表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祓魔師の話  作者: かめさん
第八章 里帰り
97/115

マルクの実家

 多少お金に困って民家に泊めてもらったり、雨がふり、道がぬかるんで通れなくなったので、街の礼拝所で暫くお世話になったりしながら、さほど酷い目に遭うことなく旅は続いた。比較的治安の良い大きな街道しか通らなかったのが良かったのだろう。予定より少し遅れたが、家族としては寧ろ好都合だろう。一週間足らずでブラスキャスターの城壁が見えてきた。


 ブラスキャスターもブラッドリーも古い街だが、信仰の街から一転商人の街となり拡大していったブラッドリーとは異なり、ここは長いこと王都だった場所。ややこぢんまりとしているが、全体的に荘厳な雰囲気をたたえている。


 ファルベル家に描かれているのと同じ模様が彫られた懐かしい門の前で馬車が止まる。門は閉まっていたが、顔見知りの門兵がいてくれたおかげですぐに中へ通してくれた。彼が話しかけてくる。


「残念ながらお兄様の帰還式典は既に終わってしまいましたぞ」


「雨で河が増水して、橋を渡れなかったのです」


「それは大変でしたな」


 実は、雨が降らなくとも帰還式典には間に合わなかったし、合わせる気も無かった。


 手紙には、俗世から離れ、聖職者となっているため、僕が帰ってくることは公にしないと書かれていた。兄が帰る日には式典が行われる。門番が話題に出したのと同じように、何故家族なのに参列しなかったのか、と責める人がいるかもしれない。面倒なので遅れてしまったという体をとることにした。

馬車は街に繰り出していく。門番が見送ってくれた。あの人、結構な年なのにまだ働いているんだ。息子さん元気かな。


 宿屋の予約が間に合わなかったので、折角だから僕の家で泊まってもらうことにした。街に入る時間も理由があってのこと。父は当然この辺りの領主であり、実家では当然のように公務も行われている。早い時間に行くと役人に見つかってしまう。帰る時間を見計らっていたら日が落ちてしまったというわけだ。

もう家族は夕飯を済ましている頃だろう。一人で済ませるのも寂しいものがある。


 朝、親が起きる前に三人で出かければ、彼らに嫌な顔をされることもない。そこで宿を探し、僕だけ家に戻れば良いのだ。


「マルクの家、行ってみたい。豪邸なんだろ?」


「そこまでではありませんよ」


 目を輝かせているライリーに対し、


「入れてくれそうな宿を探すから無理しなくて良いよ」


 とアシュリーは言った。僕のこと、そして家族のことを気にしているのだ。両親、厳密には育ての親は、貴族であることを誇りに思っているし、ファルベル家の威光が衰えないよう常に気を配っている。いずれ爵位を受け継ぐであろう兄はその態度が顕著に現れている。


 二人を両親に、そして兄に合わせたらどんな反応をされるかは心配だった。


 

 暫く馬車を走らせていると、円形の塔が見えてきた。防衛拠点となる古城だ。


「アレがお前の家?」


 二人が興味津々で尋ねてくる。


「違いますよ。ああいうお城は住むのに向いていないんです。戦争の多かった時代はともかく、今は普通の屋敷ですよ。まあ、ご先祖様は住んでいたかもしれません」


「普通の屋敷っておかしくない?」


 アシュリーがぼやく。そろそろ家が見えてきた。ちらほらと窓から明かりが漏れている。良かった。暗くなってしまったけど、まだ起きている人がいるみたいだ。何年離れていただろうか。懐かしい我が家。


「ほら、暗いけど見えてきましたよ。僕の家です」


「おお、でけえ。窓いっぱいついてる」


「さっすが。広いねえ。これ本当に一つの家族が住むような家なの?」


「手前の建物は公務に使っているんですよ。ブラッドリーで言うギルド会館とか、市庁舎みたいなものです。少し屋根が出ているでしょう? 奥にあるあの建物が僕達の家です」


「こっからじゃ見えないけど、それでもデカくね?」


「まあ、泊まり込みの使用人もいますから。家族だけの家ではないですよ。正直言ってしまうと、建物の半分位は全く使って無いですし、僕でも良く分からないのですけど」


 小さい頃は度々妹と探検していたけれど、年を経るにつれて毎日いる部屋は限られてきた。

 門が迫ってきた。窓から身を乗り出し、門番に話しかける。


「お久しぶりです。ただいま戻りました」


 知っている人だ。一応親からの手紙も見せる。彼は帽子の下にある厳めしい顔をほころばせた。


「マルク坊ちゃん、よくぞご無事で。今開けますからな」


「ありがとう。悪いんだけど今、旅の連れが二人いて、宿屋に間に合わなかったからここで泊まってもらいたいと思うんだ。部屋の準備を頼めないかな?」


「かしこまりました」


 門をくぐった馬車は、庭の中心を貫いている道を通る。


 馬小屋が外にあるので、途中から馬車を降りて歩いて行く。きっと皆、部屋や食事の支度で慌てているだろうから、ちょっとした時間稼ぎだ。夜の庭を散策するのも新鮮で楽しかった。二人も楽しそうにしている。


「でけえ像があるな、誰だこれ」


 庭の真ん中にそびえ立つ初代ファルベル国王が僕達を出迎えた。彼は鎧に身を包み、剣を地面に突き刺すような立ち姿をしている。本当は隣に馬が彫られていたはずなのだが、彼の足下もろとも壊されたせいで、殆ど崩れ落ちている。


「昔この辺りにはファルベル王国という国があったんです。その初代王様の像ですよ。もっと広い範囲を治めていた父親から現ファルベル地方の領土を受け継いだんです。この街で人々を困らせていた魔物を倒し、ブラスキャスターを都に定めたことを讃えて建てられました」


「魔物ってどんな感じだったのかなあ?」


「さあ。語る人や文献によってかなり違うので。ドラゴンとか、巨大なコウモリとか、巨大なオオカミとか、吸血鬼というのもありましたね。街の中には一緒に魔物が彫られている像もありますが、姿はまちまちですね」


「へえ、こういう伝説って魔物が見所じゃ無いの? それが分からないってつまらなくない?」


「ただ、様々な姿に変身するという特徴は大体一致しているんですよ。どの姿の時を切り取るかで変わってくるのではないでしょうか」


「なるほどね。それを先に言って欲しかったなあ」


「すみません。真っ先に魔物に食いつくとは思わなくて」


 普通倒した初代国王の方に目が行くのではないだろうか。アシュリーらしいと言えばそれまでだが。 像の横を通り過ぎ、奥にある一回り小さな屋敷を目指す。そろそろ頃合いだろう。


ここまで読みに来て下さった方、本当にありがとうございます! ですが、今日はちょっと残念なお知らせがあります。

 今回のエピソードがなかなか完成せず、このまま毎日投稿するのが難しくなってしまいました。

そこで、一週間ほどお休みをいただきたいです。いつも読みに来て下さっている方、大変申し訳ありません。3ヶ月間ずっと励みになっていました。

 書き上がり次第、投稿を再開いたしますので、その時はよろしくお願いいたします!


追記:6月2日に修正いたしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ