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祓魔師の話  作者: かめさん
番外編 アリシアさんと小さな祓魔師
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兄弟がやってきた

 その日、祭司からライリーの元へ嬉しい知らせが届いた。


「近いうちに新しい兄弟がここに来ることになったよ」


「本当! どんな奴なんだ」


 ライリーが机の上に身を乗り出して尋ねる。


「孤児院にいるって聞いたから年の近い子だと思うよ。確か男の子だって聞いたけどねえ」


 女の子なら、そもそもこちらに話は来ないだろうね。と付け加えた。


「兄弟か。遊んでくれるかなあ」


「きっと仲良くなれると思うよ」


「おとうとか? おとうとだと良いなあ」


 近所の子が、時折弟や妹を連れてきて一緒に遊んでいるのを見て、憧れを抱いていたのである。


「弟が良いのかね? 大変だよ。君もしっかりしていなきゃ。まあ、まだどちらか分からんがね」


「やった、やった」


 ライリーは飛び跳ねながらアリシアやビルにも報告しに行った。


 日当たりの良い広場の隅に、タオルやカソック、マントが並んでいる。風に揺られて気持ちよさそうにはためいていた。ライリーは洗濯物を干しているアリシアに抱きつく。


「なあ、ししょー。俺に兄弟ができるんだって。一緒に遊べるんだ」


「良かったなあ」


 祭司が彼に話す少し前、アリシアもビルと一緒にその話を聞いていた。ビルは、ガキなんかライリーだけで沢山だ! って言っていたけれど、孤児院を運営している大礼拝所からの依頼で断れなかったらしい


「お父さんから迎えに行ってくるよう頼まれたから、ライリーも一緒に来るかい?」


「行きたい!」


 目を輝かせて頷いている。祭司が聞いてきた限りでは、結構奇行の目立つ子で、孤児院も音を上げていたそう。


「ここだけの話、悪魔憑きかもしれんと言われてな。大礼拝所の祓魔師が見ても一向に素行が良くならないから、君に診てもらうついでに、ここで療養してもらおうという話でまとまったのだよ」


「ちょっと、向こうの人が祓えないのが私にできる訳ないって」


「もっともだ。まあ、悪魔憑きというのは建前で、手のかかる子を体よく追い出したかっただけだろう。聞いた話じゃあ、奇行といっても、神はいないと言い出したり、悪魔がいると言ったり、気味の悪い魔法陣を描いたりした程度だ。あの位の年なら多かれ少なかれ思い悩むことはあるだろう。ここでのんびり過ごしてくれれば落ち着くだろうと思うがね」


「大礼拝所で神様いないはヤバいだろ」


 と話すビルには呆れと感心が混ざっている。


「まさか、ベンも悩んだことがあるの?」


 アリシアはからかうように質問をぶつける。祭司は手を組み、いっそう声を潜め、暫く間を置いてから口を開いた。


「君達なら漏らさないと信じているよ。ここだけの話、誰もが通る道だと思っていたのだがね」


「いるかどうかなんてことすら考えたことねえ」


「へー、意外。祭司って誰より神様のこと信じている人達だと思ってた」


「どうだろうね。そうありたいものだけど」



 二人と話していた時のことを思い出す。暴力とか、泥棒とかするような子ではないらしが、自分達の手に負えるのか、妖精や魔物が見える体質のライリーと上手くやっていけるのかというのが気がかりだった。


 アリシアの心配をよそに、ライリーは草刈りしているビルの元へ駆けていく。ビルの隣にしゃがみ、草を引っこ抜いては麻袋に放り投げている。


「なあなあ、おとうとができるんだぜ。もうすぐ迎えにいくんだ、凄いだろ」


「おい、弟確定かよ。どうする、もしでっかいにいちゃんだったら」


「にいちゃんでも、俺が色々教えてあげるんだ! あーでも、怖い兄ちゃんはやだな。パン取ってっちゃうもん」


「兄弟は取り合いをするもんだ。強くなるしかねえな」


「ケンカすると、ししょーが怒るぞ。……おっ。なんか落ちてた」


 割れた木のカップを拾い上げる。儀式の時、酒やジュースを人々に振る舞うのだが、その時捨てられたものだった。


「後で燃やすから入れとけ、手、切らないようにな」


 取っ手をつまみながら袋に入れる。そんな彼らの様子を見ていたアリシアはクスクスと笑っていた。


 同年代の子が来るのは、彼にとって良いことかもしれない。彼女は内心、自分達が取り込んでいる時一緒にいてくれるような年上の子が良いな、と思っていた。だが、祭司の話を聞く限り一筋縄ではいかなさそうだった。



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