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祓魔師の話  作者: かめさん
第八章 里帰り
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ブラッドリーを旅立つ

新しいエピソードです。主人公が里帰りをします。

 両親から手紙が届いた。他家の下で修行していた兄が帰還するので、ブラスキャスターに戻り、兄の無事を共に祝って欲しいという内容だった。祭司様に相談してみると、ありがたいことに快く許可を下さった。その代わり、祓魔師の二人も連れて行ってくれないかと頼まれた。


 祭司様がおっしゃるには、たまには彼らに外の世界を見せてあげたいのだそう。だから一緒の馬車に乗ってブラスキャスターまで行き、僕が実家にいる間は別行動で街を見て回ってもらおうかと考えていらっしゃるらしかった。


「彼らも大人だからね。短期間なら問題は起こりにくいだろうし、何より同じ街に君がいてくれるなら心

強い」


 と僕の肩に手を乗せる。なんだか誇らしくて、大きな声ではい、と返事をした。だが、三人が暫く留守にするとなると、礼拝所はどうなるのだろう。かといって、どっちか一人連れていくとなると、絶対喧嘩しそうだ。


「あの、祭司様とビルに任せちゃって大丈夫でしょうか?二人では流石に……」


「今はさほど忙しくないし、アリシア君に応援を頼もうと思っている。安心したまえ」


 アリシア・エヴァンス氏。ライリー、アシュリーの師匠で、かつてここの礼拝所に務めていた人だ。僕が心配するには及ばなかった。


 その話を二人に振ってみると、どちらもすぐに行くと答えた。おそらくブラッドリーと周辺部にしか行ったことのない彼らにとって、僕の故郷は遙か遠くにある未知の場所。興味の対象なのだろう。


 私服をタンスの奥から引っ張り出し、数日分のパンを荷物と一緒に詰め込んで、祭司様が呼んで下さった馬車に乗り、僕達はブラッドリーを旅立った。


 河を渡り、大きな街道に入る。街はどんどん遠ざかり、小さくなっていく。その光景は、来た時と同じ。青々とした河の背後に広がる、立派な城壁に囲まれ、大礼拝所や役所の塔の先が僅かに上へ伸びている、美しい街だった。僕の向かいに座っていたライリーが


「俺も見たい」

 

と言って窓枠に身を乗り出す。窓は彼に譲ることにして、僕は袋を開き、銀貨を数え、ため息をつく。


 親は確かに旅費を用意してくれた。一人分だけ。親は二人が来ることを知らない。祭司様も多少彼らに持たせて下さったし、念のため食べるのに困らないようパンももらってきたが、休んでいるときに御者の方と相談をしなくては。


 僕達は一部屋で寝るとしても、御者の部屋と馬小屋は用意しなきゃいけないし、食費だって一人の時より倍以上かかる。とても来た時と同じ宿では泊まれない。万が一山賊に会ってしまったら一大事だ。護衛は雇ってないし、馬や御者を雇い直すお金もない。歩いて行くには時間がかかりすぎる。巡礼の旅ならともかく、今回は兄の帰還に間に合わせなければならないのだ。


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