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祓魔師の話  作者: かめさん
第七章 エルフの森と泉の悪魔
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エルフの森と湖の悪魔 最終話

 グリフの支度で慌ただしい、いつもの朝。机を運んでいると、ビルの怒鳴り声が聞こえてきた。


「お前、そこのエルフ、いつの間に入って来たんだ」


「宿に泊まろうとしたら、断られた。この木は案外、寝心地が良い」


「降りろ、いるなら手伝え」


「知らん」


「ハルディアさん。お久しぶりです。お元気でしたか」


「まあな」


 エルフのハルディアが、泊まりに来ていたみたいだ。今日は求道所から聖歌隊が来ることになっているから、今度こそ、キャロルの歌声が聞けるのではないだろうか。


 ハルディアの傍で、狐が歩いている。どこかで見覚えのある、艶のある毛並み。


「あれ、その狐、もしかして」


「ああ、こいつが人間の街に行きたいと言い出したから、連れて来た。帰ったらルォーフェルの奴に語って聞かせてやるそうだ」


 人間嫌いの女エルフ。彼女と分かり会える日もいつかくるだろうか。


「そうだ、ハルディアさん、ずっと前、畑のことで議論したこと覚えていますか? あの後教典を読み返したら、聖パルメの手紙、第一章に、種を植えよ、その草を、その実を与えよう、という言葉があったんです。つまり、畑仕事は、神から許可を頂いているのです」


 逆に言えば、神から許しを得て、初めて種を植え、育て、食べる事ができるということでもある。畑を嫌うエルフ達。

 

 彼らは、神から許しを得られなかったのか、それとも、神により近いと伝説で謳われる程に、美しく、気高い種族は、許しを得てもなお、神のお創りになった世界を変えぬよう生きているのだろうか。


「そんなこともあったな。おお、そうだ、こちらも話があったのだ。満月の日、種族問わず歌が下手な者を集め、泉の主に捧げることとなった。その日、自由に水を汲めるという方向で、人間の長とも話しが進んでいるらしい」


 歌が下手な人を集めるお祭り。確かにあの魔物は喜ぶかもしれないが、参加する人なんているのだろうか。苦手な人というのは、基本、人前で披露したくないものだろうに。無理矢理連れ出すということか? 鳥肌が立ってきた。


 聖女達の賑やかな声が聞こえる。聖歌隊が到着したみたいだ。人だかりの中にいたキャロルが、僕達を見つけ、一目散に走ってくる。


「ハルディアさん! いらしていたんですね。また会えて嬉しいですわ」


 ハルディアが木から降りて、微笑みを浮かべる。


「今日は、歌うのか」


「ええ」


「楽しみにしている」


「頑張ります。ところで、どんな話をしていらしたの?」


「泉のことですよ。月に一度、その、歌が、あまり得意でない方々が集まって歌うんだそうです」


「ああ、貴公は満月の日、予定を空けておくように。迎えに来る。泉の主が待ちわびているそうだ」


「嫌ですよ。絶対行きません」


「この前、来ると約束しただろう」


「ええ、まあ、はい。言いました。けど……」


「良いじゃないですか。きっと喜んで下さいますよ。逆に面白そうですし」


「これ以上、恥を重ねる訳にはいかないんです。こうなったら、満月の日までに上手くなるしかありません。キャロルさん、お忙しい所、申し訳ないのですが、近いうちに歌唱指導していただけないでしょうか」


「あら、マルクさんはそのままで良いんですよ。私、あの時、思い知らされたんです。歌は、相手の心を揺さぶってこそ。真のライバルは身近なところにいたって。マルクさん、貴方は、私の恩人であり、ライバルなんです。教えるなんてとんでもない、一緒に高めあっていきましょう!」


「キャロルさん……。冗談はよして下さいよ」


 冗談というか、皮肉にしか聞こえない。その割には曇りのない瞳をキラキラさせながら話している。


 キャロルさんは無事だったし、生贄を捧げる風習も無くなった。僕の恥など、小さな犠牲だけれど、月に一度歌わされるということが気になって、儀式中、全く声が出なかった。


長めのお話になってしまいましたが、ここまでお付き合いくださりありがとうございます。

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