キャロルと帰り道
今回は短めです。申し訳ありません。
話すことが無くなり、再び沈黙が訪れたところで、キャロルが、急に立ち上がった。
「長居しすぎてしまいましたわ。そろそろ帰らないと」
「確かにそろそろ時間だね」
祭司様が、外の様子を伺いながらおっしゃる。キャロルは他の聖女と一緒に来ていたのだ、もし待たせていたら大変だ。
「僕が送っていきますよ」
「ごめんなさい。ありがとうございます」
彼女はエルフの方を向く。
「難しい話が多かったけど、楽しかったわ。私、時々ここで皆と歌っているの。今度は、二日後のファイペルの日、九回鐘が鳴る時間(午後三時頃、九時課のこと)のグリフに来る予定だから、もしまだ街にいたら、見に来て下さいな。折角お祖父様のご友人に会えたのですもの」
「承知した。約束しよう」
そう言ったハルディアの瞳は、孫の顔を見るお爺さんの様だった。
***
キャロルを送っていく時、河沿いの道を歩いた。柳の木が揺れている。
「ちゃんとお話をしたのは、ここが初めてでしたね」
懐かしい。あの時、彼女は自分の歌について、悩んでいた。もしかしたら、あの時、セイレーンにとり憑かれていたのだろうか。水辺に棲む、精霊に。その時の彼女は、薄気味悪くもあり、少し、妖艶でもあっ
た。今の可憐な雰囲気とは全然違った。
ふと、手に温かいものが触れる。彼女が僕の手を握った。
「さっきも言ったけど、送ってくれてありがとう」
そういう彼女は頬を林檎のように染め、目を伏せている。先ほどまで何ともなかったのに。具合が悪くなったのだろうか。
「大丈夫ですか。もしかして、熱でもあるんじゃ」
「え。あらもう、やだ、マルクさんったら。なんともないですよ」
彼女は片手を頬に当てて、はにかみながら、握っていた手をほどき、僕の背中を叩く。そういえば、あまり同年代の女性と手を繋いだことなかったなあ。なんだが僕も恥ずかしくなってきて、体中が火照ってくる
のを感じた。
以前キャロルに会った時のお話は、第3章『聖女と歌姫』です。興味のある方はご覧になってください。




