「父親」との再会
大変お待たせしました。ようやく続きが掲載できるようになりました。
屋敷の中に入ると、まだ父が起きているということで、三人で挨拶に行った。父の部屋の前まで来ると、二人はちょっと緊張しているみたいだった。
「父上、マルクです。入ります」
ノックし、分厚い木の扉を開ける。寝間着に身を包んだ父が、椅子に腰掛けている。白髪の交じったひげを蓄えて、目尻にしわを刻みながら微笑む。
「ただいま戻りました」
「おお、我が息子よ。無事で何より」
「こっちにいるのは僕が今の礼拝所でお世話になっている人達です」
「アシュリーです。突然お邪魔してすみません。マルク君は良くお務めしてくれてますよ」
「ら、ライリーです。えっと、お邪魔します」
「いつも息子が世話になっております。長旅で疲れたでしょう。そこの召使いが食堂へ案内してくれるから、食事をすませてゆっくり体をやすめなさい」
「先に行ってて下さい」
そう言うと、二人は召使いに連れられ部屋を出た。別の使用人が部屋の隅で控えているのを除けば父と二人きりになった。
父の姿は三年前と変わらなかった。こうして相対していると何だかこみ上げてくるものがある。たとえ本当の父親では無くても――血筋としては伯父に当たる人だから――思うところは色々あっても、十年以上僕を育ててくれたのはこの人なのだ。
「……父上、ただいま戻りました。皆さん元気でしたか?」
「特に変わりないよ。予定より遅かったから心配したけど、ここの所雨が降っていたからな。お前が随分大
人になって帰って来たから驚いた」
「そうですか?」
「そりゃそうとも。母さんが見たらひっくり返るかもしれん。それに、礼拝所の方まで引き連れてくるとは思わなかった。イーサンの帰還式典は無事に終わったよ。ここら辺は綺麗に晴れて、丁度良い日和だった。気をつかわせて悪かった」
「いえ、そのくらいは」
イーサン、この家の長男。血縁的にはいとこだけど一応兄だ。兄と僕とは九つ年が離れていて、小さい頃に修行ということで奉公に出されているから、一緒に遊んだ覚えが殆ど無く、厳しかったことだけが印象に残っている。帰還式典に参加できなくても、そこまで残念だと思えなかった。
「あの二人は、たまたまこの街に用事があったんです。だけど街に着くのが夜になっちゃって。宿屋の予約が間に合わなさそうだったし、折角だから泊まってもらうことにしました。あの、朝になったらすぐに出ますから。できるだけ父上や母上に迷惑がかからないようにします」
「なに、迷惑だと言った覚えはないぞ。まともなもてなしもせずに帰らせるなどそれこそファルベル家の恥。せめて朝食だけでもご一緒して、母さんにも挨拶してもらいなさい」
「は、はあ」
「とにかく、お前も今晩はゆっくり休んで、積もる話は明日にしよう」
「はい」
そうして僕は部屋を出ていった。役人の目に触れないうちにと考えての計画だったが、実現はできなさそ
う。
ため息をつきながら食堂に入ると、ライリーとアシュリーが机に並べられた数々の料理にかぶりついていた。塊肉や、スパイスたっぷりのスープや、焼き魚や肉団子の煮込みや、ダリオールが並んでいて、それを桶に入った花の香りが包み込む。
こんな食事を前にしたのは久しぶりだ。お腹が鳴ってきた。僕も席に座り、ナイフを手に大きな皿に乗ったかたまり肉に手を伸ばした。弾力のある赤身にかぶりつくと、まず振りかけられたコショウが舌を刺激し、次に甘い油がじゅわっと口の中に広がっていく。固いけれど噛めば噛むほど旨みが出てくる。
「うめえーー」
「兄弟、もっと味わって食べなよ。こんなのはもう一生食べられないと思った方が良いよ」
叫ぶライリーをたしなめているアシュリーも頬を食べ物で膨らましている。
「もう俺ここに住みたい」
「先輩、気持ちは分かりますが無理だと思います」
焼き魚をほおばりながら口を挟んでしまう。皮はパリッと身は柔らかく、生臭さを殆ど感じない。旨みがありながらどこかさっぱりとした感じ。レモンがかけてあるのだ。
どれも味がしっかりとついていて、次々と手が出てしまう程美味しい。あの二人では無いが、もうこんなに肉や魚が食べられる日も無いだろうと思うと、多少お腹が苦しくても手が出てしまう。中が白くて柔らかいパンも懐かしい。
こうして僕達は夕飯を楽しみながら一晩を過ごしたのだった。
暫くは毎日更新できると思います。次の話が間に合わなくなったらまたお休みするかもしれませんが、できるだけ完結まで頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします!
良ければ前回、前々回も少し修正していますので、気になる方はそちらも併せてご覧下さい。




