだったらしっかりしろ!
「名乗ってるんじゃないんじゃ、『神』なんじゃ、だから別に儂がしっかりしようとしまいと儂が正義なんじゃっ。その・・・確かに、ちょこっと・・・ちょこっとばかり、手元が狂ったが・・・」
「俺以外にも巻き込み事故起こしたってことかよ!?」
「流石に予定外にこっちに来ちゃったのはおぬしだけじゃい!」
「勝手に拉致っといて言いたいことはそれだけか、この誘拐犯!」
・・・いや、泣くなよジジイ・・・そんなに酷いこと言ってないだろ・・・?被害者は俺だぞ・・・?
仕方ない、話題を変えてやるか。
「女神の婿選びって―――さっきは『勇者たち』って一節やってきたって言ってなかったか・・・?」
そういう声かけって、ラノベとかだと勇者召喚の時の言葉なんじゃないのかよ?
「そりゃあ、あの女神の婿になろうなんて魔王退治十回するよりも勇者じゃし!そもそも女神の婿になるんじゃぞ?それなりの実績を示さねば民衆が納得せぬじゃろ?なんかこう、パァッと英雄っぽいことやってもらわんといかんし!」
神界の問題児なのか、その女神・・・?っていうか、英雄っぽいこと、なんてそう簡単に出来るのか、現代日本から召喚されてすぐに?あれか?異世界は平和なのか?現代日本よりも治安良いのか?
「いや?そなたちが言うところの剣と魔法の世界じゃと思うぞ?これまでの召喚経験から言って、日本人ならたいてい説明なしでもわかってくれるから説明を省いただけじゃし?」
なんで全部が半疑問形なんだ、このジジイ・・・
「大丈夫じゃ、転移させた勇者たちには、その剣士としての腕と経験と将来性に見合ったクラスを付与しておるし―――それに、上位スキルもつけてやったんじゃぞ?しかも、好きなものを選ばせてやったんじゃぞ?ホラ、わし、偉い神様じゃろ?」
いや・・・偉い神様が一中学生に褒めて貰いたがるなよ。待てよ―――クラスとかスキルなんてものがあるんだったら、あれもあるのか?異世界の定番「ステータス」!
おお!念じたら目の前に文字が浮かび上がって来た。ホントに剣と魔法の世界なんだな。
名前 オトヤ・カワバタ(川端音也)
種族 ヒト族(異世界人)
称号 転移者(称号特典:鑑定スキル無しで自己ステータス確認可能)
クラス 理髪外科医
スキル 自動翻訳(理髪外科医語) 髪結いLv.1 外科医術Lv.1 曲刀Lv.2 片手剣Lv.1 両手剣Lv.2 体術Lv.1 日曜大工Lv.2 料理Lv.2 裁縫Lv.1 清掃Lv.2
必殺技 瀉血
装備 理髪外科医の棒
棒・・・?
うおっ!いつの間に腰に木の棒が・・・赤く塗られているけど、単なる木の棒だよな?これが装備品・・・?村人Aみたいな装備なんだけど、大丈夫なのか、コレ。
そんなことより。
「いや、理髪外科医ってナニ!?」
「おお、流石は理髪外科医!最初から翻訳スキルがあるのは職業柄じゃな。」
「いやだから理髪外科医ってナニ?」
「理髪外科医じゃろ?そちらの世界にもあった職業のはずじゃが?散髪と簡易的な外科手術を請け負うクラスじゃな。まあ、外科医と違って手術の成功率は低いがの。何かと言えば気休めに血を抜くので、逆にダメージを与えることも多い恐ろしい存在じゃ。」
「いや、だからなぜ理髪外科医?俺、医者になりたいと思ったこともないし、散髪にも興味ないぞ?」
見ろ、この、なんのひねりもない短髪を!
「しょうがないじゃろ、剣道場経由なんじゃもん!刃物関係のクラスになっちゃうんじゃもん!」
いや知らねえよ!
「だいたいなんでおぬしは剣士じゃないのに剣術関係スキルが三つもあるんじゃっ。詐欺じゃ!」
「お前だよ、勝手にクラスだのスキルだの付けたのは!」
「それはそうなんじゃが・・・そうじゃ、他の剣士たちにはスキルを二つ授けたんじゃが・・・そのうち一つは翻訳スキルじゃった。おぬしはすでに翻訳スキルを持っておるから、選択ボードから二つ選んでよいぞ。他の者たちはボードから一つづつ既に選んでおる、気にせんでよいぞ。」
「ボード?」
「これじゃ。」
ぼふん!
ステータスと同じように、目の前に文字が浮かぶ。
状態異常無効 物理攻撃無効 魔法攻撃無効 千里眼 時間停止 瞬間移動 青魔法 赤魔法 白魔法 黒魔法 黄魔法 無限収納 獲得コインUP 道案内 鑑定 限界突破
おお、『瞬間移動』なんてRPGっぽいスキルがある!―――ん?違和感がハンパないんだが・・・黒魔法は攻撃魔法、白魔法は回復魔法だとして、この青だの赤だのって何なんだ?
「青は木であり東であり・・・」
「まさかの陰陽五行だった!?」
つまりこの場合、黒魔法は水魔法で、青魔法は木魔法で・・・木魔法ってどういう魔法だ?想像がつかない。植物を操るのか?蔦を操って触手攻撃!みたいな?
「何をゴニョニョ言うておるのじゃ?早う選ぶが良い。」
選べって・・・二つ選べってことだよな?普通に考えて、異世界に放り出されるなら『鑑定』とか『魔法攻撃無効』とかのほうが有用そうだ。問題の女神様に狂信者がいて「異世界からの婿なんて許さん」なんて殴り掛かられる―――という展開も考えられる。その場合、拳を振りかぶられたら殴られるだろう、殴られたら痛いだろう、くらいの予測はできるから物理攻撃は躱すことができるかもしれないけど、魔法に関しては未知だからな、魔法攻撃なんてされたら、どう防御姿勢をとったらいいのかも分からない俺なんて、ひとたまりもないだろうし。
「じゃあ、『魔法攻撃無効』と・・・」
「残念じゃが、それは先ほど既に勇者たちが選んでいって売り切れじゃ。今選べるのは・・・おお、ちょうど残りは二つではないか!ほほいのほいっっ。」
シュウゥ・・・
身体が一瞬、光に包まれて・・・力が漲る感覚がある。嫌な予感はしていた。残り物しかもらえないんだろうな、って。結局何が貰えたんだ?ちょいと確認してみるか、ステータス。
名前 オトヤ・カワバタ(川端音也)
種族 ヒト族(異世界人)
称号 転移者(称号特典:鑑定スキル無しで自己ステータス確認可能)
クラス 理髪外科医
スキル 獲得コインUPLv.1 道案内Lv.1 自動翻訳(理髪外科医語) 髪結いLv.1 外科医術Lv.1 曲刀Lv.2 片手剣Lv.1 両手剣Lv.2 体術Lv.1 日曜大工Lv.2 料理Lv.2 裁縫Lv.1 清掃Lv.2
必殺技 瀉血
装備 理髪外科医の棒
おお、スキルが増えてる!じゃなくて!
「―――なあ・・・余っていたってことは、これ、所謂外れスキルだよな・・・?」
『獲得コインUP』って・・・商人向けのスキルなんじゃないのか?〝理髪外科医〟の俺が持っている場合―――売り上げが良くなる、とかいう効果なのかな?さほど器用というわけでもない中学生の俺に床屋を開けと?そして異世界人の髪を切り刻めと?―――うっわ、無理だろ・・・。それでどうやって女神の心を掴めと?カリスマ美容師的なアレなのか?ないわー。『道案内』に至っては謎が過ぎる。道を説明するのが上手になる・・・とか?上手になったところで、俺、そもそも異世界の道なんて知らないぞ?
「そんなことはないぞ!全部、女神の夫に相応しい戦功を上げるために儂が見繕った素敵スキルじゃし!」
胸を張ろうとして腰をいわすんじゃない!
「戦功・・・?」
不穏な単語を聞いたんだが・・・
「なあ、女神さまの婿選びって―――集団見合いみたいなことってわけじゃないんだよな、きっと。さっきから『戦功』だの『英雄っぽいこと』だの『勇者たちよ』だの・・・出てくるワードが全部、戦闘前提なんだけど・・・ヲイ、なんで今あからさまに目を逸らした?」
「・・・いや、じゃから、あの女神が『この男なら見どころがある』と思うくらいの戦功を・・・って、まあ、おぬしは大丈夫じゃ、おぬしは流石に若すぎる・・・出来る限り、無茶はせんように。さすれば生き残れるじゃろうし。」
急にきな臭くなったんだが!
「生き残るって・・・相当危険な世界なんじゃないのか、これから放り込まれるのって・・・?そんな剣と魔法の世界で、〝理髪外科医〟って負け組だよな・・・気づいてたけど・・・因みに他の勇者さんたちはどんなクラスだったんだ?」
「ん?そうじゃな、勇者・剣聖・剣豪・・・」
うっわあ、想定の範囲内過ぎてドン引きだわ。明らかに俺、ハズレ枠じゃん!俺はもう生き残れる気がしない。
「なあ、俺って婿候補じゃないんだよな?今、事故ってる最中だよな?おい、俺を元の世界へ還せ。」
「いや・・・その・・・そのじゃな・・・戻すことは、出来んのじゃ・・・」
はあ!?
「おまわりさんこいつです、未成年者略取の犯人は!」
「じゃから!事故なんじゃよお!っていうか、儂、神様なのに!警察より偉いのに!儂が正義であり法なのに!」
「事故だから責任はとらないって?神様のクセに?偉そうに神様名乗っといて俺を元の世界に還すことも出来ないって?」
「そんな淡々と・・・」
しょんぼりするんじゃない!
「そんなにサクサク異世界に干渉なんてできるわけないじゃろ!」
あ、逆ギレした。
「そんな目で見らんでくれ・・・何も一生戻れんというわけでは・・・その、今回の目的は女神の婿取りじゃろ?じゃからその・・・女神の婿が決れば、あぶれた者はみな強制送還じゃし・・・決まらぬ場合でも、三年の月日が経って誰も女神に選ばれぬ場合は、今回の見合いは失敗ということで新たなグループと総入れ替えに・・・」
「―――それで?」
どうした、話を続けろクソジジイ。
「つまりその、おぬしの場合、最長でも三年生き残りさえすれば、元の世界に戻れるんじゃ。」
「三年?俺、中三なんだけど?高校受験どうしてくれんだよ!」
「そ、それは大丈夫じゃ!同じ時刻、同じ場所に戻すことになっておる。」
信用できるか!既に俺という事故物件発生させてるじゃないか!
「大丈夫じゃ、これまで誤差はだいたい1日程度じゃし!」
―――夏休みで良かった。って、「これまで」?
「ジト目はダメじゃ・・・神様にジト目は・・・」
聞いた話を搔い摘むと、どうやら、黒目黒髪が好みだ、と知るまでに色々失敗したらしい。アフリカやヨーロッパから呼び出された最初のころの婿候補は、日本人と違って異世界ものの二次元知識なんて乏しいから、かなりつらい思いをしたようだ。心から同情する。合掌。
まあ、俺は婿候補として呼ばれた勇者たちの巻き込まれ事故だ、女神様の寵を争って喧嘩したって仕方がない。考えるまでもなく、勇者vs.理髪外科医なんて一瞬で負けそうだしな。こちらの世界で三年生き残れば元の世界に戻れるんだったら、できるだけ目立たず騒がず三年をやり過ごすのがベストだろう。
そう考えると、理髪外科医もそれほど悪いクラスを引いたわけじゃないのかもしれない。手に職があって良かった。とりあえず、三年間は自力で喰っていかないといけないわけだからな。俺はバイト経験もないし、適職が既に分かっているだけでも有難い。
「なんというか・・・黙られると、子供を捨てるようで居心地が悪いのお・・・そうじゃ、所持金をやろう。大人たちと同じスタートでは、可哀そうじゃからの。ちっとばかり餞別に色をつけてやらんと。ほほいのほいっっ。」
チャリンチャリンチャリン・・・と脳内で音がする。途端に腰が重くなった。
「うわあっ!?」
腰に棒以外のアイテムが増えている。巾着袋だよな、どう見ても。ちょいと重い。所持金をくれると言っていたから、コインが入っているんだろうか。確認しようとして袋に手を掛け―――
「ではの!生きていればまた会おうぞ!」
ジジイの声が急に遠くで聞こえて―――全身が光に包まれた。
「待て、他にも聞きたいことが・・・まだ話は終わってな・・・!」
はじめまして。みぃと申します。初投稿ですので、「なろう」HPの使い方もよくわかっていない部分が多く、探り探りです。よろしくお願いします。