それから二年経ったある日のこと
話の展開の都合で、短めとなっております。
魔法学校の門の近くに道具販売の人が立っていた。小さな机に杖や帽子、筆、明かりなど、こまごました物を並べ、スツールの上に店の人が座っている。背後には手押し車が止まっていて、荷物が積まれていた。
季節の変わり目になると、小間物商が学校の近くに露店を開くことがある。この機会に勉強道具を買い換えようという学生が多いのだ。
ベラもご多分にもれず、そろそろ新しい筆でも買おうかと思いたち、商人のところへ向かった。商人の顔がはっきり見える所まで近づいた時、息をのんだ。
普段、露店には老人が座っているのだが、今日は不思議なことに、若い男が座っていた。そして、その顔立ちは思いを寄せるアシュリーと瓜二つだったのである。
ベラの心臓が高鳴る。机の上に並べられているペンを選ぼうにも、全く目に入ってこない。
「これなんかどうでしょう」
アシュリーのそっくりさんが、羽の先が空色になっているペンを手に乗せる。その羽はまるで、幸福を運ぶ青い鳥。手に取ると気分が晴れやかになりそうだ。
「あら素敵。これ頂くわ。ありがとう」
ベラは一目見てすっかり気に入ってしまった。鞄の中から銅貨をとりだし、相手に差し出す。若い男は、笑みを浮かべながらその手を軽く包み込んだ。細めた目から、商品を買ってくれた客に向けるもの以上の視線が含まれている。
「自分、ダリルと申します。以後、お見知りおきを。お名前を伺っても良いですか」
「ベラと言いますの」
「まあ、なんて素敵な名前だろう」
ベラは、慌てて手を引っ込め、小走りで露店から離れる。手を頬に当てる。熱い。赤面する彼女の顔は、まるで熟れたリンゴのよう。
「ベラちゃんか。可愛い名前だね」
彼女の耳にこだまするのは、二年前に聞いたあの人の声。




