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祓魔師の話  作者: かめさん
第七章 エルフの森と泉の悪魔
55/115

一方その頃エルフ達は

 ハルダィアとルォーフェルは、木の上から様子をうかがっていた。隣にいる女エルフが霊に語りかけているのを察知し、手で制す。


「眠っている者を、無理矢理目覚めさせるのは辞めたらどうだ」


 目覚めた霊魂がルォーフェルに応じ、泉から水が溢れ出してゆく。水面が無数の手となり、人間達を襲う。


 水辺の異変を察知し、集落に伝える「守護者」の役目を担う女エルフは、水の精霊と親交が深い。彼女がその気になれば、霊魂の力を借りずとも、水を思うがまま操ることができるだろう。


「何故あの小娘を連れて来た」


「水が濁っている。泉の主様はお怒りだ。だから、あたしが乙女を連れて来てやることにしたんだ」


「だが、歌を披露するという約束になったのだろう」


「人間は嫌い。恩も忘れて、主様を痛めつける。ここで全員沈んでいるのを見つけたら、怖がって、もう、誰も来ない。あの方が傷つくこともない。あの霊達だって、沈んで欲しいと思っているみたいだ。人間の敵が人間だなんて、最高の皮肉じゃないか」


 背後から、枯れ木を踏む音がする。老エルフがゆったりと歩いてくる。


「本当に人間が来なくなると思うかね。来なくなることが、正しいと思うかね。ルォーフェルよ。泉は古くから潤いをもたらしてきた。勿論、君が嫌う人間にも」


「でも」


「人間を好きにならなくてもよい。ただ、恨みをぶつければ返ってくる、それが繰り返されれば、悲劇が起こる。君もこの目で見て来たね。君の行動は、この広い世界では小さなものかもしれない、だが、それはやがて大きな波となる。争いはね、互いが許し会わなければ終わらせられないのだよ」


 彼女は押し黙っている。


「わしとハルダィアが森を出た理由を知っているね。終わらせる為だよ。これ以上同胞が辛い思いをしないためだ」


「でも、あたしの父さんが、皆が、いなくなったのも、定めでしょう。最後まで誇り高く戦って死んだ、何

が悪いの」


「そうだね。何も悪くない。それは定めだった。ただね、君が泉の主が傷つくのを許せなかったように、あの人間の子達が、贄に出されるのを許せなかったように、わしもな、同胞がこれ以上命を失い、生きとし生ける命を刈らせてしまうことが、どうしても、我慢ならなかった」


「あたしに、どうしろと言うの?」


「私が伝えたいと思っただけだ。君の答えは、気長に待とう。時が許すまで」


 そういって、老エルフは来た道を戻っていった。ルォーフェルは彼の曲がった背中を見ながら話しかける。


「……どうしてお前は人間を好きでいられるの」


「別に、好きではない。むしろ、気に食わないことの方が多い」


「だって、人間の言葉沢山話す。連れて来たことあった」


「あれは、勝手に迷い込んで来たのだ。手引きした覚えはない。……ただ、我々と同じだ、様々な者がいる。それだけだ」


「ふーん」


 ルォーフェルは、太い枝に腰掛け、足をぶらつかせる。聖女の可憐でありながら悲壮感漂う歌声が流れている。泉の主が、じっと聞き入っている様子なのを確かめる。


「ごめん、もうゆっくり眠っていいから」


 泉の底に沈む乙女達に向かって、囁いた。



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