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祓魔師の話  作者: かめさん
第六章 聖ウァレンヌの日
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憧れの気持ち

 会館を閉める時間が来たということで、僕達は外に出た。日が落ちて、すっかり暗くなっている。ベラとアシュリーはまだ来ない。あのまま帰ってしまったのかもしれない。


「結局ね、私がここで働けるようになったのは、ほんの四,五年前のことなの。私が街を離れられないせいで、夫は行商を辞めることになっちゃった。家族には沢山迷惑をかけてきたし、とりわけあの子には、ずーっと寂しい思いをさせてきちゃった。私のことを憎んでも、嫌っても仕方ないわよね」


「そうでしょうか?」


「だって、普通母親は家にいるものだもの」


「ベラさんは、確かに寂しかったかもしれません。でも、貴方の事、嫌いじゃないと思いますよ。彼女は魔術師を目指していると言っていました。現に魔法学校に通っていますよね。それが全てだと思います」


 寧ろ、嫌いでいられたらもう少し楽だったかもしれない。ベラはきっと、夢に向かってひたむきに努力する母親の背中を見て、ずっと見てきて、同じ道を歩もうとしている。黒魔女の会なる怪しげな集団に入って

まで、彼女なりに、魔術師としてのあり方を模索しているのかもしれない。


 どれだけ辛い思いをしてきても、恨みたくても、憧れの気持ちは止められない。背中を追いかける足は止まらない。そんな彼女の気持ちが、分かるような気がするのだ。


 ベラの母親がふふふ、と笑う。


「ありがとう。話すだけ話したら、すっきりしたわ。もう遅いし、そろそろお開きにしましょう。転送魔法の件はごめんなさいね。不正利用した輩がいたせいで皆、神経質になっているの」


「あ、あ、あの、そ、それ、いつ」


 聞き慣れない声が食い気味で尋ねる。リンだった。


「さあ、一年位前だったかしら。ギルド内部の人が引き起こしたんじゃないかって、言われてピリピリしたものよ」


 魔術師は手を振って城門へと走って行く。今、かなりの有力情報が手に入ったような気がするのだが。神経質になっていると言っていなかったか。勝手ながら気の良い魔術師の将来が少々心配になった。


「僕達も戻りましょうか」


 細い道に入っていくと、こちらへ向かってくる人影があった。リンがモモの耳元で何か囁くと、モモが小走りで相手に近づく。


「サムさん、来たですか?」


「別に。偶々この辺に用事があっただけなんだけど」


「わあ。帰りましょう。一緒」


「まあ、好きにすれば。俺は適当に帰る」


 同居人と会えたのなら、ここで二人と別れようか。


「そうだ。サム、さん。モモさんの話なんですけど、魔道士ギルドの転送魔法、一年前位に不正利用があったそうです。詳細は聞けていませんが、時期を考えると、それが怪しいと思います」


 リンに耳打ちされたモモが、小さく驚きの声を上げる。暗闇のせいで、青年がどんな顔をしているのか分からない。


「で、それが何? 俺にどうしろと」


「いえ、ただ、参考にしていただければ」


「お、おう」


 不正利用というのは、モモが連れて来られた事じゃないのか。手引きした人間は流石に追い出されているだろうが、調べれば使用された魔法とか、犯人とかが分かるかもしれない。そのことを、伝えておこうと思ったのだ。


 何故同居することになったのかは知らないが、ずっと一緒にいれば、気になるのではないだろうか。


「ではまた。失礼します」


「また勉強会、来ます」


「お待ちしています」


「はい!」


 モモと言葉を交わし、早歩きで彼らの傍を通り過ぎる。一瞬、男の手元に、白くて小さな物が。よく見たら花だった。今朝、モモが作っていたもの。振り返る。大きく振れる白い腕が暗闇に浮かぶ。僕も手を振り返す。記憶を頼りに礼拝所へ急ぐ。


 あの男、用事があるというのは嘘だったのかもしれない

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話の一部分と今話全部が全く一緒です。
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