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祓魔師の話  作者: かめさん
第八章 里帰り
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里帰りの終わりと後日談

 それから二日家族や友人、あの二人とブラスキャスターで過ごし、ついに旅立ちの日がやって来た。

朝、荷物を持って庭へ出る。一週間もいると、ここを離れるのが寂しくなってくる。


 散歩している途中、イーサンが汗を流しながら護衛と稽古をしていた。素人目でも分かる無駄の無い綺麗な動き。一時休憩に入った頃合いを見計らって声を掛ける。挨拶はしておくべきだろう。


「おはようございます、兄上。精が出ますね」


「これくらいは当然のこと。人の上に立つ者は強くあらねばならない。愚王には邪な者しかついて来ず、賢いだけの王には賢いものしかついて来ない、だが、強い王には敵国の民さえ着いてくる。これが現実という

ものだ」


「左様ですか」


 イーサンは己に対しても厳しい。きっとファルベル家をひいてはファルベル地方を背負って立つ覚悟を決めているからこそできるのだろう。


 彼を見習うべきかどうかは分からない。だが、僕に彼と同じだけの覚悟が何かしらあるだろうか。そんな

ことを考えてしまった。


「それでは僕はこれで失礼します。どうか、お体に気をつけて」


「貴様こそ、精々励め」


 今回は表門に馬車が来る。ぶっきらぼうな兄の言葉に送られて、僕は実家を後にした。こうして僕の里帰りと二人の旅行は終わったのだった。



   ***



 ブラッドリーに帰って来て一ヶ月ほど経った日のこと。


「二人とも、ニーナから手紙が来ていますよ」


 二人は興味津々で駆け寄ってくる。


「兄弟。読んでくれよ」


「はいはい、分かりました」


 手紙を開いて、二枚に渡る長い手紙を読み上げる。書き慣れていないけれど、一生懸命さが伝わってきて、涙腺が緩みそうだった。兄馬鹿だなあと、アシュリーに言われる。


「とにかく、読みますからね」




 お兄様、ライリーさん、アシュリーさん、礼拝所の皆さん、いかがお過ごしですか。私は元気です。家族も皆元気です。


 さて、あれからライリーさんに言われたとおり、寝る前に、窓から木に話しかけてみることにしました。最初は、それでも中々外に出られませんでした。けれど部屋の中にずっといると、段々話すことが無くなってしまい、同じ話では木も退屈だろうと思って、庭に出ることにしました。


 一人でだけど、庭で遊んで、色々な動物を見掛けたことを話した日、木の横に立っている人が夢に出てきました。ライリーさんに似ていたけれど違う人でした。その人は私の頭を撫でながら、よく頑張ったね、楽しいお話をありがとう。と言ってくれました。


 あの話を聞いた時は正直、不思議な人だなあと思っていましたが、ライリーさんの言っていたことは本当でした。あの木の精霊さんが、私の話を聞いてくれていたのです。精霊さんは、見えない友達になってくれました。


 その日会ったことを木に話すことが楽しくなってきて、毎日のように庭で遊んだり、図書室へ本を読みに行ったりするようになりました。時々召使いと一緒に遊ぶこともありました。


 ある日の朝、庭に出ていると、昔仲良くしていた子が裏門の所に来ていました。何の用事だろうと勇気を振り絞って話しかけてみると、その子が謝りながら手紙を渡してくれたのです。あの日以来、毎日手紙を渡しに来てくれていたと聞いて、びっくりしました。私も謝りました。少し怖かったけど、あの子と久しぶりにお話しできて楽しかったです。今度、あの子と友達の木の下で、お茶をすることになりました。きっと上手くいく気がします。お友達が見守ってくれているから。


 両親も、私が外に出るようになって喜んでいます。縁談の話をしだすのはうんざりですが、仕方ないです。


 これからもお務め頑張って下さい。お兄様に、神のご加護があらんことを。

                          ニーナ・ファルベル


ここまで読んで下さりありがとうございます。またまた申し訳無いのですが、次のエピソードが間に合わなさそうです……完成次第投稿いたしますので、1週間ほどお待ちいただけると幸いです。

すみません。

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